23.ざっと洗い流した頭と身体をタオルで拭うと、まだ雫の残る肌の上にパジャマをはおって飛び出した。 髪も濡れたままだがドライヤーは持ってきたから部屋で適当に乾かそうと思う。 面倒だったらこのまま寝てもいい。 ともかくリボーンを風呂に入れてしまおうと脱衣所を出ると、こたつで寝ているリボーンを見付けた。 「リボーン?おい、リボーンてば!」 タオルを頭の上に乗せたまま慌ててリボーンの横に膝をつく。 返事のないリボーンの顔を覗き込むと、長い睫毛が寝息と一緒に揺れているのが見えた。 こりゃダメだとため息を吐くと、手に持っていたドライヤーをこたつの上に置いて座り込む。 見詰める先にはリボーンがいて、どう見ても安らかに眠っていた。 今更比べるまでもなくリボーンはオレよりずっと体格がいいから引き摺ってベッドに押し上げることも出来ない。 ならば起こすべきだと思うのだが、こたつでうたた寝をする気持ちよさは格別だから気が引けた。 しかしこのままでは風邪をひく。 うーんと唸り声を上げてリボーンの顔を観察すると、驚くほど整っている顔に思わず見惚れた。 喋っていると表情や声に意識が持っていかれてしまうのだが、改めてじっくり眺めているとよく分かる。 黒々とした長い睫毛はゆるいカーブを描いていて、すっと通った鼻筋も、血色のいい少し薄い唇さえ絵に描いたような比率を保っている。 こんな機会でもなければリボーンの顔なんてゆっくり見れないから、ここぞとばかりに見続けた。 男でも美人は美人だと感心してぼんやりと眺めていたオレは、突然ガッと腕を掴まれて固まる。 目を覚ましたリボーンがオレの腕を手繰り寄せたらしい。 あっという間に寝ていた筈のリボーンの身体の下に引き込まれて、気付けばぱっちりと目を覚ましたリボーンの視線を一身に受けていた。 「お前な、ちっとは警戒心ぐらい持て」 「ちょ、あの、あの!」 間近に迫る顔に知らず顔が赤らむ。 寝顔にドキドキしていたところだから、迫られて動揺したオレは言葉がまともに出ない。 そんなオレに畳みかけるようにリボーンは口を開く。 「狸寝入りをして様子を伺ってたってのに、何うっとり人の顔見てんだ」 「バッ!違、うっとりしてなんか……!」 人は図星を指されると否定したくなる生き物だ。しかもあんなことをされたばかりだというのに、リボーンの言動に警戒していなかったのだから救いようがない。 隙があると言われてしまえばそれまでの間抜けさ加減に情けなく眉を寄せていれば、リボーンはまだ濡れているオレの髪に指を差し入れた。 「このままじゃ風邪ひくぞ」 「う、ん……」 先ほどまでオレが心配していたことをリボーンが話し掛けてくる。 低い声が少し掠れていて、それがひどく色っぽい。 オレを見詰める視線はまるで包むように優しいから、オレだけしか見えてないように思えて動悸が治まらない。 視線を逸らせないままぼんやりと見上げていると、リボーンの指は濡れた髪の端を伝って首筋をなぞっていった。 つつぅ……と辿る指先に肩を揺らしたオレにリボーンは笑みを深くしていく。 経験値のないオレは、こんな時どうしたらいいのかすら分からない。 やめろと言うのも自意識過剰なのか、それともこれはいわゆる愛撫の一種なのか。 浅く息を吐き出したオレに、リボーンはゆっくりと覆いかぶさってきた。 2013.03.04 |