22.肉の質と割り下さえ間違えなければそれなりに食えるすき焼きを腹におさめ、沈黙が痛かった食卓を片付けていると、こたつの方から声が聞こえてきた。 「風呂はどうする?」 「あー……ちょっと待って、もう少しで洗い物が終わる」 値段相応のアパートだから、台所で洗い物をしていると風呂場で湯を落とすことも難しい。 手早く食器や鍋を洗い終え、さて風呂の支度でもと振り返ると、こたつからこちらを覗き込んでいた視線とかち合った。 ずっと見られていたらしいと気付いて脈拍が跳ねる。 そんな自分を知られまいと、顔色を変えないようにしながら風呂場のある方へと足を向けた。 リボーンの寝ているこたつのある部屋を通らなければ風呂場に行けない。 気まずいなんて思っていないさと嘯きながら、リボーンの視線を張り付けつつ横を通る。と、 「ひっ!」 グッとスウェットの裾を引き下げられて声が漏れた。 面倒でウエストの紐をくくっていなかったから腰下まで露わにされて動揺する。 慌ててスウェットのズボンを手で掴み上げると、リボーンは裾を握ったまま口を開いた。 「もう時間も遅い。ツナは明日も仕事なんだろ?」 「うん……」 問われた真意が読めないながらも小さく頷く。すると、リボーンは我が意を得たりといった表情で先を続けた。 「面倒臭ぇから一緒に入るか。時間の短縮になるぞ」 「いっ、いや……その」 咄嗟に拒否出来なかったのは、からかわれているだけなんじゃないかと思ったからだ。 一々反応を返せば、余計にしつこくからかわれることを経験から知っている。『ダメツナ』の過去が判断を鈍らせ、隙を与える羽目となった。 だけどリボーンの瞳はそうじゃないことを知らせてきた。 黒い瞳が見上げるようにオレを見詰めている。 オレの返事を待つように、拒否されることなんて考えてもいない顔で口を閉ざした。 オレのことを気にしてくれているんだ、と少し傾きかけているとズボンの裾を強く引かれてズルンと膝下まで落ちる。 「っ!」 まさか脱がされるとは思っていなかったから、リボーンの眼前にトランクス姿を晒してしまう。 声も出せずに茫然としていると、リボーンはオレのズボンを掴んだままこたつから起き上がってきた。 「今日は湯船には浸からなくていいな。シャワーだけにするか」 何を思ったのかリボーンの手はオレのトランクスにまで伸びてきて、それに焦ったオレは遮るように足首まで落ちていたズボンを蹴り上げてその手を止めさせた。 「そそそ、そう?!だったら先に入らせて貰うからな!疲れてるから一人がいいんだ!」 言うだけ言うとリボーンの答えを聞く前に、ズボンを脱ぎ散らかしたて脱衣所に飛び込んだ。 ドアを背中に押し付けたまま、ドアノブに手を掛けて向こうの気配を探っていれば、ドア越しに気配を感じて身を固くする。 ドアノブを硬く握っていると、低い声が聞こえてきた。 「背中でも流してやろうか?」 「いらないよ!」 というか、いらぬ世話だ。すぐに出るからと声を上げれば、ドア越しの気配は遠ざかっていった。 「結構、ピンチ……?」 気が抜けて床にへたりこみそうになったものの、あまり遅いとまた覗きに来そうだと思い付いたオレは急いで上着を脱ぎ捨てた。 2013.02.15 |