リボツナ | ナノ



6.




つまみ食いをしていたオレは呼び鈴にふぁーいと間抜けな返事をして、手にしていたサラダをテーブルに置いた。
そこにリボーンとスカルさんのいるこたつの方からポンというコルクを空けた音が聞こえてきて一瞬身体を強張らせる。
どうやら人の家に勝手に上がり込んできて、家主を待たずにワインの栓を空けたらしい。
やりたい放題のリボーンにムカッ腹は立ったが何を言ってもムダだということをオレは学習してしまった。
諦めえることと流されることは容易い。昔からオレの十八番でもある。
釈然としないまま1階にある玄関まで下りていくと獄寺くんと山本だろうと当たりをつけて錠を捻るとドアを押し開けた。

「おはようございます!10代目!」

人間にも尻尾が生えていたらならば、きっと全開で振っているのだろうといった様子の獄寺くんは銀髪碧眼の伊日ハーフだ。中学時代からの同級生でもある。
おはようと返しかけて、そういえばもう13時を回っていたことに気付いたオレはいらっしゃいと無難にやり過ごした。
そこに後ろから現れた山本が人好きのする笑みを浮かべながらオレに向かって風呂敷に包まれた大きな荷物を差し出した。

「よっ!今日は珍しく起きてんのな!これはオレの握ったヤツだから、また感想聞かせてくれよな」

ありがとうと言って受け取りつつ山本の顔を見上げる。
獄寺くんより少しだけ背の高い彼は確かにリボーンとさほど変わらない身長の持ち主だ。
黒髪に少し明るいこげ茶色の瞳はいつも人の良さそうな笑顔を見せている。
だけど中学時代から続けている野球のお陰で肩幅や胸板などはさすがにそこらの同年代より立派だ。
自分など何を食べてもひょろりとした印象を拭えないから尚更羨ましく思っているというのに。
妬ましさ混じりにジッと目の前の身体を眺めていたオレの肩に山本の手が置かれる。
そのまま引き寄せられるようにぐっと肩を掴まれて、何事だろうと顔を上げると山本の顔が間近に迫っていた。

「な、なに?」

割とスキンシップの激しい山本ではあるけれど、ここまで顔を寄せ合ったことはない。顎を引いて逃げ出そうとするオレを離さない手は力強い。
妙な気配に顔を引き攣らせていれば、山本は真顔でオレに問い掛けた。

「ツナ、とうとうオレの魅力に気付いた?」

「魅力……?いや、普通に山本は格好いいだろ。背高いし、肩幅もあるし、顔もいいじゃん」

ツナ一人養っていけるだけの財力もあるぜ!と益々詰め寄られて首を傾げる。確かに現役プロ野球選手だから生活に困ることはないのだろう。
隣の獄寺くんは顔を赤くして肩を震わせているが、何かあったのだろうか。
気にしないまま山本に頷いて、だけどそうすると上でのうのうと居座っているあの男はどうしたことなのかと眉が知らず寄った。

「教授って体力勝負なのか?何で現役の山本のジャージが丁度いいんだよ。おかしいだろ」

不満がそのまま口に出てしまったオレに、山本と獄寺くんは動きを止める。
それから高揚していた頬をキリッと引き締めた山本が、眉を険しく立てながらもう一度オレの顔を覗き込んできた。

「それって誰だ?ひょっとしてその靴の男か?」

「ん……?あぁ、そう!」

山本が指さした先にある靴に気が付いて頷くと、隣にいた獄寺くんの手に攫われる。
山本よりほんの少し低いけれど、オレよりは勿論背の高い彼に肩を揺すられてその形相に驚く。

「一体どんなヤツ……いえ、この靴の男とはどういったご関係なんですか?!」

脱ぎ散らかされたライダーブーツではなく、きちんと磨かれている黒い革靴はオレの知り合いにはいないタイプのものだからだろうか。
そういえば彼ら2人は中学時代から情けないオレの世話を焼いてくれていたせいで、ダメツナのお守などという不名誉な呼び名まである。
そんな2人に心配を掛けなようにするには、あの男のことをどう説明すべきかと頭を悩ませていると、オイという低い声が階上から聞こえてきた。


2013.01.15







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