リボツナ | ナノ



4.




恥ずかしいから消えそうな声でどうにか呟いたオレの言葉通りにリボーンの手が中心に向かってくる。
そっと包まれる温かさと、壊れ物を扱うような手付きがもどかしい。
自分の性器を自分の意思で誰かに触らせたことなんてないから、どうして貰うといいのか迷った。
ただ触れているだけのリボーンの手。つまりは何をしたいのか言わなければしてくれないということだ。
髪の一房ほども乱れていない執事然としたリボーンと、何も身に着けていないオレとの対比を思うと恥ずかしくなる。
もうやめてしまおうかといつもの負け犬根性が顔を覗かせるが、ここで引く訳にはいかないという意地が突如湧き上がった。

「し、しごいて」

あの日から徹底的にリボーンを避けていたのは自分だ。
顔を合わせられないというやましさより、最後通告を受けたくなくて逃げ回っていた。
気持ち悪いと罵られたり、もう顔も見たくないと言われるかもしれない恐怖に顔を背けた。
なんであの夜、そんな雰囲気になったのかは思い出せない。
分かるのは身体の奥深くで繋がった熱さと、自分のちっぽけな気持ちだけだ。
この歳になるまで、いや、あの夜まで気付かなかった想いに驚いて、それから受け入れて貰えないことにも気付いて。
忙しさを理由に昨日まで顔を合わせることもしなかった。
だから誕生日で顔を合わせても、決して2人きりにならないようにうまく立ち回っていたのだ。
ここ一週間ほど眠れなかったのは仕事のせいじゃない。
毎日、毎晩、あの日のリプレイばかりをなぞる自分が情けなくて、逃げ出したくて、でも会いたくて仕方なかった。
ただ握っていただけのリボーンの手が、オレの言葉に従うように動き始める。
すでに先走りで濡れているソコは、ゆるゆるとした刺激だけでも体積を増していく。違う、本当はリボーンの手だからだ。
触って貰いやすいようにと広げた脚はビクビクと震えて、少しでも多くの快楽を拾おうとする。
大きな手に根元から扱かれながら、くびれを親指で擦り上げられて息を吐き出した。
自分の声だけが部屋に響く。
これが現実なんだと知って醒めていく頭とは裏腹に、身体は昂ぶって後戻りできないほど熱くなる。
しがみ付くように両手で抱えていたバスローブの先には、羞恥と興奮で薄く色づいた肌が見えた。触られてもいないのに、あの夜の記憶を彷彿させる手に乳首まで尖りはじめる。

「ぅ、あ…!」

射精を促す手付きに喘ぎが漏れるも、決定的な何かに欠けた。
イきたいし、早く終れと思っているのにイけない。
ジクジクと熟れて熱を持った乳首を視界に入れて、どうしようかと今更迷う。刺激が足りないなら継ぎ足せばいい。だけどこんなところを舐めて欲しいなんて変態みたいだ。
どうしようと迷っていてもこのままではイけそうにない。
恥ずかしくてまともに顔も見られないから、目は伏せたまま口に出した。

「胸、なめて」

手を止めたリボーンの視線に焼かれながら、手元のバスローブをおずおずと引き下げる。太陽とは相性の悪いオレは生っ白い貧弱な胸を晒した。
見詰められるだけで硬くしこっていく乳首の先に熱く湿った息がかかり、期待に喉が鳴る。
黒い髪がオレの胸元に埋まって、尖った先をネロリと舌で舐め取られる。下から転がすように舌を押し付けられ、腰のあたりに痺れにも似た感覚が湧き上がる。
リボーンの両手に掴かまれたままの起立は喜ぶように先走りをしたたらせ卑猥な音を響かせた。

「は、ぁ…」

嬲っていた乳首の先から唇を離したリボーンは、焦らすようにもう片方の先に鼻を擦り付ける。
既に硬く尖っているそこは少しの刺激にも敏感に反応して、ビクリと仰け反ったオレを追うように覆いかぶさってきたリボーンに押し倒された。
転がった床の上で大きく股を広げ、腰をくねらせる自分はみっともない。
しかも『させている』立場だ。
どうせ今日だけだと知っていて、それを利用しようとしている。
つまりはリボーンもそれでいいと思っているということだ。
一方通行ですらないこれは何だろう。
唾液にまみれた乳首の周りをざらついた舌で撫でられると、リボーンの手の中にある性器はビクビクとぬめった体液を零しながら震える。
おぼろげになぞっていた記憶より、今の方が気持ちいい。
オレの命令通りに動いているリボーンの手に導かれ、膨らんだ先を解放させようとしているのにまだ足りない。

「どうされましたか?ご主人様」

「ぃ、や…!そ、なとこでしゃべるなぁ…っ」

仰向けで喘いでいるオレの胸元からの台詞に身体の芯が昂ぶっていく。今にも弾けそうなのに、何かを求める身体はイくことを拒んで切なく震えた。
違う。本当は何が欲しいのか分かっている。
あの夜繋がった部分が疼いて、浅ましくヒクヒクと蠢いてリボーンを強請るのは本当の気持ちだ。
命令を下せばしてくれるのかもしれない。だけどそれだけは嫌だった。
吐精してしまえばこんな激情なんて押し込められるのに、冷静な心の声を身体が拒絶する。
イきたい。イかせて、ちがう。ほしい。

「ほし、い…のぉ」

ポロリと零れた言葉と一緒に涙が一粒、頬を伝い落ちる。
散々逃げて、最後には縋るなんてみっともないにも程がある。だけどもう、誤魔化しようがなかった。
胸元にいるリボーンの綺麗に整えられた髪に抱きつく。
遠慮なくしがみ付いたせいで乱れた髪が額に落ちて、いつものリボーンみたいに見えた。
本当に欲しかった手は何でも言うことを聞いてくれるリボーンじゃなくて、口が悪くて何もしてくれないけど待っていてくれるリボーンだった。
一度告げてしまえばもう止まらなくなって、子どもみたいにしゃくりあげながら何度も繰り返す。
欲しい、ちょうだい、お願いと涙のせいでたどたどしい口調でしがみ付くオレに、身動きが取れなくなったリボーンは手を性器から外すと胸元から強引に顔を起こして視線を合わせた。

「何が欲しい?」

「っく、ふ……!リぼ」

逃がすもんかとリボーンの首に腕を回して距離を縮める。
こいつにとったらオレなんて大勢いるその他の一人なんだと知っている。でも、欲しい。

「リボーンが、欲しいよ」

恥も外聞もなくリボーンの唇に顔を寄せていくと、涙でぼやける視界の先の唇が笑みの形を作る。その少し薄い唇に自分のそれを押し付ければ、リボーンの身体は上からオレを抑え込むように力を掛けてきた。

「オレの、何だ?」

口付けの合間の問い掛けに唇が震える。わずかに漏れる息さえ逃したくなくてその唇を塞ぐと、上から伸し掛かる熱い身体を受け止めるように足を絡めた。
腿に感じるリボーンの熱さに浮かされ、また昂ぶる。
舌を絡め、唾液を飲み込み、いやらしく先走りを垂らす性器をリボーンの足で擦られて、その布地越しの刺激のもどかしさに眉を寄せてまた縋りついた。

「オレの身体か?」

揶揄する口調に首を振りながら、リボーンの頭に手を這わせて引き寄せる。

「ちが、今だけ…今日だけ、リボーンが欲しい」

それで全部諦めるから、と目を閉じてリボーンの背中に腕を回した。
何を言われてもいいから自分の欲望に従おうと決めて閉じていた目を開く。一分でも、一秒でも長くリボーンを記憶したい。
そんなオレの視界の先でリボーンはオレの手を背中から剥がすと、自分のスラックスの前へと導いた。
身体のサイズに見合った大きなソレを、オレの手で扱かせる。
先ほどまでのキスでこうなってくれたのかと思えば嬉しい。
オレの拙いキスと手で硬くなる性器をもっとよくしてあげたくて、リボーンの唇の端を舐めながら手を動かしていく。
ベルトのバックルを外し、チャックを下げて下着の中へと手を入れた。

「っっ!」

熱い。しかも先ほど触っていた時より明らかに膨張している。
チラリと見えたそれから慌てて視線を外すと、そんなオレを見ていたらしいリボーンがクツクツと喉の奥で笑う。

「そんなに物欲しそうな面してんなら、自分で挿れてみるか?」

「…」

リボーンの口調が砕けたことにも気付かず、その台詞に唾を飲み込んだ。

「うぅ…どうしたらいい?」

前回はあれよという間にことが運んでいたせいで、その過程がどうにも思い出せない。後ろの孔は疼くように熱を持っているが、この状態でいきなり挿入なんて出来ないだろう。
それでも諦めきれなくてリボーンに視線を投げると、ジャケットの内ポケットから小さな容器を取り出した。顔の横に置かれたそれに手を伸ばし、蓋を開けて中を確認する。
匂いはないそれに指を入れて掬い取れば、その手をリボーンにとられて尻の間に押し込められた。

「ひっ…!」

ジェルを纏った自分の指が入り口をグリグリと弄りはじめる。
体温に馴染んだジェルのぬめりを借りて、引っ掛かることなく奥へと入り込んできた。
オレの指を操るリボーンの唇は熱い息を吐き出している。その唇に舌を這わせれば、上から塞がれて息も零せなくなる。
ぴったりと重なる唇と、指を深くまでめり込ませる手に思考が纏まらなくなってきた。
ただ逃がしたくないと絡ませた足が痙攣を繰り返し、奥を弄る指の頼りなさに身悶える。
もっと確かな楔が欲しい。
酸素を求めるより目の前の存在が欲しくて、解かれた口付けの合間から懇願する。

「きて、」

指を抜いて腰を浮かせると尻の間を押し付けた。
動物みたいだなと冷静な部分が告げたが、それを無視して本能に従う。
怒張した先を少しずつ受け入れようと腰をゆっくりと進めていれば、突然ぬぐりと熱塊が割り込んできた。

「ぁぁ!」

痛みより熱さに仰け反ったオレの腰をリボーンの手は掴んで引き寄せる。
ヌチヌチと聞こえる接合の音に残っていた理性も崩壊した。

「んん…!ぁ、あ」

堪えようとしても堪えきれない声が熱塊を飲み込むたびに零れる。閉じられなくなった口元からは唾液が糸を引いて垂れ、中を掻き回されるとぎゅうと締まっていく。
搾り取ろうとするような蠕動を繰り返し、奥を広げていた指をリボーンの肩に這わせると上から押しつぶされそうな勢いで口付けを貪られた。
ただでさえ切れ切れだった息が塞がれることで途切れてしまいそうになる。
だけど拒むことなんて出来ないから必死に息を合わせていれば、リボーンは絡めていた舌を外すとオレの足を持ち上げた。

「ココに欲しいか?」

グリグリと中を掻き回されると張りつめていた自分自身が先走りをしたたらせる。何も考えられなくなったオレは欲望にそそのかされてコクコクと頷いた。

「ちょうだい…リボーンをぜんぶ、注いで」

「っ!」

一滴たりとも漏らしたくないからいやらしく繋がったままのソコを見せ付けてそう答えれば、深く潜り込んでいたリボーンの怒張が嵩を増した。
何かに堪えるように歯を食いしばったリボーンがオレの足を抱えたまま挿抽を始める。
腰を押し付ける音が部屋に響き、奥の気持ちいいところばかりを擦られて声も出せない。
吐き出す息遣いもまばらで、だけど身体は快楽にくねる。
肩口にリボーンの熱い息が落ちて、昂ぶっている肌の熱さを知り腕を首に回した。
リボーンの服に擦られている性器は弾ける時を待っている。たくさんすぎる先走りがオレの腹から腰を汚していき、そこに身体を押し付けているリボーンの服も汚していく。
それでも律動は止まらない。
ぐるりと中を抉られて堪え切れずに先から白濁を放った。
勢いよく飛び散った精液は、まだ中を揺さぶられ続けているせいで止まりそうにない。ダラダラと溢れる白い液体はオレの腹から股を伝っていく。


2012.10.12







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