リボツナ | ナノ



エイプリルフール2.




ざわざわという人の入り乱れる気配と、絨毯の上を踏み付ける数人の足音に目を覚ました。
さて、最初は誰がやってくるのか。
人の悪い笑顔を浮かべてソファから起き上がると、丁度そのタイミングでノックが聞こえてきた。

「ボンゴレ、ちょっといいかな」

意外や守護者一番乗りはランボだった。今日はこちらに来る予定もなかった筈なのにと驚いたが、少し考えてそうかと気付く。
リボーンの帰りがいつも不規則になるのは、ひょっとしたらランボが絡んでいたのかもしれないと。
ムッと唇を尖らせて緩めていたネクタイをそのまま引き抜くと、どうぞと声を掛けた。

「遅くに悪い。さっき獄寺氏にとんでもない嘘を……っっ!??」

なんだ、もうバレたのかと余計にイラついてランボを睨んでいれば、そんなオレを見たランボが驚愕に目を見開いて飛び上がる。

「ちょっ…ボンゴレ、なんでボタンを外してるんですかっ!」

こちらを見ないようにするためか、顔に手を当てているランボだったがどう見ても指の隙間からオレを覗き込んでいるようにしか見えない。
おかしなヤツだと思いながら、それもランボかと納得して4つ空けていたシャツの襟を広げて見せる。

「何だよ、こんなの普通だろ?」

先ほどまで居眠りをしていたのだ。襟を詰めたままでは苦しいに決まっている。
そう答えれば狼狽えたようにランボはオレから視線を反らすとくるりとオレに背中を見せた。

「あなたはそんな人じゃなかったでしょう!もっとこう、謹み深くエロっぽいというか…チラ見えする脇腹がオレの青春、ゲフッ!」

「…」

言っている言葉の意味が分からない。
とりあえずボタンは閉めた方がいいらしいと気付いて一番上だけ残した格好でボタンを嵌めると、ランボは突然グスグスと泣き出した。

「オ、オレのボンゴレが…!ボンゴレがぁぁああ!!」

と叫んで執務室の扉を蹴り飛ばすと駆け出していった。
ランボへのお仕置きはこれでいいことにして、さて次は誰が来るのかなと立ち上がってキッチンへと足を向ける。
メイドたちも下がらせた後だから誰もいない筈だ。本来はご主人さまであるオレがキッチンに入ることは嫌われるのだが、育ちが育ちということで気にしないように言いつけてある。
日本の兎小屋みたいな家庭で育ったオレには、メイドのいる生活の方が窮屈で仕方がない。
コキコキと肩を捻りながらお湯を沸かしていれば、いつも通りの嫌な気配が後ろから現れた。
足音も立てず、気配も消しているのにそこに居ることがオレには分かる。
獄寺くんってホント仕事が早いなぁと半ば感心しながら後ろを振り返ると、気障なポーズで壁に凭れかかっている骸と目が合った。

「夜分に失礼」

「あ、気にしないでいいよ」

互いに分かっているから驚きはしない。骸とはそういう付き合いだ。
しかしどうして骸がここに来たのか分からなくて、沸かしていた湯を止めると身体ごと振り返った。

「君の番犬に聞きました…とうとうマフィアを辞める、と」

おめでとうとでも言いに来たのだろうかと首を傾げていれば、骸はオーバーに手で自分の胸を掻き毟り、額に指を押し当てて身体をくの字に曲げた。

「まさか人妻になるなんて!君は間違っています!」

「間違ってるのはお前だ!!ってか、オレは男なの!」

たとえ守護者に囲まれると騎士に守られる姫のようだと揶揄されようとも男だ。どう足掻いても妻にはなれない。
やっぱりこいつが一番おかしいと確信を深めながらヴァリアーの内線に繋げるために受話器を取った。
耳に押し当てていれば、コール2回で何故かすぐに電話に出る。いつも出ないのはただの怠慢なのか。

『もしもーし。今、ボスが暴れてるんで後にして下さーい』

その、人を小バカにした声を聞いて慌てて縋りつく。

「あ、何だよフランだろ!?お前の師匠がおかしいんだ。…うん、いつものことだけど。………え?ザンザスがオレのせいで暴れてる??って、それどころじゃないんだ!早く骸を止めにきて!」

じゃないとオレの貞操が…と演技混じりで呟いてみたら、とんでもない方向から大空と嵐の混じった死ぬ気の炎を燃やした弾が飛んできた。

「あ……………」

それに当たった骸が壁ごとぶち抜かれて飛んでいく。
死んだからなとちょっとだけ思いもしたが、骸なら何度でも黄泉返るから大丈夫だ。きっと。
弾が飛んできた方向を向くと、ヴァリアーの本部が何故か炎上していた。

「ま、次いこ」

今日をいう日を楽しむために、今は見なかったことにして淹れたコーヒー片手に執務室へと戻っていった。

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