リボツナ | ナノ



8.幸福オーラ放出




見上げたボンゴレの城塞のような門扉の前で、日本からの手土産を片手に彼のプライベートで使用している携帯電話にコールをする。
ボンゴレの同盟ファミリーとしてではなく、ツナ君と仲のいい友だちとして僕はこうしてボンゴレに足を運ぶ。
すぐに繋がった回線の先で、彼は嬉しそうな声を上げて応えてくれた。
堅く閉ざされていた門が開き、それを守っている厳ついスーツ姿の男たちが僕に向かって道を開けていく。
ツナ君のボンゴレでの敬われ方が分かる彼らの態度に会釈をすると奥へと通された。


ツナ君とは、互いの遠い先祖の初代たちからの付き合いのあるマフィアだった。
僕も彼もマフィアのボスというには覇気もなければやる気もなく、しかし誰か代わりがいる訳もないからこうしてお互い嫌々ながらもボスの座に着くことになったのだ。
学生時代に僕の誤解から争ったこともあったけれど、ツナ君はそれを許してくれた。だからという訳ではないが、僕は今でもツナ君のことを誰よりも一番大切な人だと思っている。


いつもなら案内役はツナ君の右腕だと豪語する獄寺くんか居候中だというイーピンという少女のどちらかだというのに、今日は何故か9代目の守護者だ。
仕事なのだろうかと思いもしたが、すぐにツナ君のいる執務室へと通されたせいで忘れてしまった。
厚い木製のドアは初代の頃から使っている代物らしい。そんな些細なこともツナ君と話すなら楽しいと思えた。
ドアの奥へと案内され、足を踏み入れるとツナ君が僕を迎えてくれる。その横にいた黒い帽子を被った男に気が付いて、僕は目を剥いた。

「いらっしゃい。半年ぶりかな?日本に行って来たんだって?」

僕の驚愕に気付かないままツナ君は僕の手を握る。すると黒い帽子の男の視線が僕の手を貫くように刺さった。

「うん、久しぶり…あのさ。あの人、誰?」

挨拶もそこそこにツナ君に顔を寄せてヒソヒソ耳打ちすれば、男の柳眉が跳ね上がる。射殺されそうな視線に声を漏らせば、それに気付いたツナ君はリボーンと男の名を呼んだ。

「大丈夫だって!エンマはオレの中学時代からの親友だよ。ダメ仲間ってよく言われてたんだ」

「あぁ、確かにダメそうな面してんな」

ツナ君の前での酷評にグサリと胸を抉られた。そんな口の悪い男を見れば、黒いスーツがこれ以上なく似合う体格をしている。
長い脚を無造作に投げ出し、広い肩幅を見せ付けるように腕を組んでこちらを覗き込む男に負けじと睨みを利かせた。

「紹介してなかったよな?今度からオレの護衛をするリボーン。ちょっと怖いけど気にしないでいいから。で、こっちが古里炎真。シモンファミリーのボスなんだ」

僕はツナ君の紹介に形だけは頭を下げるも、男は鼻を鳴らしただけでこちらに挨拶すらしない。
どうやら僕と同じ穴の狢らしいと分かって顔が険しくなっていく。
そんな僕たちを見ていたツナ君は、何を考えたのかひとつ頷いてからリボーンと呼ばれた男に声を掛けた。

「ごめん。悪いんだけど、2人きりにしてくれないかな。エンマと話があるんだ」

「何でだ?オレに聞かれちゃ都合でも悪ぃのか?」

護衛というには横柄な態度の男に驚くも、ツナ君も男も気にした様子なく会話は進んでいく。

「ち、違うって!ホント、少しだけだからいいだろ!」

「隠し事は許さねぇからな」

うんと頷いたツナ君は男に近付くと、目一杯背伸びをしてその柔らかそうな唇を背の高い男の頬に押し付けた。
それを満更でもないどころか淡い笑みを浮かべて受け取った男は、オレの視線を貼り付けたままツナ君の背中に腕を回すと唇に唇を重ねていく。
んっ…と小さく息を飲む声が聞こえて、それがツナ君のものだと分かるのに、軽く一分を要した。
目の前で繰り広げられていた恋人同士の世界についていけなかったオレは、ツナ君の前から男が消え去るまで動けずに固まっていた。

「エンマ…?どうかしたのかよ?」

以前と変わらない鈍感のまま、ツナ君は小首を傾げてオレの顔を覗き込んでくる。
その唇が赤く濡れていることに気付いて、やっとツナ君と男が目の前で何をしていたのかを知ることが出来た。

「うん…僕、死にたい」

「って、えぇぇええ!?急にどうしたんだよ?何でみんなそんなこと言うんだよ!」

ツナ君のいうみんなが、獄寺くんや山本くんなどの守護者の面々とツナ君を狙っていた人々だったと知り、その仲間入りをしたことを君だけは知らない。




2012.03.17







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