リボツナ | ナノ



2.




するりとパジャマの裾から入り込んできた手が腹を辿る。先生の手はいつもほんの少し冷たい。オレがお子様体温なんだろうと笑われたりもするが、秋の夜の冷たい空気とともに肌を撫でる手に冷やされてビクリと身体が震えた。
へそから胸へと入り込んでくる指に声が漏れると先生の唇が口角を上げる。逃げたいなら逃げればいいのに、逃げたい訳じゃないから困っていた。

「あぁ、その件はメールで送ってある。確認を…」

いつもの口調で会話を続ける口許と、悪戯をやめない指が肌の上を彷徨う。先生を感じたいと思う気持ちと、聞かれたら恥ずかしいという焦りとでどこに手をやればいいのか迷っていた。
それに電話相手はやっぱりビアンキさんだったから、ここで引きたくないと妙な意地が湧き上がる。
その隙に先生の指はパジャマの奥まで辿り着くとすぐに胸の先を探し当てた。クリクリと指の腹で先を転がされ慣れた身体はそれを快楽として拾いはじめる。
ぷくりと起ち上がった乳首を指でつまみ上げられて反射的に仰け反るとパジャマが肩まで捲れ上がる。下着ごと脱がされたせいで何も身につけていない下肢から胸元まで晒されて、恥ずかしさに口を開きかけたがビアンキさんに気付かれるかもしれないとすぐに手で塞いだ。

「そうだ、」

仕事の話だけが続く会話を耳にしながら、声を零さないように浅い息だけを繰り返す。なのにそんなオレを楽しむつもりなのか先生はケータイを口許から外すと胸を弄っていた自分の指に唾液を絡ませた。

『リボーン?』

突然会話が途切れたせいでか、ビアンキさんの声が電話越しに聞こえる。それに悪かったなと一言告げて電話口に戻ると、何食わぬ顔のまま濡れた指がオレの赤く尖った乳首を弄りはじめた。

「ひ…っっ!」

漏らすまいと思っていた声が指の間から零れてしまう。すぐに手で塞ぐも、濡れた先生の指が硬くしこった先ばかりをつまむから堪らず首を振って睨み上げる。
そんなオレを見下ろしながら手の動きを止めない先生は、ケータイを握ったまま上から伸し掛かってきた。

「遅くまで悪かったな」

『いいの、気にしないで』

近付いてきたせいでビアンキさんの声がはっきりと聞き取れる。もう電話が終わる口ぶりにホッとしたのも束の間、先生のパジャマに起立を擦られて思わず声が上がった。

「ひゃ…っん!」

『あら?何か聞こえたわ』

ビアンキさんの声がいつも通りすぎて、こちらに気が付いていないことが窺えるから余計に恥ずかしい。オレを見下ろす顔はそれを狙っていたと告げていて、性質の悪さに眩暈を覚えた。

「近所の野良猫だろう。発情期らしいな」

誰が猫で発情期なんだと言えるものなら言ってやりたい。だけどここで口を開いたら先ほどの声がオレだとバレてしまう。
いくらビアンキさんに焼きもちを妬いていても、そんな声を聞かれるのはご免だから唇を噛んで我慢していれば、先生の指が乳首をつまむとケータイを持ったままの肘でそこを擦った。
先ほどまで弄られ続けてきた先をパジャマの薄い布地越しに肘を押し付けられると腰が揺れる。

「ゃ、ぁ!」

擦られるたびに身体中に電気が走りビクビクと足が震え噛み締めた口端から声が零れる。やめたくないけどやめて欲しくて先生のパジャマの胸元を手で押し返すと、今度は股間を膝で擦られた。

「っつ!」

『いやだ。随分うるさいみたいね』

流されそうになるたびにビアンキさんの声に水を差されてどうにか堪えるも、ケータイを手にしたままの先生はオレの状態を知っているのに動きをとめてくれない。

「悪いな。普段は大人しいんだが、盛ると理性が利かないらしい」

オレを見ながらの台詞に顔から火が出そうに熱くなる。盛ってなんかいないと言えずに口を押さえていれば、先生の指先が膨らんだ乳首の先を押し潰した。

「んっ、あ!」

気持ちよさに仰け反ると、すかさず起立も擦られて先生のパジャマを体液で汚していく。じわじわと溢れる先走りを塗り付けるように膝が動き、それから逃れようとシーツに顔を埋めた。

「じゃあ、そろそろ切るぞ」

『あ!待って!』

盗み聞きをしている訳でもないのに先生が近付いているせいで聞こえてしまう声に自然と聞き耳を立てていれば、ビアンキさんの制止が響いて嫌な予感にぐっと息を飲み込んだ。

『誕生日おめでとう。本当はそれを言いたかったの』

普段聞く声よりずっと女らしい声色に頭の中が真っ白になる。先生はオレと結婚しているのにとか、オレはビアンキさんは好みじゃないけど普通の男だったら言い寄られて悪い気はしないだろうとか、色々と胸の中で渦巻いて、気付いたらシーツから顔を上げて先生のケータイを持つ手にしがみ付いていた。

「オ、オレの方が先に祝うんだからな!」

誰に宣言するとはなしにそう言うと、先生の手からケータイを取り上げてソファへ放り投げる。ソファの端からゴトリと落ちたケータイに意識を奪われていれば、肩を掴まれてベッドの上に押し倒された。

「最初に祝ってるれるんだろう?」

「え、あ…うん」

そういえばケータイは切ってあったのかを確かめていない。それに気付いて上の空で返事をするも、先生はパジャマの上着を捲くり上げて顔を落としてきた。

「ちょっ!先生、プレゼントは別の…」

「オレはこれがいいんだぞ。プレゼントってのは受け取る側が欲しいものが一番だと思わねえか?」

「そうだけど」

確かに一理あると頷きかけてハッと気付く。また流されそうになったことに慌てて先生の顔を押し返そうと手を伸ばすも構わず顔が落ちてきた。

「普段のトロさが嘘みてえだったな。お陰でケータイが切れたか分からないぞ」

「ええ!それヤバいって…っ、つ!」

肌の上をくすぐるような低い声にゾクリと背筋を泡立てながら、自分で放り投げたケータイが落ちていった先に顔を向ける。その隙をついて先生が胸元に齧り付いてきた。
痛いのにそれだけじゃないから振り払えない。
逃げることも出来ずに身体を仰け反らせると、強弱をつけて歯で膨らみを弄られる。
滲んだ視界でどうにか自分の胸元を覗くと、先生はこちらを振り仰ぐことなく無心でそこを食んでいる。
その姿に引き摺られるように興奮していった。

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