おまけ1.手の平がじっとりと汗を掻きはじめていた。 転がされた先のソファに身体を上から押さえつけられて、眼前にはリボーンがいてそれはいいのだけれど、横には隼人、ランボ、武の3人もお邪魔虫がいる。 心底どいて欲しい。オレは見られながらじゃないと燃えないなんていう性癖はない。 だというのに、もう待たないと言って強引にことを進めようとするリボーンと、オレたちを認めないと言い張ってここを立ち去らない3人の勝負になっていた。 そりゃあね、ボスが独り者っていうのも格好がつかないし、しかも相手があのリボーンだっていうのがそもそも理解できない理由のひとつだと思う。 15年も一緒に寝起きして、同じ釜のメシを食って、しかも家庭教師とダメ生徒だったオレたちが今やボスとそのお抱えヒットマンという関係へとなって久しいのだからそれが突然恋人になりました、なんて言われても信用できないと思う。 それに美人な愛人がいっぱいいるリボーンと、地味な東洋人のオレとじゃやっぱり信憑性に欠けるのだろう。 オレもオレのどこが気に入ってもらえたのかよく分からないくらいだし。 だからこそ、本当に恋人になったことを確かめたいのにこの状況だ。 目の前のリボーンも言葉ではすると言いながらも躊躇ってシャツの裾から差し込んだ手も脇腹を撫でているだけで、その中途半端な手付きに余計に煽られていく。 どうしようからどうしてくれように変わっていくまでに時間は掛からなかった。 首筋に張り付いていたリボーンの頭を押し遣ると、むくりと起き上がる。 驚いたリボーンの前でネクタイを自ら外してジャケットも脱ぎ捨てた。 「い、いま更なかったことにはならないんだからな!」 声が上擦るも、必死で羞恥を殺してカフスへと手をかける。上手く取れないそれに前から手が添えられてスルッと外されると柔らかな内側に口付けられてチリッとした痛みが走る。幾度も吸い付かれ、その度に赤い鬱血の痕が残されていく肌に欲情の種火が灯されていく。 「…いいのか?」 「仕方ないだろ…お前明日からまた仕事だし。その予定を組んだのはオレで、オレだってその…したいし…」 言いたいことも尻すぼみになって顔も上げられない。一々確かめなくても、なんて八つ当たりしたくなったがそれもわざとなのだろう。言わせることで知らしめたといったところか。 オレの言葉に動揺している3人に向かって最後の宣告をした。 「オレは見て欲しいなんて思ってない。だから出て行こうが見てようが好きにすればいい。だけど、一旦出たら戻ってこないこと。…それと、後で変なもん見せられたって文句は言わないでよ?いい?」 ヤケクソで言い切ると、リボーンの首にしがみ付いて唇に唇を重ねていった。染み付いた硝煙のわずかな匂いを吸い込みながら、少し冷たい頬に手を添えて。 リボーンほどじゃないけど、何人かはいた愛人とのそれを思い出しながら舌を入れると先を舐められる。でもそれ以上する気はないのか、それともオレがするのが楽しいのか…どちらかといえば後者だろうが…ともかく誘われるままに舌を絡ませていく。 極力意識しないようにと思ってもやはり6つの目が気になってしょうがない。目を瞑っているのに見られていることが分かる。誰かの喉が唾を飲み込んでゴクリと静かな部屋に響いた。 恥ずかしくない訳がない。逃げ出したいけど、ここで逃げたらまた同じようにリボーンとの仲を邪魔されかねない。もう意地の張り合いだ。 ここで勝てば邪魔はしてこないだろう。だから顔が赤くなろうとも、決して離れないし嫌がらないで受け止めようとしがみ付いた手に力を入れる。 していた筈が、いつの間にか主導権が渡っていたキスが終わると力の抜けた身体をゴロリと転がされた。ぼんやりと上にいるリボーンを見詰めていると、横からランボの情けない声が聞こえてきた。 「が、がまん…………できません!ボンゴレが…すぎるぅ!!」 バタバタと騒がしく足音を立てながら扉の向こうに消えたランボに呆れた。今なんか変なこと言わなかった?聞き間違いか?それにしても気持ち悪くなるくらいなら見なきゃいいのに。 「聞き間違いでもなけりゃ、気持ち悪くて逃げてった訳じゃねぇぞ…」 「へ…?」 ならなんだろう?意識が扉に向いていると、脇腹を撫でていた手はするりと奥まで差し込まれ脇から胸をゆるりとまあるく撫ではじめた。くすぐったさに笑いが漏れる。 「ちょ、タンマ!くすぐった…ぁ…っつ!」 胸の先を軽く擦られて息とも喘ぎとも取れない声が零れた。咄嗟に顔をソファの背に押し付けて顔を隠す。 それでも手はリボーンのジャケットを握りしめたままで離さない。 上からくくくっ…と笑われても唇を噛み締めて指の動きをやり過ごした。 腹へと下っていった手にホッと息を吐いていると、いきなりシャツの上に顔を寄せてきた。何をするのだろうか。ぼんやり眺める先でシャツの中で尖る胸の先に口付けられた。舌先で膨らんだそこを押えられ、唾液で濡れて張り付いたシャツの上から何度も舐められた。布の上からのもどかしい刺激に思わず声が漏れる。 あぁ…!と声が零れるのと、誰かが立ち上がったのはほぼ同時だった。 「すっすみませーーーんッ!!」 まさに脱兎の如くといった去り際とおかしな格好に、荒い息を零しながらも呆然と隼人を見送った。 と、いうか。 「…すごい鼻血出してたけど、平気かな?」 「血の気が上ったんだろ。…出しゃ平気だろうが………使われんのは腹が立つな。」 出すって何を。使うって何に。 聞いちゃいけないことだと勘が言うので従った。きっと碌なことじゃない。 扉へと続く血痕を目で辿っていると、リボーンと武が互いに笑い合いながらも殺気立っていた。 「出てかねぇのか?」 「はははっ…冗談。これだけじゃツナと坊主が恋人だなんて分かんねーだろ。ツナ嫌がってるように見えるし。」 「嫌がってないよ!」 「っても、声も殺してるしな。それとも坊主が下手だったりな。」 ニカッと笑いながら何てことを! 他の人には分からないくらいながらも、オレにとってはものすごく分かりやすいリボーンの表情の変化に血の気が失せた。 先生、オレ男は初めてです。 武の挑発に易々乗らないで下さいぃぃい!! . |