リボツナ | ナノ



17.




「こいつがハムスターのスカルか?」

「うん!」

珍しくゲージに入れられたハムスター姿のスカルは、そんな綱吉たちのやり取りを聞いて拗ねたように小屋へや入ってしまいました。
それを見た山本はゲージをちょんちょんと叩いてスカルの気を引こうとしています。

「にしても、兎が見れなくて残念なのな!」

「ははは…は、」

見れる訳がありません。だってリボーンは綱吉の隣に人間の姿で座っているのですから。
いつもの黒いスーツで胡坐を掻いているリボーンは少しも面白くなさそうにフンと鼻を鳴らして横を向いています。




今日は土曜日。小学生の綱吉はお休みの日です。
そんな日にいつもは惰眠を貪っている綱吉が朝早くから起きて部屋の掃除をはじめたのですから、誰だって不審に思うというものでしょう。
勿論リボーンもそんな綱吉を見て嫌な予感を察しながらしばらく黙って見ていました。
積み重なっていた本をクローゼットに押し込めて、綱吉の細い腕に余る掃除機をかけるに至ってやっとリボーンが口を開きます。

「オイ、今日はどうしたんだ?」

朝一番に黒兎から人間へと変身したリボーンはそう綱吉に訊ねると、細い肩はあからさまにビクリと震えて引き攣った笑顔を見せました。

「え、へへっ…その、リボーンお昼寝しない?」

「する訳ねぇだろ」

当たり前だと睨むリボーンですが、綱吉が学校にいっている日中は兎姿のまま昼寝をしているのです。しかし、そんなことをバカ正直に話す筈もなくリボーンは綱吉にそう返事をしました。
すると綱吉は困ったなぁとその愛らしい眉をハの字にしてぶつぶつ呟いています。

「何が困るんだ?」

「ん、あの…前に言った友達が兎のリボーンとハムスターのスカルを見たいって言っててさ。その、今日来ることになってるんだけど」

言い難そうにリボーンを伺う綱吉を見て、リボーンはニヤリと笑いました。

「友だちにオレを紹介してくれるんだな?」

「う、うん…」

何だか意味が違うような気がしましたが、お頭の回転がよろしくない綱吉はとりあえず頷きました。
それを見てリボーンは益々イイ顔で笑います。

「そうかそうか。ならオレはこのままでいるぞ。」

「なんで!?」

「何でだと?夫が妻の友人に挨拶をするのに、どうして可愛らしい兎姿になるってんだ。」

さも当たり前だと胸を張るリボーンに、どこから突っ込めばいいのか思案の末にとりあえず当たり障りのないところから訊ねることにしました。

「……ひとつ聞いていい?妻って誰?」

「お前以外に誰がいる。」

「イヤイヤイヤ!!妻って女の人がなるものだよね?母さんが父さんにそう呼ばれてるって知ってるんだからな!」

綱吉が大声で否定するとリボーンは肩を竦めながら器用に首を振って言いました。

「男の癖に細かいことを気にするんじゃねぇ。そもそもずっと魔法が解けても傍にいたいと言ったのはツナだろ?」

「そっそれはそうなんだけど、なんか違うような」

「違わねぇぞ」

どこが違うのか分からない綱吉は、やっぱり今日もリボーンに言い包められてしまったのでした。
それを遠目で見ていたスカルは冷静に、それから深くため息を吐き出していました。その後の自分がどうなるかも知らずに。





そんな訳でスカルだけがハムスターになり、いつもは入れられていないゲージに押し込められて綱吉の『友だち』という2人に弄られる羽目となったのでした。予定調和というヤツです。

黒髪に焦げちゃの瞳の山本という少年は闊達で人懐っこい雰囲気でスカルをあやしています。もう一人の銀髪に緑色の瞳の少年はどこか排他的な瞳の色をしています。それでも何故か綱吉にだけは好意的な態度を見せる少年の名は獄寺といいました。

「沢田さん!オレも連れてきましたよ!」

「あ、リスだよね?」

ニコニコと可愛い笑顔を見せる綱吉に内心は腹が煮えくり返っていたリボーンでしたが、獄寺の手にしていたカゴの中でゴソゴソと物音を立てるそれが気になって仕方ありません。
そう、覚えのある感覚だからです。鈍い綱吉は分からないようですが、リボーンにはピンときたのです。
まさかという思いと、自分たち以外にも同じ境遇のヤツがいたという事実を前にリボーンは珍しく落ち着かない気分でそれを眺めていました。

「どうしたの?リスが好きなの?」

獄寺の手元を注視するリボーンを見て綱吉が訊ねます。それには答えず腕を組んだまま獄寺を睨むと慌てた様子で獄寺はカゴに手を入れました。
リボーンのことを綱吉の従兄だと思っているようです。よもや自分より2つも年下だとは思ってもいない獄寺は、リボーンには逆らわないと決めたようでした。

「うわぁ!可愛い…!」

カゴから顔を出したのは見たこともない白いリスでした。フワフワの毛は冬の寒さを耐えるためのものなのでしょう。小さな瞳は黒に近い紺色をしているように見えます。
獄寺の手から逃げ出したリスはリボーンの周りをまわると綱吉の肩へと駆け上がってきました。

「なんかツナのこと気に入ったみたいだな!」

「そうかなぁ…」

「そうっスよ!ユニ、沢田さんにご挨拶だ。」

ユニという名前を聞いたリボーンが、綱吉に擦り寄る白いリスをむんずと掴もうとするより早くリスは綱吉の襟元から奥へと侵入してしまいました。
慌てたのはリボーンです。

「なにやっていやがる、そいつを早く出せ!」

「分かってるけど…っ、く、くすぐったい!」

スカルと同じくらい小さなリスは、綱吉の服の中を縦横無尽に駆け回っています。リボーンに掴まるまいと逃げるような動きに苛々したリボーンが綱吉の服ごとリスを掴み上げました。

「いい加減にしろ、ユニ。」

「って、まさか知り合い?」

2人に聞こえないよう、リボーンに耳打ちした綱吉が自分の服の間からしぶしぶ這い出てきた白いリスを眺めていると。

「ツ、ツナ…その格好はちょっとヤバイのな」

「沢田さんの珠のようなお肌がっ!」

何を言っているのだとよくよく下を見ると、リボーンの手がリスごと服を掴み上げたせいでシャツが引っ張りあげられてひょろひょろのお腹と胸が見えてしまっていました。
しかし男同士なのに何をそんなに慌てているんだろうと綱吉が思った矢先にリボーンの手が今度は下に下がると2人の視界から隠すように立ち塞がりました。

「人の嫁をいやらしい目で見てんじゃねぇぞ、ガキが。」

などとリボーンが言うものだから、山本と獄寺は身を乗り出して綱吉に詰め寄ってきたのです。

「んな?!どういうことですか、沢田さんっ!」

「穏やかじゃねぇのな、小僧。」

それを押し止めると顎を上げて睥睨するような視線でリボーンが笑います。

「誰が小僧だ。言っとくがこいつは自分からオレと一緒に居たいっつったんだぞ。後からしゃしゃり出てきたてめぇらに入り込む隙はねぇ。」

と、綱吉を置いて3人で話がドンドン進んでいってしまっていました。
どうすればいいのやらと途方に暮れていると、やっと服から抜け出してきた白いリスが綱吉を見上げながら話しかけてきました。

『本当に仕方のない方たちね。これだから男の子っていつまでたっても子供なんだわ。』

「…え?」

またも頭に直接響く声をリスから感じて、綱吉は膝の上からこちらを見上げている紺色の瞳を見返しました。

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