リボツナ | ナノ



14.




綱吉に仕事がバレてしまったリボーンは、どうしても仕事をする姿が見たいと綱吉にお願いされて渋々スタジオに連れてくることになりました。
その方が長く仕事が出来るということもあり、都合がいいといえばいいのです。
しかし綱吉を女装させたくはないリボーンは、残りの2人を綱吉の護衛兼身代わりとして人型に戻して連れていくことにしました。

今までは猫とハムスター姿でのみ撮影に借り出されていたコロネロとスカルは、突然人型に戻された上にリボーンと一緒にポーズを取らされて居心地が悪そうです。
それでも綱吉のためだと聞いてぐっと我慢しています。

「すご…格好いいね!リボーンも、コロネロも、スカルも!」

今日は3人揃ってスーツを着込んでいます。
リボーンはいつものブラックスーツではなくピンストライプ、コロネロは折りが珍しい生地のものを、スカルは紺のそれです。
互いが顔を付き合わせることなく、好き勝手な方向を見ているのはそうでなければ喧嘩になってしまうせいでした。
そんな3人をスタジオの隅から覗いていた綱吉は、休憩だと抜け出してきた3人にそう声を掛けました。

「気を使わなくてもいいんだぞ?オレは当然だがこいつらはただのおまけだからな。」

「…」

「悪かったな。」

照れているのか無言のコロネロは綱吉と顔を合わせません。スカルはヤケクソになっているようです。
そんなコロネロの前に回りこんで顔を覗くと今更顔を赤くしています。
リボーンの知り合いだと聞いていた綱吉はてっきりコロネロやスカルもモデルだと思っていたのですが、どうやら違うようです。
リボーンよりほんの少し大きいコロネロのそんな様子に、やっぱり自分より2つ下なんだなぁと可愛く思っているとぐっと腕を引き寄せられました。

そういえば時間が迫っています。
コロネロは笹川家で飼われているために、リボーンやスカルと違って綱吉とキスをした回数が少ないせいで10分と人型でいることが出来ません。
最初にリボーンから話を聞いたコロネロは即座に拒否したのですが、その横でスカルがそれなら綱吉のためになるのだからキスされるのはいいってことだよな!?と迫っていたことを聞いて大人しくなったという経緯がありました。

それでも言い出せないコロネロは黙って綱吉の腕を握るだけで視線すらどこかへ向いたままです。
突然猫に変わってしまえばみんな困るんだと知っている綱吉は、掴まれていない方の手でコロネロの袖口を引っ張ると少しだけ顔を上げました。そこに軽く唇を合わせるとびっくりした様子のコロネロがやっと視線を綱吉に向けてくれました。

「コロネロも、すっごく格好いいよ!」

「お、おう…」

返事すらまともに返せないコロネロに本当だよと笑い掛けていると、綱吉の首に腕が回されてそのまま後ろへと引っ張られてよろけそうになりました。

「ぐぇぇ!危ないだろ、リボーン!」

「煩ぇ、そんな体力バカなんざほっとけ。」

体勢を崩した綱吉を難なく支えるとそうリボーンが呟きました。

「…どうかしたの?」

「何でもねぇ。」

怒っているらしいリボーンの表情を見ても綱吉にはさっぱり分かりません。するとその後ろからスカルの声が聞こえてきました。

「男の嫉妬は見苦しいぞ、先輩。」

嫉妬という単語の意味が分からない綱吉はスカルに訊ねようと顔をそちらに向けましたが、訊ねる前にリボーンがスカルを追い駆け始めたので聞くことができませんでした。
しばらくすると綺麗にセットされていたスカルの紫かがった髪の毛がぐしゃぐしゃにされた状態で襟首を引き摺られながらやってきました。
メイクさんが直すのですがらいい迷惑なんじゃないのかなと思いながらも、人型を保つためにまずはスカルに次いでリボーンにキスをしていると、足元に小さな何かが擦り寄ってきました。

「なんだろう?」

「サルじゃねぇか。ピグミーマーモセットとかいうヤツだろう。」

「ぴぐみー?」

「世界最小のサルだな。」

そういうとツナを抱えていた腕を離して小さなサルへと手を伸ばしました。けれど警戒心が強いのかリボーンの指が近付くと慌てて逃げ出してしまいました。

「誰かのペットなのかな?」

「ビアンキやメイクたちが飼ってるとは聞いたことがねぇぞ。」

小さな影が逃げていった廊下を4人で眺めていると、撮影を再開するわよとデザイナーであるビアンキが声を掛けてきました。









撮影が終わる頃には日は暮れていてアスファルトの上に4人分の長い影が落ちています。
やはり最後に綱吉に女装をと迫ってきたビアンキから逃げてきた4人は、沢田家へと向かっていました。

「どうしてオレなんかにあんな服を着せたいんだろう…京子ちゃんみたいな可愛い子に言えばいいのにね。」

ふりひらしたデコラティブな服を思い出しながらコロネロに話し掛けてもコロネロは頷いてくれません。どうしてだろうと不思議に思いながらも今度はスカルに同意を求めても同じです。

「似合わねぇ訳じゃなくて、見せんのが惜しいだけだからな。」

「はぁ?」

それではまるで似合うといわれたも同然です。リボーンの審美眼は可笑しいと綱吉は顔を顰めて睨みつけましたが、逆に呆れたといでもいいたげに大きなため息を吐かれてしまいました。

「どういう意味だよ!」

「だから言葉通りだろうが。」

リボーンもスカルもコロネロも外国人だから変わってるんだと綱吉は思うことにして、話題を変えようと3人の顔を見ながら言い出しました。
今日はコロネロも泊まっていくといっています。ならばみんなでお風呂に入ろうと言うとスカルは頷き、コロネロは顔を真っ赤にして顔を押え、リボーンは許す訳がねぇだろうと怒りはじめました。

「もう…たまには仲良くしようよ!」

「「「ムリだ!」」」

そこは譲れない3人でした。










リボーンがことごとく邪魔をしたせいで綱吉は珍しく一人でお風呂に入ることになってしまいました。
普段はリボーンと2人で入っているのにと寂しく思いながらも湯船に浸かっていると小窓から小さい影が現れました。

「あれ?撮影所にいたピグミーなんとかっていうおサルさん?」

チチチッ!と小鳥のような鳴き声を上げる小サルの前にそっと手の平を広げると、その上を通って綱吉の腕から肩を駆け抜けてバスタブの脇にちょこんと座り込みました。
初めてみたピグミーマーモセットに綱吉はびっくりです。

「うわぁ…本当に小さい。可愛い…!」

小サルと同じくバスタブに腰掛けた綱吉はまるでこちらの言葉が分かるように大人しい様子の動物に少し近寄りました。

「スカルみたいに人間が怖いとかないのかな?」

『ありませんよ。』

とどこからか聞こえてきた言葉は流暢な日本語です。そしてそれはもの凄く覚えのある感覚でもありました。

『先ほどは邪魔者が3人もいましたが今はこの子だけで丁度いい。試させて頂きましょうか。』

「……って、なにを試す気?」

頭に直接響く声にそう返事をすれば、目の前の子サルがあからさまに動揺しています。

『なっ?!まさか私の言葉が分かる訳では…』

「分かるよ。だってリボーンたちと同じだもん。」

ジッと子サルと綱吉は見詰め合いました。

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