リボツナ | ナノ



13.




バツが悪そうに視線を逸らして答えをはぐらかそうとするリボーンに近寄ると、くるりと背を向けられてしまいました。
ですが綱吉もそこで諦める訳にはいきません。だって聞きかった何がが分かる気がするのですから。

居間へと逃げ出そうとするリボーンのスーツの裾を掴むと少しだけ綱吉より背の高いリボーンの肩に額を乗せて懐いてみせます。リボーンはこういった綱吉からの接触に弱いことを知っているからです。
黙ってリボーンの肩に頭を預けていると逃げ出そうとした足を止めて大きなため息が漏れ聞こえました。

「…なんであれがオレだと分かった?」

「なんでって…どこからどう見てもリボーンだろ?」

妙なことを言い出すリボーンにそう返せば今度は小さなため息も聞こえてきました。
しぶしぶといった様子のリボーンが腹を決めたように顔を綱吉に向けると顔を寄せてきました。そういえばそろそろ時間だったかと綱吉も顔を上げてちゅっと唇を重ねると背中に手がまわってきました。
自分よりも2つも年下なのに慣れているのはお国柄かと思っていたのに、実はそうではないかもしれないことを思い出した綱吉はすぐに顔を離すとじっとリボーンを見詰めます。

「どうしてリボーンが女の子みたいな格好でポスターになってるんだよ。」

「それは…チッ、しくじったな。」

「なんだよ、それ!?しくじったって…!」

さも嫌そうに舌打ちするリボーンに、思わずムカっとして掴みかかるとよしよしと頭を撫でられて余計に綱吉は頭に血が昇ります。けれどそれを見ても口を閉ざそうとするリボーンを睨んでいると、突然後ろから声がかかりました。

「あら?引き篭もりは止めたのね、つー君。」

「お母さん!」

あんまりな一言に思わず後ろを振り返ると、お母さんはにっこりと笑いながら綱吉の頭を撫でてくれました。
そんなお母さんに複雑な表情を浮かべたままリボーンが挨拶をします。

「おはようだぞ、奈々。」

「おはよう、リボーン君。つー君を引っ張り出してきてくれてありがとう。」

とお母さんが言えば、リボーンは言葉を濁したようにあぁとだけ返事をします。いつものリボーンらしくない態度にピンときた綱吉は逃げられないようにリボーンの手を掴むとお母さんにポスターのことを訊ねました。

「ねぇ、あれってどうしたの?」

「あれ…?ああ、ポスターのことね。可愛いでしょう?海外で有名な子供服のブランドが今、日本で春夏物の撮影をしているんですって!なんでもこの並盛にいるとかで協力をお願いされた商店街のお店がこれを頂いたそうよ。でもお魚屋さんはこういうの興味ないって言うから遠慮なく貰ってきちゃったの。」

本当に可愛い女の子よねぇ!なんて絶賛する母さんを尻目に、顔を伏せて綱吉の視線から逃れようとするリボーンの手を握ったまま先に着替えてくるねと言ってまた2階の自室へとあがっていきました。
どうやらお母さんはポスターの女の子がリボーンだとは気付いていないようです。
渋々といった様子のリボーンを引っ張りながら部屋へと戻ると、扉をきちんと閉めてお母さんが朝食の支度を始めた音を確認してから顔を覗き込んで聞きました。

「どうしてリボーンは女の子のフリしてモデルとかいうのをしてるの?」

「フリなんざしてねぇ。普通に男児モデルだぞ。」

「ふうん…でも、あのポスターは女の子に見えるよ?」

「だから…!」

追求の手を緩めずに訊ねれば、

「奈々が以前、オレとツナの写真をブログにあげたことがあっただろう。」

「あー…あった、かな?」

日中は学校に通っているせいでそういったことに疎い綱吉は適当に返事をしました。それに珍しく気付かないリボーンが続けます。

「それをたまたまあっちの知り合いだったデザイナーが見つけたんだと。」

「どんな写真だった?」

「…2人で奈々のエプロンをしてお菓子作りをしていたヤツだ。」

「あー!あれ!」

言われてやっと綱吉は思い出しました。クリスマスケーキを2人でデコレーションしようと奮闘した日のことを。
お母さんの予備のエプロンはフリフリだったりリボンが一杯だったりとあまり実用的ではありませんでした。けれど綱吉はそういったことに頓着がない性質で、リボーンはといえばこだわりはありましたがたかがそれだけのために子供用エプロンを買って欲しいとは言い出せずに我慢して身につけていたようです。
そんな2人をお母さんはカメラに納めてブログに投稿したのだと言っていたことを思い出しました。
可愛らしい純白のエプロンを身に纏った綱吉と、ピンクに黒いリボンが散りばめられたエプロンを着けていたリボーンはお互いが可愛いなと思うくらいでした。

そんなあれこれを思い出した綱吉はそれを見たデザイナーがリボーンになんと言ってきたのかを理解しました。
いくら綱吉より少し大きいとはいえ、リボーンもまだまだ子供です。しかも中身はともかく見た目は綺麗なお人形さんみないに整っているのですから。

「そ、そうかぁ…!」

笑いださないようにと気を付けていたのに、やっぱりぷすっと漏れた声にリボーンが即座に反応します。

「そういうツナも女と勘違いされてんだぞ。オレとセットで専属になって貰いたいといまだにしつこいったらねぇんだ。」

「えぇぇえ!!?オレぇ??」

おおきな瞳をパチパチと瞬かせながらリボーンに視線を合わせると、そんな無自覚な綱吉をぎゅうと抱き寄せました。

「リ、リボーン?!」

「ツナを人目に晒すぐらいならオレが代わりに女装するぐらいなんともねぇぞ。」

どうやらツナを隠すために自らが女装することにしたようです。そんなリボーンの気持ちを知って綱吉は驚きとそれから胸の奥がふわふわと膨らんで暖かくなってきました。
自分のためだと言われてなんだかこそばゆいような照れが混じった面持ちに変わると、それを見ていたリボーンが顔を近づけてきました。
まだ兎に戻るには時間があります。どうしたんだろうと思っても逃げる気持ちも湧かない綱吉は迫ってくる顔にゆっくりと目を閉じます。
唇の上に息がかかってもう少しでそれが重なるというところで、くしゅん!と小さな小さなくしゃみが聞こえてきました。

「なっ、う、わぁ…!」

途端に夢から覚めたように羞恥が戻ってきて、綱吉は慌てて目の前の顔を押し戻すと後ろにぴょんと跳び退りました。
それを見ていたリボーンはヤレヤレと肩を竦めてからくるりと後ろを振り返りました。

「…パシリの分際でどこまで邪魔すれば気が済むんだ?」

綱吉の布団から転がり出てきていたスカルが、寒さに耐えかねてくしゃみを零してしまいました。
それを聞きつけたリボーンがいつもの無表情から怒りを漲らせながら、スカルがゲージの中に逃げ込むまでハムスター姿の彼を追い駆けまわしていたということです。

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