リボツナ | ナノ



4.電話+嫉妬=xxxの方程式




先生から逃れるために取り上げた携帯電話の通話ボタンを押すと、獄寺くんの声がスピーカーから大音量で流れてきた。

『沢田さん!ご無事で?!』

「ご無事って…いや、うん、」

朝から先生に付き合わされたので無事かといえばそうでもないが、それを友だちに喋るほど恥知らずでもない。
言葉を濁していると、今度はガサゴソという音と獄寺くんのてめぇ!という怒声の後に山本の声が聞こえてきた。

『よ!ツナ!体調はいいのか?』

「たっ体調って?!」

先生とのことを聞かれた訳でもないのに、それを知られているような気がして声が裏返る。山本の横からは獄寺くんが早く返せと怒鳴る声も聞こえたがそれどころではない。

『ん?体調が悪いから医者に寄ってから登校してくるんだろ?風邪なのか?』

「そっ、そう!そうなんだ!今、まだ待合室で…!」

どうやら先生が裏で手を回してくれたらしい。
バレなかったことにホッと息をついていると、電話口から顰めた声でボソリと呟かれた。

『まぁ、本当は夫婦の事情ってヤツなんだよな?』

「っ!?」

やはりバレていたことを知らされて顔が赤くなっていく。山本が目の前にいる訳でもないのに顔を上げることが出来なくなって俯いていると、突然後ろから腕が伸びてソファの上の先生の膝の上に抱え上げられた。

まだ話し中だから大人しくしていて欲しいとジェスチャーで訴えるも、それを無視してオレの肩に顎を乗せて聞き耳を立てている。
離れる気はないらしい。
聞かれて困る会話もないと開き直って意識を山本へと戻すと、短パンのウエストから先生の手がするっと入り込んできた。

「ひぃ…!」

『ツナ?』

「な、んでもない!なに?!」

ゴムで締められているだけのウエストは簡単に入り込むことができる作りになっている。
オレの意識が電話に向いた隙に先生は下着の中にまで手を差し込むとまだなんの反応も示していない中心をゆるゆると弄り始めた。

妙な声はあげまいと張り上げた大声を聞いて山本が不審げに様子を窺っているのが分かる。大丈夫だからと言っても揺れる声に説得力はなくて、次第にその声すら出せなくなってきた。

「…どうした、トモダチが心配して電話をくれたんだろう?午後から行くと言ってやればどうだ?」

「っつ…はっ!離し、て…!」

首筋を啄ばみながら低く囁く声に先生の手の中で膨らんでいく自身を感じた。朝から2度も白濁を吐き出したソコは、今までの沈黙が嘘のようにあっけなくまた起ち上がっていく。

電話先では山本が様子を窺い、背後からは悪戯な手が先走りでぬるつく先を親指でくりくりと弄っている。
逃げ出そうと足を床に着けると、後ろから短パンをずるんと剥かれて慌てて先生の膝の上に戻った。

「やっ!」

膝で撓(たわ)んだ短パンと下着のせいで思うように動けないオレは、それでも短パンを引っ張り上げようとそれを掴んでいると後ろから先ほどより元気になった先生のソコを押し付けられて悲鳴があがる。

『ツナ?』

それに反応した山本が声を掛けてきたが思うように声が出せなかった。
電話を切ればいいのにそれすら思い浮かばない状態で携帯電話を握ったまま身体を強張らせていると、掴んでいた短パンを下に引っ張られて床に落ちていった。

「あっ…」

「その声、山本とかいうヤツだな。心配しているみてぇだぞ?」

聞き取れないほど小さな声で肌の上から押し付けられるように囁かれた。艶声なる言葉があるが、まさしくその通りの美声に絡め取られて逃げ出そうという気が萎えてくる。
Tシャツの裾から忍び込んできた手が抱きかかえるように後ろへと身体を引くと、簡単に先生の胸に転がり込んだ。

「どうした?ツナ。」

携帯電話を充てていない方の耳たぶを食みながら問われても、声を上げないように堪えるだけで精一杯だった。
耳裏を舌でネロリと舐め上げられて必死で瞼を閉じてやり過ごそうとする。そこにオレの声が聞こえなくなって心配した山本の声が響いた。

『…ツナ?』

「っ、ぁ…!」

携帯越しの声なのにあまりに近くから聞こえたせいでビクンと身体が震えると、オレの起立を撫でていた先生の指がおもしろくないといいたげにぎゅっと根元を握り締める。

「痛っ…!」

『どうした?どこが痛いんだ?』

「ちが、んっ…!」

思わず漏れた声に山本が声を掛けてくれたが、それに返事をすることも許さないと服の中に入り込んでいた手が胸の先を柔らかく摘み上げた。
弄られる度に下肢が熱を持ち、握られ押さえられているソコから粘ついた液が伝い落ちる。
頭を振って止めて欲しいと小さく懇願するが聞こえなかったのか、手を緩めることはなく摘まれた先へ先生の顔が近付いてきたかと思えばTシャツの上から舐め取られた。

「あっ!」

唾液を含んだTシャツから浮かび上がるように起ち上がった先を形が分かるように舌でなぞられて、先生の手の中の起立がビクビクと震える。
震える手で携帯を掴んだまま胸の先を舐める先生の顔に手を添えると、やっと顔を上げた先生は余裕綽々の笑みを浮かべたまま訊ねた。

「どうする?」

「あ、あの…して、」

胸に携帯を抱えたままソファに転がされ、Tシャツも捲くり上げられた情けない格好でそう訴える。
けれど先生はオレの身体に乗り上げながらそうじゃねぇだろう?と優しげなのに有無を言わせない声音で呟いた。

「どこに何をして欲しいんだ?」

そんなこと言えないと叫んだところで変わりがないことをオレはよく知っていた。
散々慣らされ、悪いコトもイイ思いも覚えてしまった後では自制心が薄れてしまうのは仕方ないことだと思う。
先生しかいないのだと囁く悪魔の声に耳を傾けてしまったオレの負けだった。

膝を立てよく見えるように足を開くと手から携帯電話が零れ落ちてストンと床の上にころがった。
羞恥を上回る劣情に荒い息を吐き出しながら掠れる声で言った。

「ここに、先生の…を入れてっ…う、んん」

最後まで聞き取ると、よく言えたといわんばかりに唇を重ねられて差し込まれた舌に自分のそれを絡めた。
絡まり合う舌の音を聞きながら先生の手の行方を視界の端で捉えていると、その手が床に伸びて何かを掬い上げてきた。

まだ足りないと絡めていた舌を強引に外されて下から先生を睨むと、手にした携帯電話を耳に当ててニヤリと笑ってオレの痴態を眺めていた。

「いい格好だな、ツナ。なぁ、こいつはまだ繋がってんじゃねぇのか?」

「あ…」

山本が電話口にいることも忘れていたオレは、言われてやっと思い出すことが出来た。しかし既に遅い。
あれらの言葉をすべて聞かれてしまったなんて、今後どうやって顔を合わせればいいのか。
山本に合わせる顔がないと赤い顔を青くしていると、先生が楽しそうに笑い声を零した。

「くくく…そんなに恥ずかしけりゃ学校なんかやめちまえ。どの道このままじゃ赤点だらけで進級もムリだろうしな。それにもう嫁いでんだ、家にいればいいんだぞ。」

「それって…」

つまりはこうなることを分かってオレに悪戯をしたということか。
どうにも山本が気に入らない先生は、再三オレにあの学校を辞めろと口煩く忠告してきていた。
まんまとハメられたオレもバカだが、そんなことのために夫婦の情事を他人に聞かせる先生はもっとバカだ。

嬉しそうな顔で携帯に語りかけた先生の顔が途中で曇りはじめた。

「どうしたの…?」

「チッ、電話を切っていやがった。どこまでも抜け目のねぇガキだ。」

スッと伸びた綺麗な眉をピクピクと跳ねさせて不機嫌さを迸らせる先生には悪いが、山本の咄嗟の心遣いに感謝を叫びだしたいぐらいの気持ちでいた。

「まぁ、それでも獄寺が掛け直さねぇところをみるとちっとはツナのエロ声を聞いちまったかもしれねぇな。」

「えろ…」

エロ声は先生の方だと思ったが、呆れて反論することも出来ない。
今回の一件で分かったのは、先生の心は広そうに見えて浅いからすぐに溢れてしまうということだった。


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