リボツナ | ナノ



5.




静かな夜だった。

渡り廊下を照らすのは満月からほんの少し欠けはじめた月明かりと園庭をわずかに照らす外灯だけ。
横から入り込む月の光が廊下に長い影を作り出す。

オレの横に転がるのは銀の弾丸が2つと、耳にこびり付いた断末魔の叫び。
それから。

コツンと音を響かせて現れた男はどこからが本人なのか分からないほど暗闇と同化していた。
ぼやけているのではなくはっきりとそこに在ることは分かるのに、どこまでもその男の支配下に置かれた闇はオレの手元を照らす月明かりとは真逆の存在感を見せ付ける。

やはりこれも夢なのだろうか。
けれど喉元には今でもまだ命を握りつぶされる寸前のヒリつく痛みが残っていた。
恐怖ではなく、痛みからでもない感情がじわりと湧きあがる。
助かったのだとやっと理解できた。

ドクンドクンと流れる血潮が生の在り処を思い起こさせる。
ぼんやりと手元に転がる銀の弾を手に取ると、何も言わずこちらを見ている男へと差し出した。

「それはもう役に立たねぇ。日の光に当てれば浄化して消えていくモンだ。」

「そう…」

聞きたいことがあったのに、今はそれを聞くべきじゃないのだと感じた。何故なのかは分からない。
手から弾を床に落とすと何かに引かれるように立ち上がる。
銃を懐に収めた男に近付いていくと強い力で引き寄せられた。
ヒソと耳朶に落ちる声音に疑問も抵抗もすべて吹き飛んでいく。

「助けてやった礼は貰うぞ。」

耳裏に寄せられた牙の感触にぎゅっと瞼を閉じて息を殺した。









肌に纏わりつく硬い布地が擦れる度に、否が応でもそれ以外身に着けていないことを思い知らされる。
脱がされたズボンもシャツも下着さえそこかしこに散乱していて、唯一残されたエプロンすらわずかに下肢を覆うだけだ。
その奥に蠢く手に追い立てられて先走りを滲ませていく。

堪え切れずに吐き出した息は媚を含み、甘い吐息ごと廊下に消えた。
月明かりも届かない廊下の奥で、着ていた服を剥ぎ取られ大きく広げた足の間に男が居座っていた。
起立をゆるく上下していた手が先をピンと跳ね、ビクビクと揺れる。
仰け反ったオレの上からそれを見ていた男は解けかけたエプロンの隙間から覗く胸の先に歯を立てた。

「ヒッ…!」

牙でなぞられて恐怖と快楽の狭間で声が漏れた。
それを知ってわざと男は硬くしこった先を幾度も歯でつつく。
その間も手は起立を苛めることを止めず、裏筋を指で擦られて気持ちよさに胸を男に押し付けた。
跳ねる肩を手で押さえられ、噛まれたせいで赤く色付いた先に吸い付かれる。

上と下を同時に攻められて抵抗する間もなく精を搾り取られた。
ぐっと握られた起立を最後の一滴まで吐き出せといわんばかりに擦られて、そこを覆っていたエプロンにしみを作る。
勢いをなくした中心を握ったまま、男は胸から顔を下に落とすと湿ったエプロンを跳ね上げてそこを口に含んだ。

「あっ、あ!」

白濁に濡れた起立を根元まで咥えられ、生暖かい舌が舐め取っていく。
エプロンの向こうから覗く淫靡な行為になす術もない。
萎えていた筈のそこがまた頭をもたげるはじめた。

男は丁寧に先を舐め取ると裏筋を伝って淡い叢に零れた精液を追っていき、すべて嚥下しおえると膝裏を抱え上げられてもっと奥を探りだす。
辿った先にあった窄まりを舌で弄られて足に力が入った。
それにも構わず唾液を塗りこめられて声があがる。

怖さからではなく、そこから広がる疼きによってだった。

舌によって中まで塗り込められた唾液は、甘い毒のように羞恥を麻痺させて止めようもなく奥がうねり出す。
殺せない喘ぎがあがるとやっとそこから男は顔を上げた。

「契約がなければ吸い尽くしてやりたいところだが、そうもいかねぇからな。こっちで払ってもらおうか。」

言うと疼いていた窄まりに男の指が入り込んできた。
唾液で濡れたそこにぬぷっと突き入れた指は痛みもなく奥まで吸い込まれていく。
男の指が濡れた音を立ててさぐる度にビクンと身体が跳ねる。
そんなオレの胸元をもう片方の手で押さえつけると肩口に吸い付く。

「ふっ…う、ん、ンあぁ!」

チリッとした痛みを肩に覚え視線をそちらに向けるとまるで血のような鮮やかな赤い跡がつけられていた。
それを目にした途端耐えられないほどの疼きを覚えて男にしがみ付く。
反射的に男の指を締め付けてしまい肩の上の男がくくくっと声を漏らした。

「もっとイイ声で啼くんだぞ。」

肩から首筋を辿る唇が耳元に落ちてそう呟くと、指を増やされて乱暴に掻き回された。
ぐちゅぐちゅと奥を弄る指に踊らされる。
痛みも、恐怖も、羞恥もなく喘ぎ声を上げると男の顔が近付いてきた。

状況も忘れその冷たく整った顔を眺めた。
職人が作り出した人形のような温かみを感じない美貌とは逆に、オレを見詰める瞳の色はギラギラしていて獣のようだ。
そういえばヴァンパイアなのだと思い出すと、忙しない息を吐き出す唇に男の冷たい唇が重なった。

薄く開いた下唇を舐めるとそのままヌルリと舌が口腔の中に忍び込む。
カチカチと牙が歯に当たり、その存在を主張する。
その間にも奥に突き立てた指は遠慮なく隅々までまさぐるとイイ場所を見つけ出していた。
そこを指で押し付けられて、喉の奥でうめき声をあげる。

自らの白濁の味が口いっぱいに広がり、そのまま男の唾液とともに飲み込んだ。
噎せるような快楽に身を任せると奥を犯す指が執拗にソコを責め立てる。
飲み込めず口端から零れた唾液は頬を伝って床に零れていった。

「んふっ、ん、んー!」

ぐりっと擦られて叫びとともに2度目の迸りを飛び散らすと、唇から離れた顔がまた下へと向かっていく。
腹と太腿を汚した白濁をまたも舐め取った男は、挿れたままの指をゆるく動かすと楽しそうに呟いた。

「さて何回オレを楽しませてくれるんだろうな?」

萎れた起立の先に歯を立ててニヤリと笑った。










コチコチコチ…という規則的な音で目を覚ましたオレは、酷く重い身体に違和感を覚えながらも手をついて頭を上げて辺りを見渡した。
オレの隣にはリボーンが転がっていて、他の子供たちもスースーと寝息を立ててつい立の向こうで寝ているようだ。

頭の上の時計を見れば5時を回っていた。
そろそろ早番が出勤してくる頃だろう。
軋む節々に風邪でもひいたのかと危ぶみながらも起き上がる。

そういえば昨晩の子供たちを寝かしつけた後の記憶がない。
リボーンと一緒に寝てしまったのかと思いながらも、オレにしがみ付いていたリボーンの手を解こうとしてギクリと身体が強張った。

「治って、る…?」

包帯をしていた筈の右手は何もなく、そして傷跡すら見当たらない。
治癒力が強いにも程がある。

白く小さい手を握ったまま呆然とその寝顔を見下ろした。


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