4.毛繕いをするように舌で肌を撫でられてその度にか細い喘ぎが零れた。 さんざん舌で脇腹から胸を舐めていた舌がぷくりと膨らんだ胸の先を見つけて、その形を楽しむように執拗に舌先で転がしている。 胸に覆い被さっているオレンジの髪に手を入れて引き剥がそうとすると、タイミングを見計らったように起立を扱かれて力が抜けた。 ねばつく先走りでぬめる亀頭の先をぐりぐりと弄られて気持ちよさにビクンと跳ねる。 するとこっちを向けと言わんばかりに尖った胸の先に噛み付かれた。 「いっ!」 ナッツの容赦ない犬歯に悲鳴を上げれば、負けじと亀頭を弄っていた指が外されて大きな手が痛いほど張り詰めた起立を掴んで擦り上げ始める。 ベッドの中央に転がされたオレは、上はナッツが、下をリボーンに押さえられて身動きが取れない。 逃げ出そうと蹴る足はシーツの上を滑るだけで力が入らなかった。 胸と起立を同時に弄られてはぁ…と殺しきれなかった息を吐き出せば、顔の横にいたレオンがレンズのような目でこちらをギョロリと眺めていた。 「ヤッ…!見んなっ!」 レオンが悪い訳じゃない。そこで見ていろとわざとオレの顔の横に置いたリボーンが悪い。 けれど心配そうにこちらを見ているようにも見えるレオンの視線に耐え切れず、ナッツの髪を引き剥がそうとしていた手で顔を覆う。 「ツナ、また硬くなったぞ。レオンに見られるのは緊張するのか?それとも気持ちよくなるのか?」 胸の上から退かないナッツが舌先で赤く尖った先から口を付けながら訊ねた。ナッツの口から漏れる息に嬲られ続けている先は反応を返す。 それを黙って見ていたリボーンが、無理矢理広げた足の間からくすりと笑った。 「イイんだぞ。こっちもぬるぬるだ。」 ほらなと扱いていた手を離して見えやすいようにと膝裏を掴まれて持ち上げられた。 「やめろよっ!」 見なくても分かる。張り詰めた先の割れ目から零れるぬめった体液と、それをしたたらせて血管が浮き出ているだろう淫らな起立。それからその奥に隠れている窄まりは期待に疼いていた。 ナッツとレオンの視線に晒されたオレは慌てて手で隠そうと手を添える。 その手を邪魔だというように押さえつけたのはナッツだった。 「見んな…!」 「どうして?ツナのそこ、気持ちいいからそうなるんだろう?だったらいいよね。」 とまたも胸に下を這わせた。ざりざりと音を立てて舐められると起立から先走りが溢れてくる。3対の視線に晒されながら下生えを濡らすと膝を抱えていたリボーンの手がすいっと太腿を伝い尻の膨らみを撫でた後その奥へと吸い込まれていった。 「んあっ!!」 いつものように潤滑剤もなにも塗られていない指が遠慮もなしにぐりぐりと窄まりを弄り、ついには無理矢理捻じ込まれる。 それでも行為に慣れている身体は痛みの底にある快楽の燠火を拾っていく。 ゆっくりと奥まで差し込まれた指がまるで別の生き物のようにクニクニと動き、その度にじわりと浮き出るように奥が疼く。 無意識に揺れる腰に手を這わされて、そのままリボーンの膝の上に乗せられる。 イヤイヤと零れる声とは逆に窄まりは指を食んで離さない。 くんっと奥のしこりを指でなぞられて背中が跳ねた。 「ツナ?」 「ヤ…っ!やめ、てっ!」 「嫌じゃなくてイイんだろ?…いつもみたいに言ったらどうだ、挿れてってな。」 奥を擦る手馴れた指と、恋人を目の前にして飢えている身体が火照っていた。それでも胸の上の存在を忘れることも出来ず、また開き直ることも理性が邪魔してできなかった。 それを分かった上でそれでも欲しいと言わせたいリボーンはもう片方の手を腿の内側に這わせると掴み上げて口付けを落とす。 跡の残りやすい肌に散った朱色のそれにぐらりと理性が飛びそうになる。 それでも首を振ると逃げ出そうと足でリボーンの肩を蹴った。 「もっとか?」 力の入らない足では効果はなく、けれど逃げようとしたことだけは伝わって余計に奥を弄られる。 抜き差しを始めた指が増えていき思わず喘ぎが漏れた。 「いゃ…あぁ!」 ほぐれて緩みはじめた窄まりに起立から溢れた先走りが伝わって湿った音が響いた。 荒い息遣いはオレのものしか聞こえず、上から眺めているリボーンも胸から顔を上げてこちらを食い入るように見詰めるナッツも、リボーンの言いつけを忠実に守るレオンもみんなが息を殺しているように感じた。 一人だけ踊らされているようだ。 オレが喘ぐ姿を見て嘲っているような気分になって、なのにいやらしく膨らむ快楽とそれを止めることができない自分が不甲斐なくて前が滲んできた。 「嫌だ、嫌!見んな!見ないでっ!」 ぷっくりといやらしく起ち上がった胸の先から顔を上げたナッツがこちらを見ている。 嫌だと頭を振ると食い入るようにそれを眺めていたナッツが、胸から顔を上げてオレの腕を引き寄せた。 「ツナ、ツナ、ツナ…!」 語気を荒くして引き寄せた手を顔の横に押し付けられる。そのまま覗き込んでくる顔はオレとそっくりなのにオレとは違う表情を見せる。 「ナッ、ツ?」 突然の声に驚いて引っ込んでしまった涙の代わりにナッツの顔が歪んでいく。 泣きそうな、悔しいような、そして悲しいような顔をするナッツに手を差し伸べてやりたかった。 大事な、大事な、オレの相棒。 リボーンにはしょっちゅうてめぇは甘すぎる、そんなんじゃ飼い犬に手ぇ噛まれるぞと脅されているけど、それでもいいと思った。 だってナッツはオレの部下じゃない。相棒だ。 ベッドの上に縫いつけられたままの腕で抱き締めてやりたい。 いつも一緒に戦ってくれた一番頼りになる相棒の望みのひとつくらいは叶えてやれる筈だと下からナッツのオレンジ色の瞳を見詰めていると、じわっと滲みはじめた瞳が見る間に涙を溜める。 「オレ…人間になればツナを大事にしてやろうと思ってた。ぜったい、絶対こいつみたいにツナの嫌がることなんかしないって、」 「…うん。」 とうとう零れ始めた涙はオレの頬を伝ってシーツへと吸い込まれていく。 それを感じながら何かに苦しむナッツの本当の心が知りたいと思った。 「だけどツナの顔を見たら全部どこかに飛んでった。嫌がるツナの顔、可愛かった…」 「か、かわいい…」 同じ顔に言われるのも微妙だ。 上から覗き込む真剣な顔がぐしゃりと歪んで、自分では作らないようなひどく雄臭い表情を浮かべるナッツはそれでもにっこりと笑う。 「嫌がることしてごめん。でも忘れないで、ツナ。オレ、ツナのこと大好きだ。」 ちゅと唇を塞いだ口が幾度もそれを繰り返すと視界を塞ぐオレンジが透けていく。 匣に戻る時間だと気付いた頃にはナッツの姿は幽霊のように向こうが透けて見えるほどになっていた。 「ナッツ…!」 「オレ、絶対諦めないから。」 出てきた時と同じく、白い霧に包まれて姿を消したナッツが吸い込まれていった匣が床の上にゴロンと転がり落ちた。 手を伸ばして拾おうとすると、肩を掴まれベッドに押し戻される。 「久しぶりの恋人を放っておいて、ペットと何する気だ?」 「ペットじゃない、オレの相棒だ。」 キッと睨むとまだ入ったままだった指をぐりぐりと捻じ込まれた。 「だったら何だ、オレはてめぇを匣にくれてやる気はねぇぞ。」 と唇を寄せてきたリボーンが焼きもちを妬いていることに気が付いた。 「拗ねてる?」 「…誰が。」 一拍遅れた返事に含み笑いを浮かべると奥からずるっと指が引き抜かれた。 こじるように出ていった指のせいでリボーン不足が浮き彫りになった身体がズクズクと疼いている。 顔の横でこちらを見ていたレオンに手を差し出すとするりと手の平に乗ってきた。 「お前のご主人様を堪能したいからあっちに行ってくれる?」 聞き分けのいいレオンがオレが降ろした床の上を這っていくと、そのご主人様が憮然とした顔をしてこちらを睨んでいた。 「嫌ばっか言ってごめんな。これでお前だけの恋人だから。」 オレの肩を掴んでいたリボーンの首に腕を回すと出窓に置かれていた匣がカタカタと動き出した。 まるでオレはいるぞと主張しているようだ。 どうしようかと迷うオレを見たリボーンが、床に転がっていた自身の帽子を匣に投げた。 「これで誰も見れねぇぞ。」 「うん…」 やっぱり恋人と相棒は違うのだと思う。 仮眠室から自室へと移動してからずっと、寝る間も与えられずに夜を過ごした。 意識が飛ぶことも許されないというのはある意味拷問だ。 快楽と苦痛の境界線は曖昧なのだと知ったオレは一つ利口になったのだろうか? シャワーを浴び、バスローブを引っ掛けただけの姿でリボーンの背中に凭れ掛かっているとその背中から声が掛かる。 「後ろには気を付けろよ。」 「分かってるよ。ボスだし、命の危険は承知してます。」 「違うぞ。そっちじゃなくて、あの野郎を信頼し過ぎるなってことだ。」 「…あの野郎?」 誰だろうかと訝しんでいると、仕事で使ってきたらしいライフルの手入れから顔をあげてこちらを睨む。 「獣姦は好みか?」 「?!」 手入れを済ませた拳銃に何故か弾を装填したリボーンがどこかに照準を合わせた。 「出てきたら仕留めてやるぞ。」 ニッと笑った顔はそれはそれはイイ顔をしたヒットマンのそれだった。 . |