リボツナ | ナノ



2.





「で、何でナッツが人間になってるんだって?」

解かれた紐状の死ぬ気の炎から這い出して、ベッドの端からこちらを覗いているナッツにそう訊ねるとツナと同じ顔をしたナッツの眉間に皺が寄った。
言いたくないのか、思い出せないのかどちらだろうか。

うーんと腕を組んで考え込んでいたナッツは、また手から紐状の死ぬ気の炎を練り上げるとするりとツナの両手を拘束して転がった身体の上に乗り上げた。

「ちょ、まっ…!」

「んーと、『大好き』な人とこういうことするともっと仲良くなれるって聞いた。だからツナは黒いのとするんでしょう?」

「黒いの…ひょっとして、リボーン?」

「黒いの!」

よく分からないが名前は厳禁らしい。身体の上に乗り上げたナッツはまだ小さい筈なのにびくともしない。
そもそも自分の匣アニマルなのだからと警戒を解いたのが間違いだったのかもしれない。
何をするつもりなのかとナッツの顔を見上げていると、困った顔をしながらも小さい手がネクタイを解いていく。

シュルンという布擦れの音の次にプチプチとボタンを外す音が聞こえはじめるに至って、やっと「こういうこと」の意味を正確に掴むことができた。
慌ててまだ自由がきく足をバタつかせてナッツの下から逃げ出そうともがくと、足首まで縛られる。

「ナッツ!」

「しぃ…!騒がないで、暴れないでよツナ。それとも黒いのとは出来てもオレとはイヤ?」

そう問われ言葉に詰った。
本音で言えば勿論嫌である。縛られて自由を奪われた挙句に匣アニマル(今は何故か人型だけど)だなんて、冗談じゃない。

冗談じゃない筈なのに…

縋り付くような捨てられた子犬のような潤んだ目で見詰められるとこちらが悪いことをしている気分になってくる。
相手は匣兵器、しかも子供だ。

腹の上で項垂れるナッツのオレンジの髪を視界に入れて、それからひとつ大きなため息を吐くといいよと応えてしまう。
すると大きな瞳がキラキラと輝いて笑顔になった。

「ありがとう、ツナ!大事にするからね!」

「んん?」

どんな意味だと問おうとして口を開いたところで悲鳴になった。
いつの間に下までボタンを外されていたのか、そこからするっと滑りこんだ手が脇腹をなぞって胸のまだなんの反応も示していない先へと伸びていった。

「ひぃぃい!ちょ、変なとこ触んなっ…!」

「なんで?だって黒いのもこうしてただろ?ああ、そうか…その後こうしてた。」

言うと摘んでいた先に舌を這わせてペロペロと舐めはじめる。
感じまいと引き結んだ唇とは逆に、次第に硬くしこっていくのが自分でも分かった。

「ヤ…っ!」

恥ずかしくて、リボーン以外に感じてしまったことに後ろめたさを覚え、必死に拘束から逃れようと身体を跳ねさせる。すると舐めていた舌を引っ込めて、過敏になった先に歯を立てた。
さすが匣アニマルとでも言おうか、犬歯が赤く膨らんだ先に食い込んだ。

「痛い!」

「暴れるからだよ。ねぇ、ツナ。ここ触ってもいい?」

抗議の声を上げても知らん顔され、その上少し反応している下肢へとナッツの手が伸びる。
頭を振り、止めてと懇願してもスラックスの上を撫でる手は明確な意図を持って動く。
拙いながらも執拗に繰り替えされる胸への愛撫と、頭をもたげはじめた中心へのもどかしい動きに次第に抵抗する気が薄れていった。


そこにカツンと音が響き、ぼやけていた意識に妙にはっきりと届いた。

はっとして、クリアになった視界の先に見えたのはいつも綺麗に磨かれている革靴の先と。

「それは何プレイだ?それとも新手の自慰なのか?止めるべきか、見続けるべきか、さすがに迷ったぞツナ。」

珍しく本当に困惑顔を浮かべるリボーンが腰に手を当てたまま、仮眠室の扉の横でこちらを眺めていた。







猫のように足音を立てない独特の歩き方でベッドの横まで歩いてきたリボーンは、しげしげとオレとオレの上にいるナッツを眺めると顎に手を当てて唸っていた。

「で、そいつは何だ?」

「何っていうか…」

研究班のいつものいたずらによって人型に変化した相棒です、だなんて言っても信じてもらえるかどうか。
いや、信じては貰えるだろう。けれど今度こそ、研究員の命の保証はないことだけは確かだ。
つい先日もオレの声で受け答えする抱き枕を作成して、それを熱望していた守護者たちにバラ撒いたお陰で研究所のひとつが機能不全になったばかりだというのに。

正確に主要な機材、被検体やらを打ち抜かれた研究所は今でもまだ研究を再開できずにいる。
だというのにこれなのだ。
やはりジャンニーニを顧問にしたことが間違いだったのかと、黄昏ていればオレの上に乗っていたナッツが起ち上がりかけたスラックスの前を掴んでリボーンを振り返った。

「オイ、黒いの!そこで指を咥えてよーく見てろよ!どっちがツナの本当の相棒か思い知らせてやる!」

「って、ちょっと!バッ、ナッツ!!やめろて…!」

両手両足を縛り上げられたオレを難なく押さえ込んだナッツは、ベルトに手を掛けると不器用な仕草でのたのたと前を寛げていく。もどかしい動きに逆に煽られて先ほどより少し膨らんだそれをやっとといった様子でトランクスから取り出した。

「ツナ、気持ちよかったんだな!」

「ちがっ!」

ブンブンと頭を横に振って否定する。勿論ナッツの上からニイッと口端を引き上げてこちらを覗いている専属ヒットマンに向かってだ。
帽子で隠された目元と、表情の読めない口許にゾッとした。

「…そいつは匣アニマルのナッツなのか、ツナ?」

「そう、「オレの名前を呼び捨てにするな、黒いの!」

返事をしようと頷いたところでナッツが声を被せてきた。
ちなみに声までオレの幼い頃とよく似ている。
睨み合うナッツとリボーンから逃げ出そうと身体を横にずらすと中心を掴んでいたナッツの手に力が入る。

「いつもいつもオレとツナの逢瀬を邪魔して……今日こそどっちがツナの『一番』か勝負だ!」

ぎゅっと根元を締め上げられて痛さとも気持ちよさともつかない衝動に息を飲んだ。
それを聞いていたリボーンは鼻で笑うといいことを思いついたようにニタリと笑う。

「いいぞ、どっちがツナに喜ばれたか競争だな。」


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