リボツナ | ナノ



2.






沢田の手を取ってどころか、肩を抱いて登校するリボーンにあたりは騒然としていた。
女生徒はリボーンの外面のよさに心奪われていた者も多かったし、男子生徒はその隣のアイドル顔をした人物にハートを射抜かれたからに違いない。

「なんか今日騒がしいね。誰か偉い人か有名人でも来校するのかな?」

「さあな。」

自分が注目を集めていることに気付いていない沢田は、ついでにとんでもなく鈍かったのでリボーンの手が肩に回っていても気にしていなかった。
勿論分かっているリボーンはわざと見せ付けるように顔を寄せると周囲から悲鳴と怒声が上がる。

くつくつと笑うリボーンを斜め下から見上げた沢田はその大きな瞳でキョロと辺りを見回した。
途端、女生徒はギッと睨み返し、男子生徒は何故か手を振り始める。
明らかにおかしかった。

「あ…オレがダメツナだからリボーンと一緒にいるとおかしいのか。」

「んなことねぇぞ。オレはお前を気に入ったんだ。外野は好きに言わせとけ。」

「そ、そう?」

へへへ…と照れ笑いを浮かべた沢田にリボーンは抱いていた肩を引き寄せるとガバリと抱きつき、男女生徒の悲鳴が廊下に響き渡った。
それを聞きつけたのはリボーンの幼馴染みのコロネロとパシリとしていつもこき使われているスカルだった。

「なんだ?コラ!」

「煩いですよ……ってええぇぇえ?!どうしてツナが、先輩と…」

3組の教室から顔を覗かせたスカルがそう声を上げるとそれを聞きつけたリボーンとコロネロが声を揃えた。

「「てめぇ、どうしてツナを知ってやがる?」」

見事にハモった声に互いの顔を睨み付けるコロネロとリボーンを無視して、沢田はリボーンの腕の隙間から顔を覗かせると小さく手を振った。

「おはよう、スカル。」

「「おはようだ?」」

まだハモっていた。そして表情もシンクロしていたりする。
般若の面も可愛いと思えるような顔でコロネロとリボーンがスカルに詰め寄った。

「てめ、何ちゃっかりツナと挨拶かわしてんだコラァ!」

「つーか、パシリの分際で人様の恋路の邪魔をしようなんざいい度胸じゃねぇか。あぁん?」

自分勝手な先輩2人(同級生)にスカルが情けない声を上げると、沢田がすかさず間に割り込んできた。
大柄なコロネロとリボーンを見上げる瞳はちょっぴり怖さに滲んでいてそれが2人の萌えを一突きした。

「待ってよ。オレとスカルはパシリ仲間なんだ。」

必死にスカルを庇う姿にスカル後で殺すと決意されているとは露知らず、沢田は2人の顔を交互に眺めならが言った。

「「…パシリ仲間。」」

確かにスカルはコロネロとリボーンのパシリである。沢田もダメツナとして有名な故にクラスでパシリ扱いだったらしい。
いわゆるパシリ同士の友情とかいうヤツかと納得しかけた2人は、沢田にしがみつかれて鼻の下を伸ばしているスカルの表情を見て違うことに気が付いた。
少なくともスカルはこちら側だ。

「そう言や、何でてめぇまでツナを知ってんだ。」

「お、オレはツナがカツアゲされそうになってたところを助けただけだぜ。」

実情はちょっと違う。
その日、リボーンと競い合ったトラック競技で13回目の負けを喫したコロネロは腹の虫の居所が悪かった。
誰でもいいからぶちのめしてやりたいと思っていたところに、たまたまカツアゲされていた沢田と出会い必然的に助けたようになったというだけだ。
けれどそこは黙っておきたいコロネロだった。

嘘の吐けないコロネロは視線を彷徨わせ、コロネロの性格をよく知るリボーンとスカルは察しがついて呆れた。
しかしそこからどうしてコロネロが沢田のようなパシリ体質の少年と話をするようになったのかは分からない。
ジッとリボーンとスカルがコロネロを睨んでいると、スカルにしがみ付いたままの沢田がケロッと零した。

「助けてくれたんだけど、眼鏡にヒビが入っちゃってさ。それをコロネロが手を引いて眼鏡屋まで連れていってくれたんだよ。」

リボーンと同じ穴の狢である。
違いと言えば眼鏡を直してまた素顔を隠させたくらいだ。
その気持ちもよく分かるスカルは生ぬるい顔をしながらコロネロを見、そんなヘタレな心境など微塵も理解できないリボーンはフン!と鼻で笑った。

「この顔をあんな野暮ったい眼鏡で隠すなんざ美への冒涜だぞ。オレがお面をつけるのと同じくらいだ。」

くいっと沢田の顎を摘んだリボーンは、そのすべすべの頬に口を寄せた。
沸き起こる悲鳴と怒声、それから凍り付いたコロネロとスカルを前にリボーンはシレっとした顔で言った。

「イタリアの挨拶だぞ。親しい間柄のヤツにはするんだ。」

「そうなの?」

コロッと騙された沢田を見て、コロネロは逆の頬に、スカルは鼻の頭に口付けた。
2度目、3度目の嬌声に4人の回りに人垣が膨れていく。

「オレもツナのことは友だちだと思っているぜ、コラ!」

「パシリ仲間だからな。」

友だちもパシリ仲間もそんなことしないだろ!というみんなの心の声は沢田に届く筈もなく、甘い甘いミルクチョコレートみたいな色の大きな瞳はリボーン、コロネロ、スカルを見渡すと実に朗らかな笑顔を浮かべた。

「そっか、サンキューな!」

こうして3人以外にもファンを増やした沢田は、その日の内に男子生徒だけのファンクラブが出来て、そしてすぐに潰されたのだと知る由もなかった。

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