「ひひひひっひばっ雲雀さん?!」 綱吉は明らかに動揺し、声はすっかり裏返っていた。 それはそうだろう。並盛高校の風紀委員長、いや並盛町の裏の顔と悪名高い雲雀恭弥がうら寂れたゲーセンでたむろする群れを発見したのだから。 彼は小学生だろうと、女学生だろうと情けも容赦もない。群れ=噛み殺すの方程式が成り立っている。そして自分たちは小学生と群れる男子高生だ。死亡決定だった。 「あれが雲雀か?」 隣にいたリボーンが、綱吉にだけ聞こえる声で呟く。 「知ってんの?」 ヒソヒソとリボーンの顔に近付きつつ尋ねる。 「そこ、顔近過ぎるよ。群れてるなら…」 「群れてません!」 鈍く光るトンファーがちらりと懐から見えた。 情けないことこの上ないが、せめて小学生たちだけでも無事に返してあげたい。 見回すと、リボーンたち以外の小学生は居なくなっていた。それどころか店内には雲雀と綱吉、イタリアンな小学生5人しか居ない。 「貸しひとつ、だぞ。」 やっぱり綱吉にしか聞こえない声で、雲雀を見据えながら呟く。 「コイツはオレとデート中だぞ。他の奴らはデバガメだ。」 色んな意味であり得ないことをほざき出した。 「ふうん…綱吉がショタコンだったなんて初めて聞いたよ。」 「違います!」 慌てて否定すると、リボーンはちっと短く舌打ちし、他の4人は白い目でリボーンを見る。 雲雀のギラリと光る獰猛な瞳が、リボーンを捉える。 「随分とご執心みてぇだな、そんなにツナが気になんのか?」 「関係ないよ。」 そう言いながらも綱吉の周囲に詳しいような口ぶりの雲雀に、リボーンはからかうような笑みを向ける。 「そーかよ。」 そんな2人をハラハラして見詰める綱吉の手を引き、スカルとマーモンは店を飛び出す。 少し離れた道端の電柱の陰で掴まれた腕を払う。 「ちょっと!リボーンとコロネロとラルがまだ!」 「心配ない。奴らを甘く見るな。」 冷たく言い放ったスカルにしがみついて足を止める。 ちょうどスカルと見詰め合った瞬間に、出できた店からパパパパッて乾いた音がした。続いてバンッと低い音も。 振り返るとリボーン、コロネロ、ラル・ミルチの3人が煙の出る店内から飛び出てきた。そのままリボーンに腕を取られて訳も分からず逃げ出す。 6人は3つに別れて逃げたので、綱吉の腕を引いて逃げたリボーン以外とははぐれてしまった。 ****** 「ここまで逃げりゃあ追ってこねぇだろ。…ツナ?どーした?」 綱吉にしてみれば全力疾走でここまで駆けて来たのだ。ヘロヘロと膝を着いて座り込む。間近の小学生は余裕だったようで、息ひとつ上がっていない。 ハーハーと肩で息する綱吉の隣にしゃがんで覗き込む。 「つか…れ…た」 「情けねぇな、オレがねっちょり鍛えてやるぞ。雲雀に目ぇ付けられてるなら、やべぇだろ?」 「遠慮します。って言うか雲雀さん相手によく渡り合えるね…それにあの煙と音、何?」 「知らねぇ方がいいこともあるぞ。」 見ると懐から黒くて硬い何かが見えた。 普通の生活では見ることも触ることもない代物だ。外国なんかでは撃たせてくれるところもあるが、ここは銃刀法違反という立派な法律がある国だ。国の管理の下で扱われるべき類のアレだ。 「おまっ…!!!!」 「オレやマーモンが普通の小学生に見えるかよ?」 「見えてたんだよ!っつかそんなもん振り回す小学生なんざ見たことも聞いたこともねぇよ!」 「よかったな、見識が増えて。」 「よくねぇよ!いらねぇよ、そんなムダ知識。」 何故だろう…自分の周りはいつもデンジャラスだ。本人は至って普通の男子高校生だというのに。 そこへ綱吉のケータイに電話が入る。見ればマーモンと表示されていた。ナンバーを入れた覚えはないのだが。 「…もしもし?」 『ツナヨシ。君、無事かい?』 「マーモン?…あれ可笑しいな、オレマーモンとケー番交換してたっけ?」 『そんなことどうでもいいじゃない。そこにいるのは変態ぐるモミ野郎だけ?外にいるんだろうね?屋内には入っちゃだめだよ、押し倒されるからね。』 「ハッ!馬鹿言ってんなよ。オレはどこででもヤルときゃヤルぜ。」 「助けて〜!命の灯が消える前に!」 『命じゃなくて貞操だと思うけど…場所は念写したからすぐに行くよ。コロネロとラル・ミルチはすでに向かってるからその内着くんじゃない。』 遠くから綱吉を呼ぶ声が聞こえてきた。遠くからでも目立つ金髪と黒髪のコンビが尋常ならざる勢いで駆けてくる。 「何にもされてねぇか、コラ!」 「何かあったなら言え、こいつを始末してやる。」 「てめぇにオレが始末できるかよ。寝言は寝て言え。」 言いながら、コアラのように綱吉に抱きつくリボーンを無碍に出来ない。だって可愛いのだ、見た目は。 「…ねぇ、コロネロとラルの持ってるのは勿論サバゲー用のエアガンだよね?」 「「本物だ。」」 「…」 もう嫌っ!見た目がいいと中身が物騒になるのはデフォルトなのか?!黄昏る綱吉はすぐに知ることはなかったのだが、まともそうに見えたスカルは作戦参謀で、可愛いと思っていたマーモンは術士だったのでそれはそれで性質が悪いということを。 . |