虹っ子幼稚園も明日から夏休みです。 長期休暇という訳でもない先生たちは、ただツナとの逢瀬が遠退くだけの辛い日々です。 さて、夏休みにはどうやってツナとお約束を取り付けるのでしょうね? 今日も元気に登園してきたツナにいち早く声を掛けるのはスカル先生です。 年少さんクラスは登園にやっと慣れてきてはいるものの、門の前で少しぐずる子がいるのでそこで声を掛けるためです。 「おはよう、ツナ。」 「おはよーございます!」 いいお返事にデレっとしていると、後ろからユニ先生がポンとスカル先生の肩を叩きました。 先生の中でも一番小さいのユニ先生なのに、迫力は園長先生並。 無言の圧力に負けて、しぶしぶ横によけると先ほどまでの威圧感が嘘のようにほんわりと笑い掛けます。 「おはよう、綱吉くん。」 「あ、ユニ先生もおはよーございます!」 「いいお返事ができるわね。明日からの夏休みも元気にお返事してね。」 となにやら意味深な言葉を掛けているユニ先生。 一体なにがあるのでしょう? ツナの後ろに護衛のごとくつき従うのはザンザスです。 ザンザスお兄ちゃんはどうやら知っているみたい。ただでさえ面相のよろしくない顔がユニ先生を見た途端、般若のようになったのです。 「あら、ザンザス君もおはよう。明日からよろしくね。」 「…イタリアに帰れ。」 言葉のニュアンスのおかしさに気付いたスカル先生がユニ先生に恐る恐る尋ねます。 「あの、それはどういった意味ですか?」 「まあ、分からないの?ザンザス君がお世話になっているお家にしばらくの間お世話になるっていうことよ。」 ザンザスが居候しているのは、ツナのお家です。ツナのお家には他にもリボーン先生も居候しています。なのに何故まかりなりにも妙齢の女性(とても失礼)であるユニ先生が一つ屋根の下にお邪魔することになったのか。 眉間に皺を寄せて考えていると、後ろから声が掛かりました。 「おはよう、ツナ!明日から世話になる。」 「って、あんたもですか?!」 現れたのはラル先生です。いつもより5割り増し爽やかな笑顔が目に眩しいほどです。 「オレとユニが世話になっている下宿が明日から改装工事でな。どうするかと困っていたところを、奈々に来るよう声を掛けられたんだ。」 「そんな、あんたらだけズルイですよ!」 そう怒鳴るスカルにニヤリと笑うと、ザンザスの横のツナを抱え上げて教室に向かっていきます。 ラル先生は女性ですが、コロネロ先生とタメを張るほどの体力があります。 スカル先生より少し小さいながらも女性としては長身な彼女はツナを抱え上げることなど雑作もありません。 その背中に声を掛けるもあっさり無視されて歯噛みするスカル先生。 それを見てザンザスは抹殺者リストにスカル先生とラル先生の名前を書き込んだのでした。 名残惜しげに年長さんのクラスの前で別れると、すぐにコロネロ先生が飛んできました。 ツナはご機嫌です。どうやらラル先生とユニ先生に遊んでもらうお約束をしたみたい。 優しいユニ先生と、かっこいいラル先生が大好きなツナは零れんばかりの笑顔で教室の扉を開けます。 「おはよーございます!」 「おはよう、ツナ!来週の支度はしているか?」 おや、コロネロ先生と何かお約束している様子ですね。 コロネロ先生の言葉にうん!とイイ子のお返事を返します。 それを聞いたはやと君とたけし君がツナの園服の裾をちょいちょいと摘んで耳打ちしてきましたよ。 「さわださん、あのヤロー…じゃない、コロネロとなにか約束でも?」 「あ、おはよう。うん、来週ね、キャンプにつれて行ってもらうの!」 「なっ…」 「園長先生は知ってんのか?」 互いにツナを巡るライバルでも、園長先生というカードは最強なのです。たけし君がそう訊ねるとうーんと、と悩んでいます。 「抜け駆けはよくねーのな。つー訳で、先生おれらも参加させてくれよ。」 「バカ言うな、コラ!誰がてめーらなんか…」 思った通り難色を示すコロネロ先生にたけし君はニッと笑って言葉を重ねます。 「園長先生にチクってもいいんすか?」 「てめ、いい度胸してんじゃねーか!」 受け持ちの園児相手に凄んでみせても、焦った表情で負けが知れます。 せっかく奈々にお願いしてリボーン先生に内緒にしていたというのにこれでは台無しです。 肩を落としたコロネロ先生とは逆に、ツナは大好きなお友達のはやと君とたけし君も一緒に行けるのだと聞いてはしゃいでいます。 その笑顔の可愛さに負けを認めたコロネロ先生は、それでも園長先生や他の先生方には内緒になと緘口令を敷くとしぶしぶ連れて行ってくれることになりました。 さあ、明日から楽しい夏休み。 スカル先生と事情を知らないリボーン先生はどう動くのでしょうか。 一旦、終わり。 |