面白い2人組との遭遇で、少しお家に着くのが遅くなったツナとザンザスは仲良く手を繋いで帰ってきました。 お家の前では見たことのないおじいさんが冬眠前のクマのようにウロウロしていて、それをお母さんがいつもの笑顔で宥めているところでした。 「ああ!ザンザスがもし綱吉くんを置いてきてしまったら!」 「そんなことないですよ。とってもいい子じゃないですか、ザン君!ほら、2人で仲良く帰ってきましたよ。」 手を振るお母さんににっこりと笑顔で帰ってきたことをアピールすると、横にいたおじいさんが老人とは思えない勢いで飛んできました。 「お帰り!綱吉くん!ザンザス!!」 「フン…」 両手をいっぱい広げてザンザスとツナを抱きかかえようとしたおじいさんの腕をすり抜けると、ツナの手を引いてさっさとお母さんの方へと向かっていきます。 可哀想におじいさんはへこたれて…いませんが、恨めしげにザンザスの後姿を見ています。 「帰った。」 「ありがとう、ザン君。ツッ君も楽しかったかしら?」 「うん!」 ぶっきらぼうな言い方でも、奈々にはきちんと挨拶をするザンザス。 どうやらツナが気に入って、そのツナのママンには逆らわないでいようという打算が働いたのかな? 握り絞めたままの手で2人仲良くお家に入ると、洗面所で手洗いうがいをしっかりします。 居間でザンザスの隣に座っていると、先ほどのおじいさんが声を掛けてきました。 「初めまして、綱吉くん。お父さんのお父さん、お祖父ちゃんだよ。」 「あ、あの…はじめまして、つなよしです。」 モジモジとザンザスの後ろに隠れながらのご挨拶にお祖父さんであるティモッティオはがっくりと肩を落としました。 ツナにとっては初めて会うお祖父さんなので、照れがあるのでしょう。 それに気付いたザンザスはツナの手を引く横に座らせてやります。 「よーく顔を見せておくれ。ああ、奈々さんによく似て可愛いな。」 脂下がった祖父の顔を白けた表情で見詰めるザンザスを余所に、お祖父さんはツナの手を取ると抱き締めてくれました。 お日さまの匂いのするツナを堪能していると、目の前のザンザスがすごい顔で睨みつけてきます。 「いいじゃないか。わしはすぐに帰らなきゃならないいだから。」 「いいわけねーだろ。とっとと離せ、クソジジイ。」 「ザンザス、その口の悪さを直しなさい。ツナ君に移ったら大変だろう?」 「うるせえ!」 頭の上をぽんぽんと行き交う言葉に、ツナは誰かと誰かを被らせたみたいですよ。 じっと見詰めていたツナは、お祖父さんの腕から抜けるとザンザスお兄ちゃんの前にいってぎゅうう!と首に抱きつきました。 驚いたザンザスが言葉を失っていると、ツナはに意外にも真剣な顔で言います。 「けんかはダメ!」 「…分かった。」 しぶしぶながらも言うことをきくザンザスにお祖父さんは目を見張りました。 これがツナたん効果と言うヤツかと納得したのは内緒です。 「さあさあ、おやつにしましょうね!」 ツナそっくりのお母さんの手作りクッキーと麦茶が置かれ、和やかな雰囲気になったのでした。 午後6時。まだまだ夕日が顔を覗かせている時間です。 幼稚園の園長先生を勤めるリボーン先生は、スカル先生に雑務を押し付けると居候先の沢田家に急いで帰ってきました。 玄関扉を開けるといつもならツナがお出迎えに来てくれるというのに、今日は居間で笑い声が聞こえるだけです。 かなりがっかりしながら居間に顔を出すと、ツナを膝に抱えたザンザスがぬりえで遊んでいるところでした。 ありえない光景に我が目を疑ったリボーン先生は、夕方でも白昼夢と言うのだろうかと意識を飛ばしていました。 「あ、リボーン先生おかえりなさい!」 零れんばかりの笑顔で駆け寄るツナを腕に抱きかかえると、いつものようにツナのほっぺにお帰りの挨拶をします。 チュっと音を立てて頬にキスを贈れば、くすぐったそうに笑い出すツナにリボーン先生は内心悶えます。いえ、内心どころか表情に溢れているのです。 「おい、なに人の従弟に盛ってやがる。」 「…ああ?ガキが一丁前な口利いてんじゃねぇ。」 お帰りの時にツナから引き離されたことを思い出したリボーン先生の眼光はとても元教え子を見る目ではありません。 それに臆することなく睨み返すザンザスもさすがは悪たれといったところでしょうか。 バチバチとツナを巡って火花を散らせている大人と子供を前に、お母さんはあらあらと笑って一言。 「そんなに仲が悪いなら、出ていってもらわなくっちゃ。」 言われてピタリと凍った2人は無理矢理笑顔を作ると、お母さんにいい訳しています。 「全然そんなことないぞ!久しぶりだからジャレてただけだ。」 「そうだ。気にしないでくれ!」 必死に言い募るリボーン先生とザンザスにトドメの一言が。 「喧嘩したら即刻出て行ってもらうわね?」 どうやら最強キャラはお母さんだったようです。 . |