初めてあった従兄のお兄ちゃんに手を引かれ、ツナは見慣れた道を帰っていきます。 けれど、隣のお兄ちゃんは用心深く辺りを見回していました。 「どうかしたの?」 「…いいや。」 そう言うとやっといからせていた肩を降ろしてツナを振り返りました。 「ざんざすお兄ちゃんはこれからここに住むの?」 「ああ、ジジイ…じゃねえ、じいさんに言われて嫌々来たが……」 それきり黙り込んだザンザスがツナの顔をじぃ…と眺めます。 ツナもざんざすお兄ちゃんを見詰め返し、少しだけ沈黙が降りました。 すると、 「ん、まぁ…!ボスったらジャッポーネに着いた早々ナンパしてるわ!」 「嘘を吐くな!ボスが、ボスがそんなことする訳がない!そうですよね、ボス!!」 後ろから騒々しい声が掛かります。 びっくりしたツナが後ろを振り返ると、サングラスをかけた面白い髪の毛をしている小学生くらいの子供と大人のように大きな身体の少年が現れたのです。 見たこともない面白い格好をしたお兄ちゃん(?)たちに言葉もなく大きな瞳をパチパチさせていると、隣のざんざすお兄ちゃんの表情がガラリと変わりました。 「うるせえ!なんでてめえらここに居やがる!」 小学生とも思えないドスの利いた声にツナは怖くなってきました。 「あらあら、ボスったら隣の子が泣きそうよ?」 「なっ…悪い、怖かったのか?」 ざんざすお兄ちゃんの焦った表情に、やっとほっとしたツナは精一杯首を横に振ると硬い表情ながらも笑い掛けました。 「だいじょうぶ、僕男の子だもん!」 「「「男だあ?!!」」」 人通りのある往来で3人が声を揃えて絶叫したのでした。 ザンザスはイタリアから日本に来た留学生です。 ツナの父方のお祖父さんの養子として入った父親はツナの父親である家光の遠縁に当たります。そんな父親を持つザンザスは、頭脳明晰で人の上に立つ雰囲気を小学生ながらも備えたお子様でした。 けれどとても困ったことがひとつありました。 それは上に立つ者独特の威圧感のためにお友達が少なかったのです。 ただでさえ厳つい顔と、すぐに手が出る性格のために周囲に集まるのは同じようにガラの悪い友達ばかり。 それに困った祖父がリボーンたち教育のエキスパートにザンザスの養育を頼んでいたのです。 しかし、リボーンを通じて家光と祖父が和解するとリボーンはそそくさと日本に渡ってしまい、次いで他のアルコバレーノたちもリボーンと同じくこちらで職についてしまったのです。 リボーンはユニにザンザスの教育を押し付けて日本に渡ったのですが、幼稚園の先生が足りなくなり、家光に呼ばれたユニはこれ幸いにとこちらに来てしまったという事情がありました。 そんなザンザスをそれなら家で預かりますとツナのお母さんが言い出すことは分かりきったことでした。 「それじゃあ、ざんざすお兄ちゃんはおうちにいそーろーするの?」 「…ああ。」 ツナが男の子だと知ったザンザスがもの凄く複雑そうな顔でそう頷きます。 ジャッポーネは紛らわしいと心の中でぶつくさ言っているのは秘密です。 それでも大きな瞳とふっくらした頬に愛らしいお口がふにゃんを笑み崩れると、なんだか胸の奥がむずむずして困りました。 「私達を置いていくなんて酷いわあ…!すぐに留学手続きしなきゃ!レビィ、行くわよ!!」 「ううう…!ボス、すぐに手続きを済ませて戻ります!」 「うるせえ、カッ消されてえのか。」 筋肉隆々なのに女の子みたいな仕草と口調の派手なお兄ちゃんにツナの視線は釘付けです。 どういう人なんだろうとじーっと見詰めていると、くるりとそのお兄ちゃんが振り返りました。 「えーと、ツナヨシ君だったかしら。うちのボスをよろしくね!私達がいなくても寂しくならないように相手をしてあげてね。」 「オオオオ、オレは認めん!ボスの後ろに控えるのはオレ一人でいい筈だ!」 「?ボク、ザンザスお兄ちゃんと仲良くするよ!」 「いや〜ん!可愛いぃ!ボス、この子欲しいわあ!」 「…とっとと消えねえと、」 はい!と手を上げていい子のお返事をしたツナを見て、お姉ちゃんみたいなお兄ちゃんがクネクネしています。可愛いものが大好きなルッスーリアはどうやらツナを気に入ったようです。 それを感じたザンザスは額に青筋を立てると本気で怒りはじめました。 「きゃー!ボスったら本気ね?!ツナちゃんに本気なのね!」 「ボス!そんなガキよりオレの方が…!」 煩いルッスーリアにとうとう本気で怒り始めたザンザスが懐からなにかを取り出そうとしています。 それに気付いたルッスーリアとレヴィは慌てて後ずさりをして逃げ出しました。 「ごめんあそばせ!」 「ボスゥー!」 最後まで煩い2人組に圧倒されたツナでした。 . |