虹ツナ | ナノ

僕がサンタになった夜



保育園と違って、幼稚園は冬休みがあります。
冬休みの間はみんなに会えないので寂しいけれど、お母さんといっぱい遊んだり、仲のいいお友達と遊ぶ約束をしたりして、それぞれ楽しく過ごすのです。

ここ虹っ子幼稚園もやはり冬休みはあります。
園長先生だけが嬉しそうにしていますが、他の先生がたもツナを約束を取りつけられたようですよ。
みんなが浮き足立っている中で、一人年中さんの人気者であるはやと君はつまらなそうにしています。
冬休みは毎日ツナに会えないというのも寂しいのでしょうが、どうやらそれだけではないようです。

「どうしたの?はやと君。」

「いえ、なんでもないっす。」

「何でもないかおじゃないのな。」

「うっせー!」

またもはやと君とたけし君が喧嘩を始めそうになりました。困ったお友達に、ツナはいつもの魔法の言葉を使います。お母さんに教えて貰ったみんなが仲良くなる言葉です。
ぎゅっ、と2人の手を握ると一人ひとりの顔を見て言います。

「ぼくははやと君がだいすきだよ!たけし君も大好き!」

言葉の効果は絶大です。
真っ赤になった2人は喧嘩どころではなくなっています。
握っていた筈の手はいつの間にか握り返されて痛いほど。それでも笑顔で2人を見ていると、真っ赤になったままのはやと君がぽつりと呟きました。

「…きょねんはうちにサンタがこなかったんす。だから、今年もこねーんじゃないかと思って。」

苛々していた原因を教えて貰ってツナはほっとしました。

「サンタさん、おうちが分からなかったのかな?」

「う〜ん、そうかもな。」

たけし君はサンタさんはお父さんだと知っています。けれど、ツナは信じているようなので言えません。そして頭のいい筈のはやと君まで信じているようなので、益々言えなくなってしまいました。

3人で仲良く手を握り合っていると、後ろからコロネロ先生がやってきてツナを抱き上げてしまいました。
くやしいはやと君とたけし君は、コロネロ先生のエプロンを引っ張りますがびくともしません。
そこへやってきた園長先生が、慌ててツナをコロネロ先生から引き剥がしました。

「何もされてねぇか?ツナ。」

「何かって何だコラ!」

「ツナに触るんじゃねぇぞ、筋肉バカが移るだろ。」

「移るか!!」

またも園長先生とコロネロ先生の戦いが勃発、するかと思いきや。
今日はツナが2人の間に入って止めます。
はやと君とたけし君に使った魔法の言葉は、この2人にも有効だったようですね。
メロメロになった2人に、ツナはこっそり耳打ちしていますよ。
さて、いったいどんな話なのでしょう。









24日のクリスマスイブの夕方。
何だか朝から空はどんよりと厚い雲に覆われています。
お日さまが当たらないと寒さは余計に厳しくて、ツナは大丈夫かなぁと少し心配になりました。

今日は幼稚園のお友達とみんなでクリスマスパーティをしました。
はやと君やたけし君、ひばりさんにむくろさんと幼稚園の先生方が集まっての楽しい一日でした。
途中、やっぱりいつのもように園長先生とコロネロ先生が喧嘩をはじめそうになったりしてツナを困らせましたが、お母さんの笑顔付きの一言が効いたようですぐに収まりました。
ツナは「そんなに騒がしい人にはうちの可愛い息子はあげられません。」ってどう言う意味だろうと思いましたが、その後ラル先生やスカル先生、マーモン先生がこぞって「オレは大丈夫だ!」「穏やかな家庭を築きましょうね。」「むっ、何言ってるんだい。僕が一番物静かだよ。」の声を聞きつけた2人がすぐに大人しくなったのできっと魔法の言葉なんだと納得しました。
ちょっと違うんだけどね。

さて、しんしんと冷える外の気配を心配そうに眺めるツナには今夜どうしてもしたいことがありした。
はやと君のお家にクリスマスプレゼントを届けに行くことです。

今年の春に日本に引っ越してきたばかりのはやと君は、去年もイタリアのサンタさんが来なかったと聞いています。去年は日本に来日する準備のため、お父さんの仕事であちらこちらに預けられていたとのことでした。
ツナは思いました。きっとサンタさんははやと君の居場所がわからなかっただけだと。
きっと今年も分からないだろうと、ツナは今年だけはサンタさんの代わりになろうと決めたのです。

後ろを振り返ると園長先生ことリボーン先生とコロネロ先生がツナに向かって親指を立てています。
大丈夫、2人は雪が降ろうが槍が降ろうがツナの協力者ですよ。
実際はツナのために用意したサンタスーツを着たところを写真に納めたいだけだとしても。

そわそわと夕食を食べ、コロネロ先生やリボーン先生と遊んでいると夜の9時になりました。
いつものおねむの時間ですが、今日は頑張って起きています。

「ツナ、そろそろ着替えるぞ。」

「うー?うん!」

あらあら、ちょっと寝ていたみたい。大丈夫でしょうか?







リボーン先生が大好きなビアンキちゃんに協力して貰い、はやと君が寝たことを確認してこっそり枕元に立つツナと先生2人。
ツナは奈々お手製のサンタスーツで、2人はトナカイ風に赤鼻を付けさせられています。
今日もイブだというのにはやと君のお父さんはお仕事が忙しくて帰って来れないようで先生たちにくれぐれもよろしくお願いしますと挨拶に来ていました。
世の中には忙しいお父さんもいっぱいいます。
すやすやと眠るはやと君は普段の小難しい顔が嘘のように年相応の可愛い寝顔をしています。
ニコニコと嬉しそうに眺めるツナを見て、何だかもやもやする先生2人に気付かないツナはそっとはやと君の枕元にある靴下にプレゼントを入れて部屋を後にしました。

「メリークリスマス…!」

みんなに素敵なクリスマスが訪れますように。

きっといい子のツナの元にも、サンタさんはやって来ることでしょう。
はやと君にも、たけし君にも。勿論、ひばりさんやむくろさんにも、ね。

ゆっくりと降り出した雪は、ふわふわと街を家を、そして人たちも柔らかい白に染め上げてみんなの心に溶けてゆくでしょう。
そうしてクリスマスの夜は優しく過ぎてゆくのです。




タイトルは(C)ひよこ屋さまより拝借しました。ありがとうございました!

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