今日も今日とてスカル先生がパシ…いえ、貧乏くじを引いたようです。 昨日収穫したサツマイモを焼くために、枯れ葉や木屑で焚き火の準備をさせられています。 文句を言いたくても傍にいる園長先生が怖くて言えないのです。 その園長先生はと言えば、ランチアさんとコロネロ先生と一緒にたくさんのお芋をアルミホイルで包んでいるツナをじっと遠くから眺めてます。 普段ならすぐに近寄って行くのに、どうしたのでしょう? 病気だろうかとスカル先生が訝しんでいると、冬眠前の熊のようにウロウロする園長先生。 あまりの気持ちの悪さにスカル先生は思わず訊ねてしまいました。 「どうかしたんですか?」 「……昨日、ランチアがツナに抱きついたんで恭弥と2人で脅していたところをツナに見られて………今日は一日話し掛けるなって、酷いぞ…ツナっ!」 ランチアさんは園長先生と違って抱き付いてなんかいませんでしたよ?逆に抱きつかれていたことに腹が立った2人がいちゃもんをつけていたのでしょうね。 聞いたスカルは同情できないと思いながらも、こんな目に合わないように気を付けようと思いました。 それでも気になる園長先生は、遠くからハラハラしているのです。 だってコロネロ先生がツナにデレデレしていますからね。 そこにラル先生が現れ、コロネロ先生と後ろからド突くとツナの横に座るのが見えました。 「ツナ、たくさん芋を包んでくれてありがとう。」 「ううん。ボクおにいさんだからお手伝いできるよ。」 ニコッと笑い掛けられてちょっと頬を染めるラル先生。 それを見ていた園長先生とスカル先生は面白くありません。勿論、ド突かれたコロネロ先生も。 横で見ていたランチアさんは、ラル先生の気迫にちょっと背筋が寒くなりました。 でも今日は園長先生もきょうや君も傍にいないのでほっと一安心です。 そう言えばマーモン先生の姿が見えません。どうしたのでしょう。 「せんせい、たくさん出来たぜ!」 「こっちも終わったんで、てつだいます。」 ちょっと離れたところにいた年中さんの人気者2人が、ラル先生とツナの間に入ってきました。 見れば年中さんしかいないみたい。 年少さんは年長さんとマーモン先生とでお芋が焼けるまで幼稚園で遊んで待っているようです。 ぶきっちょなツナはランチアさんとコロネロ先生と一緒の班でたくさんのお芋を包んでいます。 そこへ、別の班だったたけし君とはやと君が早々に終わらせてやって来たました。 あらあら、ちゃっかりツナの横をキープしていたラル先生とはやと君は火花を散らせていますよ。 「もうおわったの?はやいね!」 「オレたちのところは少なかったからな。」 そんなことなどお構いなしに、たけし君はツナの前に座ります。 見ればやっぱり不器用なツナは、アルミホイルを上手に巻くことが難しいようです。 アルミホイルからお芋がはみ出していますよ。 たけし君はツナの手を取って教えてあげました。 「ほら…こうやると。」 「わぁ、まけた!ボクでもまけたよ、たけし君!」 ツナの手を取っていたので至近距離の笑顔に顔を赤くするたけし君。 それを見ていたコロネロ先生と園長先生は、声も出せずに怒りに震えています。 ラル先生ははやと君と睨み合っていたので見過ごし、スカル先生は火の番のため目が離せなかったようで何よりです。 運悪くコロネロ先生と園長先生の顔を見てしまったランチアさんは、こっそりその輪から外れていきました。 昨日の嫌な記憶が蘇ったからです。 「山本、ツナの手を離せコラ!」 「ツナ!すぐに離れるんだ!」 言われて気付いたツナは、何でコロネロ先生や園長先生が焦っているのか分かりません。 たけし君はしっかり分かっていますが、聞く気はないようですね。 怒っている2人を尻目にもう1本お芋を手に取ると、気にせずまきはじめました。 ツナも訳が分からないのでまぁいいや、と作業に熱中し始めたので2人の言うことは聞いていません。 「山本!」 「はははっ!友だちだからいいよな、ツナ。」 「うん!」 たけし君は大事な大事なお友達。何がいいのか悪いのか分かりませんが、いいお返事を返したツナにやっと気付いたはやと君とラル先生は互いから視線を外すとたけし君を睨みます。 さすがに4対1は分が悪いと焦っていれば、はやと君がラル先生とツナの間に割り込みました。 「さわださん、オレもまき方なら教えられますよ。」 ちゃっかり横に陣取り、手を添えて教えるはやと君。何だか邪な気配を感じます。 ラル先生はと言えば、無理矢理割り込まれた上にツナの手まで握っているはやと君に眉間の皺が深くなってきました。 それを近くで見ていたコロネロ先生は、ラル先生の段々険しくなる表情にちょっと引いています。 何かトラウマでもあるんでしょうか? 「気をつけ!」 突然のラル先生の号令に、その場に居たツナ、はやと君、たけし君、ついでにコロネロ先生までぴしりと立って横一列に整列しました。 運動会の練習の成果をこんなところで発揮しなくても、ねぇ? 「獄寺!たるんでるぞ、畑を2周して来い!」 「はいっ!」 「ついでに山本、お前もだ!」 「あ、みてたのな。」 「当たり前だ!行って来い!!」 腰に手を当てて2人を見送るラル先生。ツナはと言えば何でいきなりラル先生が怒り出したのか分かりません。 それにしてもすごい剣幕でしたね。ツナの横でコロネロ先生が従ってしまったことに羞恥を覚えているようですよ。 「くっ!昔の癖でつい。」 「むかしって何?」 呟きを聞いたツナがコロネロ先生に尋ねます。それに答えたくないコロネロ先生は口を真一文字につぐんで話してくれません。 するとコロネロ先生の代わりにラル先生が答えてくれました。 「オレはこいつの従姉だ。小さい頃はオレがこいつの面倒を見ていたんだ。」 「ラルせんせいとコロネロせんせいっていとこなの?ラルやさしいからいいな。」 その場に居たコロネロ先生も、遠くから聞こえてしまった園長先生とスカル先生もツナの『やさしい』発言だけは理解できないようです。 厳しいことで有名なラル先生が甘くなるのはツナにだけ。それを知らないのはツナだけです。 大体、優しいのなら怒号で言うことを聞く癖などつく筈もありません。 「ありがとう、ツナ。さあ、どんどん巻いて終わらせるぞ。」 「うん!」 傍に近寄れない園長先生と、近くに居るのに近付けないコロネロ先生。 ちょっと情けないですね。 その日、年中さんが一生懸命巻いたお芋はスカル先生とコロネロ先生によって上手に焼けたと言うことです。 「おいしいね、ラル先生!」 「そうだな、ツナ。」 にっこりとニヤの違いはあれど、いい笑顔には変わりありません。 珍しく邪魔されないなと思っていれば、マーモン先生はランボのお世話を、スカル先生はむくろ君とひばり君に八つ当たりされていました。 たまにはこんな日があってもいいですよね。 . |