虹ツナ | ナノ

4.



「ドングリいっぱいだぜ。こっちにこいよ。」

「えっ?!ほんとう?」

たけし君が両手いっぱいのドングリを見せ、ツナを呼びます。
それを見たツナははしゃいでたけし君のいるところへと掛けていきました。


残されたコロネロ先生の眉間には深い皺が刻まれています。
それを見ていた年中組さんの園児たちは、こっそり離れました。




さて、今日はどこにいるのかと言えば少し幼稚園から離れた公園です。
ブランコや滑り台といった遊具も勿論ありますが、今日の目的はみんなで秋を探しにきたのです。
ドングリやらいちょう、紅葉を拾う園児たち。みんな必死で探していますよ。
ほら。


「ツナ、こっちには綺麗ないちょうの葉っぱがあるぜ。」


コロネロ先生がツナを呼べば。


「ぼうしを被ったドングリがいっぱいだぞ。」


と園長先生も負けていません。
ぱっと園長先生に駆け寄るツナにくっ付いて、はやと君とたけし君も向かいます。
勿論、園長先生とツナを邪魔するためです。


「可愛いね!」


手渡されたドングリはまあるくて笠を被っています。
ニコニコと両手いっぱいにドングリを受け取るツナに周りはほっこり癒されます。
持ってきた袋に詰めると、ドングリやじゅず玉などの木の実がいっぱいです。
でもこんなにたくさんは使い切れませんね。


見付からなくて泣いている年少さんにちょっとずつ分けてあげようと思っていると、誰かがツナの目を後ろから覆い隠しました。


「クフフッ…だぁ〜れだ。」


「…む、むくろさん?」


「あたりです!さすがつなよし君。ボクへの愛があるからわかるんですね!」


「えー…と。」


後ろに居たのは年長さんのむくろ君です。
年長さんは松ぼっくりを拾いに来た筈なんですが…ここには松はありませんよ?
にっこり微笑むむくろ君に、意味の分からないツナはいつも困ってしまいます。
何てお返事すればいいのかな?


「むくろさんはわらいかたでわかるんです。」


「やっぱりボクへの愛が…!」


むくろ君はそれ以上続けられませんでした。
ちょっと独特な頭に鋭い閃光を浴び、横っ飛びに逃げたからです。
びゅん!と宙を切り裂く音とともに、きょうや君が現れましたよ。


「やあ、綱吉。へんたいパイナップルに何かされたかい?」


「へんたい?」


「ちょっと!ボクのどこがパイナップルなんですか!?」


「そこの子分が言ってたよ。…それより平気?」


「あ、はい!何にもないです。」


年長さんのきょうや君は、パイナップル狩り…じゃないむくろ君がツナの方に行くのを見かけて様子を見に来たようです。
ツナの両脇にいるたけし君とはやと君には目もくれず、ツナにだけ淡く笑いかけると懐から何かを取り出しました。
それは赤くて、ちょっとギザギザしている葉っぱです。


「これあげる。」


「わぁ!もみじだ!!」


手渡された紅葉にツナは大喜びです。
でもこの公園には紅葉はありませんよ。どこで拾ってきたのかな?


「ありがとうございます。」


「うん。うちの庭のもみじがこうようしていたから、綱吉がほしいかとおもって。」


満開の笑顔できょうや君を見詰めるツナに、満足気な顔のきょうや君。
面白くないのはツナの両脇の2人だけではありません。
近くにいた園長先生はかなりご機嫌斜めのようですね。
そこへ慌てて駆けてきたのは年長さんの担任のスカル先生です。


「骸!恭弥!お前ら2人でどこに行ったのかと思えば…げっ。」


やっぱりツナのところに居たとほっとして駆け寄れば、機嫌が悪いことが丸代わりの園長先生が。
それを見たスカル先生はここに来たことを後悔しましたが、時すでに遅し。


「パシリ、てめぇがしっかり見張っていねぇから迷惑してんだぞ。」


「すみません…。」


こうなってしまうと、何を言っても怒らせるだけなのですごく不本意ながら嵐が過ぎ去るのを待つスカル先生。
すると、それに気付いたツナが園長先生のスラックスの裾をちょいちょいと引っ張ります。


「ん?どうした、ツナ。」


「あのね、むくろさんときょうやさんがこっちにきちゃったのはボクのせいなの。だって、むくろさんは会いにきてくれたんでしょう?きょうやさんはもみじを持ってきてくれたし。だから、ごめんなさい。」


びっくりしたのは、園長先生だけではありません。
むくろ君もきょうや君も、ツナに会いたくて来たのにそのせいでツナが謝る姿を見るのは我慢できませんでした。


「あやまらないで下さい。ボクが悪かったようです。すぐに戻りましょう。」


「ふん、お前に言われるすじあいはないけど戻るとしよう。綱吉、またね。」


「あ、こら…!お前たち!!」


むくろ君が言えば、不承不承きょうや君も戻って行きました。
またも慌てたのはスカル先生です。
ツナにありがとうと一言いうと、2人の後を付いて駆けていってしまいました。


「ツナはともだち思いだな!」


「すばらしいです…!でもあんなヤツらのために頭を下げるなんて、しないてください!」


たけし君はニコニコと、はやと君は涙を流して悔しがっています。何だかいいところをきょうや君とむくろ君に持っていかれたのがくやしかったようです。
園長先生はといえば、よもやツナに詫びられるとは思ってもいなかったようで、ぼんやりとツナを見詰めています。


「えんちょうせんせい?」


大きな瞳が、園長先生を写しています。穢れない瞳に見詰められて、ちょっとは反省したかしら。
と、思っていれば園長先生はツナを抱きしめると頬摺りしています。
ちょっと力が強いせいでツナが大変なことになってますって、園長先生!


「早く離せ。」


見かねたコロネロ先生が、園長先生の頭をポカリと殴り付けました。
緩んだ腕からようよう抜け出すツナに、コロネロ先生が背中というか足元に庇ってあげます。


「てめーは懲りねーなコラ!」


またも、園長先生とコロネロ先生の喧嘩が始まってしまいました。
いつものことなので、虹っ子幼稚園の園児たちは気にしません。
遠くで終わるのを見守るだけです。


ツナとはやと君とたけし君は、そこから離れて3人で別の場所に移動してしまったんですがね。
そこには、ラル先生やマーモン先生がにっこにこの笑顔で待っていますよ。


さて、喧嘩ばかりの2人はいつ気付くのでしょう。

.




top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -