虹ツナ | ナノ

10.



最近は碌なことがない、とは思っていたけどここまでいくと誰か呪ってるんじゃないのか?!と思い始めた。


今日は休日。XANXUSさんは近くのホテルをとって滞在している。休みなので誰にも会わないぞ!とわざと誰とも約束をしないで…というか約束は拒否してのんびり朝寝を満喫後、読みかけのマンガの続きを買いに本屋へ向う途中だった。

いや〜な気配がして、周りを確認するといかにもな目つきの悪い連中が、そこかしこにゾロゾロと現れた。
頭とおぼしきメタボオヤジが何語だか分からない言葉でしゃべりかけてきて、気が付けば…ヤクザの組事務所なんじゃなかろうかと思う。たぶん。

最近、動じなくなってきたな…諦めたからかも。
大人しくしていれば、XAUNXUSさんか5人組か友達が助けてくれる筈。そしてこの町の支配者が黙ってオイシイ獲物を見ていられる訳がないと言うのも分かっているので。

メタボオヤジは訳分からん言葉で喋っているのだが、通じないので答えようもない。
しかも動けないように、肩から腕、足までロープで縛り上げている念の入れようにうんざりす。

っていうか、誰かオレの話を聞け!!

「オレはボンゴレなんて知らないって!」

日本語で言っても通じないなら、日本に来るな!このメタボオヤジ!!
怒鳴ったら意味は分からないまでも、何かは通じたらしい。縛られた縄をもっときつく締め上げられた。
うううっ…メタボオヤジの手下め、これ以上締められたら骨が折れる。っていうか今まさに軋んでるっ!

目から涙やら口から唾やらが出てみっともない顔してるんだろうな。100年の恋も醒めるほどだろう。これであのガキも愛してるだなんだと言わなくなること請け合いだ。

「ふん、馬鹿なこと言ってんじゃねぇぞ。そそる顔してオレを待ってたんだろ?」

音もなく現れたヒットマンにメタボオヤジと手下2人は声も出ない。
オレもどこから現れたのか分からなかった。

「っていうか、やっぱりお前サドだな?!サドだろ!」

「違うぞ、オマエの歪む顔が可愛過ぎるのがいけねーんだぞ。」

ばっちーん☆とウインクすんな!

漫才を繰り広げていると、ラル・ミルチが縄を解いてくれていた。
その間に周りのオヤジどもを綺麗に沈めたリボーンの早撃ちと正確さが恐ろしい。
色んな意味で悪魔のヒットマンだ。

「気にするな、お前の可愛さは微塵も損なわれていないぜ。」

「そこ慰める場所じゃないよ!」

ラルにまで可愛い扱いですか?オレって愛玩動物?!

「そうだぞ、絶滅危惧種だ。」

「そんな保護はいらねぇよ!」

結んであった紐が擦れて血が滲んでいる。擦っていると横から手が伸びて引っ張られた。
リボーンが血の滲んだ部分を舐め上げる。

どうにかして!このイタリアーノ!!



ど突き漫才をしていると、コロネロとマーモン、スカルが駆け込んできた。手には救急箱。

「なんともなかったかコラ!」

「あぁ…可哀想に。手首に縄の跡が付いているじゃない、僕が手当てしてあげるよ。」

「あんたにさせたらすごいことになるだろ!ツナ、オレが手当てしてやる。」

マーモンからスカルの手へ手首をひょいひょい取られた。見た目こんな小学生だけど、こいつら力が強い。
しかも、ここにいたマフィアはオレが確認できただけでも20〜30人は居た。それを連れ攫われて30分未満でオレまで辿りつくなんて…。

「って、お前ら外にいたヤツらはどうしたの?」

「片付けたぜコラ。」

どういう意味の片付けたんだろう、物理的に退却させたのか、亡き者にしたのか。十中八九、後者だと思うが。
ここから出るのすら怖い。見ちゃったらどうすんだ!

「雲雀に頼んであるぞ。もう少しすれば片付け終わる。」

スカルに手を取られ、消毒されているとリボーンが傍に近付いて顎を取る。そのまま軽く口付けられた。…口付け?ってぇええええええ!!?

「ナイスアシストだぞ、パシリ。」

「オレはパシリじゃない!じゃなくて、あんた今なにした!」

「てめぇ!!」

スカルは目の前でおきたことに呆然と、コロネロはすぐに掴みかかる。ラルはショットガンを構えているが、コロネロともつれているので撃てない。そこへマーモンが幻術を…

「待った!マーモン待って。これは助けてくれたお礼ってことで納得したから!それ以上でもそれ以下でもない。」

「ムッ、ツナヨシがそう言うならやめとくよ。ただのお礼だしね。」

お礼、に力を入れてリボーンに言うと、ぴくりと眉が上がる。

「2度目だけどな。」

「消毒しておけ。」

と言ってラルが差し出してきたのはオキシドールを含ませたコットンだった。





*********



そのまま帰してくれるとは思ってなかったけど、やっぱりアルコバレーノたちの屋敷に連れてこられた。
今日は獄寺くんは雲雀さんと一緒にマフィアの洗い出しをしているので、オレひとりきりだ。
ちなみに山本は野球の練習だったので、巻き込まずにすんでなによりだった。

「今日の誘拐犯はお前がボンゴレ10代目になることを知っていたぞ。」

「おかしいね、ボスからはツナヨシが10代目候補だということが漏れたなんて聞いてないよ。」

何故かオレがお茶の支度をしていたりする。
だってこいつらにやらせると破壊的なモノが出てくるのだ。懲りた。

リボーンはこだわりのエスプレッソを手に、渋い顔だ。マーモンとラル・ミルチ、スカルは日本茶がお気に召したようでなにより。オレとコロネロは炭酸ジュース。

炭酸を口に含むとしゅわっとはじける。爽やかな筈のそれが今日はやけに染みる。

「イタリアの方にも特に動きはないな。」

スカルがパソコンをいじって言う。

「家光からも特に指示はないぞ。」

「どういうことだコラ!」

でもあのメタボオヤジは外国人だった。英語じゃなかったから、やっぱりイタリアかと思うんだけど。
考え込む5人を前に不安が募る。
このままだとマジでイタリアに連れて行かれかねない。
連れていかれたら最後だと直感が告げている。だが、オレが居ることで母さんやみんなに迷惑が掛かるなら行くしかないのか?

手にある炭酸を飲まずに握りこんでいると、リボーンが頭をかき混ぜる。馬鹿力だから頭がぐらぐらした。

「てめーのせいじゃねぇ、気にするな。奈々は家光の部下が護衛している。XANXUSも手を廻したようだしな。オレたちは元々マフィアだ。守護者どもはお前が気にするほど落ちぶれちゃいねぇよ。」

存外優しい声で欲しかった言葉を貰った。びっくりだ。

「…お前のことだから、イタリアに来いって言うのかと思った。」

「言って聞くタマじゃねぇだろ。」

ニヤリと笑う。どこまで嫌味なイタリアンだ。男前過ぎる。

本当はイタリアへ渡るのも考えてはいる。こいつらアルコバレーノの秘密があるって勘が訴えかけているからだ。突然変異といったが、ソレは自然に変異したとするには5人いや4人となりそこない1人がいるということも不自然だ。…第一なりそこないって言う言葉もおかしい。
だけど、まだピースが足りない。
オレを警護する目的でその突然変異たちが集まってきたこと。
何故か異常に懐かれていること。
一人ひとりに役割がありそうなところ。
まだ何かある筈だ。

深く考えに沈んでいると、スカルが拾い上げた情報から気になるところを上げた。

「どうやらマフィア刑務所から日本に脱獄囚が逃げ込んできたようだな。」

「その情報なら門外顧問チームにも伝わっている。だが、潜伏先までは分かっていない。」

「ひょっとするとソレか、コラ!」

マーモンは念写をしていた。念写には地図らしきものが描かれていた。

「これだと隣町っぽいね。黒耀とかいうところじゃないかな。」

「まだそいつらがこちらに気付いたまたはこちらを攻撃してきたとは断定できないな。」

ラルが言うと、リボーンは首を振る。

「疑わしきは罰せよ、だ。この時期にここに来た訳はツナ以外ねぇだろ。目印も飛んできやがったしな。」

言外にXANXUSさんのことを言っているようだ。
マーモンが口をへの字にしている。意外と慕ってるみたい。

「そのXANXUSのことだが。」

スカルがケータイを手にパソコンから新たに何かを拾ったようだ。

「ボスがどうかしたのかい?」

「隣町へ向ったようだな。」

…あれ?今マーモンが念写したとこだよね?ヤクザの組事務所に現れないと思っていたら、そういうことか。
聞いていなかったらしいマーモンも驚いている。

「ヴァリアーは耳が早い。暗殺部隊だからな。」

ラルが言うが、オレは慌てて席を立つ。

「待て。」

リボーンはオレの手を掴んで離さない。
手を離せよ、XANXUSさんが危ないかもしれないんだ!

「XANXUSはてめーが心配するほどヤワじゃねぇ。」

「知ってるよ!でも、オレのために行ってくれてるならオレも行かなくちゃならないだろ!」

「マフィア同士だぞ。…見たくもねぇもん見ちまうぞ。それでもいいのか?」

「っ!?……それでもオレは逃げちゃいけないんだ。」

言い切ってリボーンの手を振り払うと、駆け出した。
すぐにコロネロが横に並んできた。

「ついて行くのは構わねーだろコラ!」

また隣にラルが並ぶ。

「オレは見届ける義務がある。」

玄関を出ると車が横付けされていた。運転席には…父さん?!!

「何で父さんがここにいるの?」

「何でって…父さんのウチはお前と母さんのいるところだからだろ。」

「違うよ、今!ここにいる訳だよ!!」

「いいから早く乗れ、説明は後だ。」

後ろから声が掛かって、またも猫の子のようにひょいっと抱え上げられて車の中に押し込まれた。
中にはオレとオレを抱えたコロネロ以外の4人が乗り込んでいた。

リボーンの隣に下ろされると、恐々表情を覗き込む。
怒ってはいないようだ。不満ではあるようだが。

「てめーは、自分からはマフィアにならねぇっつった。」

「う、うん。」

「でも、懐に入れたヤツを放っておけねぇ…馬鹿だ。」

うううっ。呆れた口調ではっきり言われた。でも、仕方ないじゃないか。マフィアだろうが、暗殺部隊の隊長だろうが、オレにとっては大事な従兄弟だ。

その大事な人たちの中に、お前たち5人もすでに入っちゃってるって知ったら怒るんだろうなぁ。

「当たり前だ。オレたちが守る側だ。守られてどうする。」

また読まれた。いい加減にプライバシーは守って頂きたいものだ。

父さんの走らせる車は法廷速度を軽く50キロくらいオーバーしながら隣町へと駆けていった。


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