朝だ。いつもの朝だ。 だと言うのに、何で隣から人肌を感じるの?いつもの朝なら一人で寝てる筈なんだけど…。 「おはようだぞ、ツナ。心置きなく朝の挨拶をしよう!」 「ぎゃーーー!」 いーやー!何でお前が同じベッドの中にいんの?!唇を寄せるんじゃねぇ!朝の挨拶は日本じゃ「おはようございます」だけだぁ! 「ママンの出したワインで酔ったかもしれないから泊まっていったんだぞ。未成年に飲ませたって知れたらいけないからな。」 「酔うわけないだろ!お前もマーモンもXANXUSさんもザルだったじゃん。顔色一つ変えてなかっただろ!?つーかオレが酔っぱらって…どうしたんだっけ?」 くくくくっと低く笑うリボーンの顔が怖い。 記憶のない時になんかあったのか?!されちゃったのか? 「意外な酔い方だったな。可愛いかったぞ。だが、今度からはオレといる時だけにしろよ?襲われるぞ。」 「お前が一番危険なんだよ!…で、何しちゃったのオレ。」 半身だけ起き上がっていたオレの腕を取り、引き寄せると覆い被さる。 オレより一回り小さい筈の身体に押し付けられて動けない。…やばい。 「XANXUSさーん!マーモン!助けて!」 呼べばすぐに駆け付けてくれたXANXUSさんとマーモンにどうにか助け出された。 それでもニヤ付くリボーンが不思議だ。 間一髪で助けだしてくれた筈なのに終わったような目をしたXANXUSさんとマーモンもおかしい。 「ツッ君、マー君、リボーン君も学校があるでしょう?早く降りてらっしゃい。」 「「「はーい!」」」 4人でキッチンに入ると和食の朝ごはんだった。昨晩無理やりワインを飲まされたせいか食欲がないので、鮭をほぐしてお茶漬けにして食べる。母さんの漬ける浅漬けはいつもおいしい。ボリボリ食べていると他の3人が人の口許をじーと見ていることに気が付いた。 「何だよ?早く食べちゃえよ。」 居心地悪くて睨み付けると、リボーンはニヤリと。XANXUSさんは不貞腐れて視線を外し、マーモンは睨み返してきた。 「マーモン、どうしたんだよ?」 「うふふっ、ツッ君たら忘れちゃったの?リボーン君にキスしちゃってたじゃない。」 台所に立ったままの母さんから爆弾が投下された。 「ぶぶぶっ!(ごほごほ)っ!してねぇよ!してないよね?!」 ぐるりと見回すと返事をしたくないXANXUSは視線もくれず、マーモンはいつも以上に口をへの字にしていて否定してくれず、唯一返してくれたのがリボーンの肯定だった。 「ホントだぞ。お前、オレの顔が一番好きだって言ってキスしたじゃねーか。」 「ゲホゲホ…そんなこと言ったっけ?」 どうやら真相はこうだったらしい。 昨日会ったディーノさんや構い倒してきたコロネロに妬いたらしいリボーンが、コップ2杯でベロベロになったツナにどいつが好みだ!と詰め寄ったとか。呆れる。アホか。すると何故かXANXUSさんとマーモンも誰だと問い詰めて…どうやらリボーンと答えたようだ。 記憶にはない。まっったくねぇ!! …こいつが変な言動しなきゃ、確かに一番好みの顔だ。瞳がいいんだ。吸い込まれそうな黒、日本人とは違ってちょっと緑っぽい。まだ男らしさはないけど、それは色気でカバーしてるのが恐ろしい。ない物ねだりってヤツだ。きっと、絶対! 「もうちっと待ってろよ。すぐ育ってやるぞ。」 「読むなぁ!」 「趣味わりぃぞ綱吉。小さい頃はオレの嫁さんになるって言ってたじゃねぇか。」 「ええええっ!言ってないよ!」 「言ってたわよ〜ツッ君ザン君と離れたくなくて、お嫁さんになれば離れないんだって泣いてたじゃない。」 母さん〜この場を掻き回して楽しいの!見ろよ、底冷えのするキッチンテーブル。ドンパチ始めんな! 「ハン!昔は昔だろ。今はオレが好きなんだよな?」 「ちっが〜う!」 今日は朝からハイテンションだ。…学校行けるのかな?オレ。 ****** 命からがら逃げ出してきた。やっぱり思いっきり遅刻だ。どうしてくれる。 校舎に入ろうと見上げると雲雀さんとばっちり目が合った…うわっ嬉しそうな顔されちゃった。ああ、昼休みは応接室かぁ。 教室に着くと獄寺くんと山本が近寄ってきた。今、授業中だから静かにね。 「ツナ、どうしたんだよ?今日は坊主たちに送って貰うとか言ってただろ?」 「見たところお怪我は無さそうですが、どうかされましたか?」 うん、どうかされまくりだったけど絶対言えねぇ!つーか昨日したのはオレか?オレが悪いのか?! 無言で拳を握り絞めていたオレを、山本は何も言わずに頭を撫でた。 「坊主相手じゃ聞くのも可哀想だな。」 最近じゃ、襲撃にくる5人衆に何やら感じるところがあるらしい。ぬるく笑うとため息をつかれた。 オレもため息をつく。 「ああああ、あの!リボーンさんと何かあったんですか?っ!!すみませんでした!!!」 今その名は聞きたくなかったな、獄寺くん。ちょっと殺気が漏れちゃったみたいだけど、大きい声で叫ぶのやめようね。 自分の席に着き、教科書を開くが遅れてきたこともあり頭に入らなかった。また後で獄寺くんに教えて貰おう。 補習があると5人組と遊べないもんな。 ********* 雲雀さんからの呼び出しは昼休みではなく放課後だった。昼休みに今か今かとびくびくして過ごしたというのに呼び出されず、今日は見逃してくれたのかも、なんてほっとしていたらこれだよ。 分かっててやってるとしたら、リボーン並みにサドだ。…ありうるけど。 帰りのHR中に校内放送を使っての呼び出しだったので、獄寺くんと山本もついてきてしまった。 群れると噛み殺す!の群れとは何人からだろう。3人じゃ噛み殺されるかな。何だかこの2人のことよく思ってないみたいだし。 おそるおそる応接室のドアをノックする。中から雲雀さんの声がした。 「入んなよ。」 「…失礼します。」 死刑執行台に立ってる気分?うううっ…怖ぇ。 それでも足を踏み入れたが、すぐに山本と獄寺くんがオレを囲むように隣に立つ。 「お邪魔するな!」 「てめぇ、10代目に何のご用だ!」 入るとさっそく獄寺くんが雲雀さんに喧嘩を売り始める。ハウスだ獄寺くん。 「本当は噛み殺すところだけど、今日はいいや。座りなよ。」 珍しいことに喧嘩腰の獄寺くんを無視した。天変地異の前触れじゃないよね? オレは恐る恐る座り、その左右に山本と獄寺くんが座った。 「あの〜遅刻のことじゃないんですか?」 「それは後から。聞きたいことがあるから。」 言われてピン!ときた。とうとう辿り着いたか、みたいな。 昨日はXANXUSさんが家に来た。あの目立つ容貌じゃこの小さな町の支配者には筒抜けだったことだろう。 明らかに堅気じゃない彼を洗ったのだろうか。だからといってそう易々と埃は出ない筈だ。 彼の国はイタリア、職業はマフィア。しかもかなりでっかいマフィアらしい。そんなところが突けば出るような綻びを見せる訳がない。 頭を回転させて、何事もないようにぼーっとしてみる。 途端、雲雀さんに鋭く睨まれた。 「言わない気だね。」 「何のことですか?」 「昨日来た従兄弟のことだよ。」 「すごいですね。よく人ん家のこと知ってますね。」 「馬鹿にしてるの?並盛は僕の支配下にあるんだよ。…彼がイタリアで少々きな臭い職業に着いていることは分かったんだけど…君の表情から察するに、かなり大きいマフィアみたいだね。」 おおっすごい!ってバレたら困るよ。絶対XANXUSさんや5人組とドンパチだ。 さて、どうやって誤魔化そうかな。 . |