虹ツナ | ナノ

7.



「ただいま〜!」

懐かしの我が家へやっと戻ってこれたよ。今日一日が長い気がするのはなんでだろう。
靴を脱ぎ捨てようとして、いつもはないでっかい革靴を見つけた。

…父親ではない。
あの人は作業ブーツを履いてる。でも、サイズ的にあの人ぐらいだがとハテナを飛ばしていると母親が台所から嬉しそうに駆けてきた。

「あらぁ!おかえり、ツッ君。今日はね、従兄のザン君が来てるのよ〜会うの久しぶりじゃない!お母さん嬉しい!!」

きゃっきゃ!と女子高生のような見た目で女子高生のように興奮している母。

………って、XANXUSさん?!!!

「綱吉あがってるぞ。」

居間から現れたのはすごく大きくなってるけど、XANXUSさんだ。あの特徴のある顔の傷。その傷さえ男を上げる魅力だ。

「うわっ〜〜!本当にXANXUSさんだ!いらっしゃい!」

母と一緒に興奮するとXANXUSさんはふぃっと目を逸らす。
照れてるんだよね。オレ知ってるよ。変わってないな。

「今日は泊まっていくんでしょ?」

「いいのか?」

「もちろんよ〜!遠慮はしないのよ。広くはないけど、ゆっくりしてってね?」

似たもの親子に半ば強引に宿泊を強要され、しかし嬉しそうに(見えないけど)口を歪める。

「綱吉。」

「何?」

「マーモンには会ったか?」

言われてはじめて気付いた。そう言えばマーモンはXANXUSさんに言われて来日したんだって。
嘘の付けないオレは挙動不審だ。

「…会ったよ。」

「部屋に行くぞ。」

本当に今日はついていない。





「今日、ディーノさんにも会った。」

「来てたのか、へなちょこ。」

「どこがへなちょこなの?まぁいいや。それよりオレは継ぎません。」

「言ってどうなる訳じゃねぇぞ。」

痛いところを付いてくる。従兄弟だからか言われたくないところに切り込むのが上手かったと思い出す。口数少なそうなのに。

「オレは綱吉ほど超直感はねぇ。」

「憤怒の炎があるでしょ。オレにはないよ。」

「嘘付け。額から炎が出てやがったのを見たぜ。」

イタリアに遊びに行った時にあった誘拐事件の時のことか。

あの時、オレはまだ5歳だった。8つ離れたXANXUSとは、何故か相性がよかったのか訪れる度に後ろをついて歩いていた。
それがいけなかったのだろう。XANXUSの幼い婚約者と勘違いされ、誘拐されたのだ。
どうして男のオレが婚約者と勘違いされたのか、いまだに分からないがそんなところだったらしい。
怖くて、怖くて、オレは覚えてないんだけど助けに来たXANXUSさんが言うには炎が見えたと。死ぬ気の純粋な炎だったと。
それからはイタリアへ渡ることはなくなっていた。

「でもオレ普通の男子高校生だよ。裏事情なんて知らないし、切った張ったの世界は未知過ぎてどうにもならないよ。」

「…だから呼びに来た。」

「ムリです。」

「どの道こなけりゃ周りも巻き込む。」

「っ!」

「しばらく居てやる。よく考えろ。」

ツナの頭をくしゃりと掻き回し、片腕で抱き寄せられた。
広くて大きな胸に凭れかかった。
お国が違うからか、身体の作りが違うよね。胸板とか腕の長さとか、足の長さには触れたくないやい。

XANXUSさんは優しい。頼りがいのある男だ。

同じイタリア男でもえらい違いだ…って、えーとXANXUSさん?オレ高校生ですから、膝に抱き上げるのは勘弁して下さい。

「何嫌がってる。大人しくしろ。」

「いやいや、オレもう17なんでさすがに男の人の膝の上はないと思うんです!」

「気にするな。お前はいまだに中学生でも通る。」

「中学生でも男は膝抱っこなんかしねぇ…。」

腕力では適わない。もう今日は疲れているのでそのままにしておこう。

「ボス…」

暗闇から貞子が出てきたかと思うような声が掛かった。

「何だ、マーモン。」

「従兄弟同士のスキンシップにしては濃過ぎるよ。」

「…うちではこうだ。」

って、うわああああ!いつの間にマーモンがオレに部屋に?!

「ツナヨシ、嫌なら嫌と言わないと手篭めにされるよ。」

「されるかぁ!」

「そうだ。同意の上だ。」

「ちっが〜う!…って、あれ?何かどこぞのイタリア男とかぶってる?!」

「あんなカスと一緒にするな。オレはお前にしか言わん。」
 
そういえばXANXUSさんもイタリア男だった。

余計に腕の拘束が強まる。抜け出せない〜!

パス、パス、と抜けたような音が聞こえ、見ると壁に穴が…。このサイレンサーが付いた抜けた音、わざと狙ったに違いないオレの頭の上とXANXUSさんの鼻っ面を通り抜けた弾といい…

「リボーン!!」

後ろを向けばやっぱりいた。

「ちゃおっス。よくオレだと分かったな、愛だな。」

そんなモン微塵もねぇよ!勝手に窓から侵入するなっ!!

弾はXANXUSさんの近くを掠めたせいか、腕の力が緩んだ。その隙にリボーンの手が伸びてXANXUSさんの膝から転げ落ちた。

「嫌な予感がして、マーモンに念写させてみれば浮気か。」

「浮気も何も、おまえとオレは唯の…何だろう?」

「恋人だぞ。」

「ちげぇ!友達だ!!」

「ふふん、酷くふられたもんだね。リボーン。」

「こういうのをツンデレっていうんだ。それも可愛いぞ。」

「ポジテブ過ぎるだろ!」

ギャーギャーと騒ぐオレたちにXANXUSさんは呆れ顔だ。まったく、お前のせいだぞリボーン。
お前と居ると調子が狂うよ。
でも、それも実は悪くないと思ってきてるんだよなぁ。

リボーンはオレでからかうのが飽きたのか、XANXUSさんに視線をくれる。

「久しぶりだな、XANXUS。その調子だと勝手に抜け出してきたんじゃねぇか?」

あれ?この二人仲がよろしくないようだ。バチバチと火花が散っている。

リボーンとXANXUSの間に挟まれて、マーモンを背中に貼り付けた格好で二人の会話の行方を聞く。

「それがどうした。」

「てめぇ、親父の護衛ほっぽってきたな?」

「すぐにくたばるジジイじゃねぇ。」

旗色が悪いのか、XANXUSさんが視線を逸らす。珍しい、まともに会話してるよ!昔は誰にでもカスだクソだと言っていたのに。

「…ツナ、お前わざとか?」

「ん?聞いてないよ。安心して!」

「聞け、お前の親戚のマフィアのドンが代替わりしようとしていてな、それに気付いた敵対ファミリーと内部分裂した同盟ファミリーが襲撃してきてるんだぞ。それをこの従兄弟馬鹿が…。」

「ひぃぃぃぃ…何不穏な単語並べてんだ!オレは聞いてない!聞こえてないからな!?」

「綱吉を脅すな。…ヴァリアーとジジイの守護者で粗方は収束してきた。てめぇの仕事が遅いから迎えに来ただけだ。」

庇ってくれてるのか、巻き込もうとしているのか不明だ。っていうか、オレどの道イタリア行き決定?

「やっとそこに辿りついたの?遅すぎるよ、ツナヨシ。」

背中の子泣きジジイがいやな一言をくれたよ。お前もオレを呼びに来たんだもんな。
ぷうと頬を膨らませていると、後ろからマーモンが頬を寄せてきた。
あっちじゃ挨拶だし、子供だし、いいか…と好きにさせていると他二人の厳しい視線。

「てめー忘れたのか?オレたちはナリはガキだが中身はそうとも限らないんだぞ。」

…速やかにマーモンを剥がした。あぶねぇ、マーモンは見た目も可愛いしリボーンみたいなドきつい冗談も言わないからついつい子供扱いしちゃうよ。

「ツナヨシ、気にしなくていいんだよ?あの二人よりボクは優しいよ。」

「「嘘つくんじゃねぇ!」」

ははははっ…ハモってるよ。ハモっちゃう程マーモンってあれなの?見た目は一番、目に優しいのにな。

「ツッ君〜ザン君〜ご飯よぅ!!あらっ!」

パタパタと足音をさせて入ってきた母は、ひと目見るなり目を輝かせた。

「もう!ツッ君たら、お友達来てるなら言ってくれなきゃ!いらっしゃい。よかったらご飯食べていってね?」

ツナそっくりの可愛い奈々は息子と違って細かいことにはつっこまないらしい。…玄関に靴ないだろ!とか小学生と友達ってどういうこと?とかはスルーしてくれた。母は偉大だ。

「はじめまして。リボーンだぞ、綺麗なツナのママン。」

「まぁ!はじめまして。お上手ね、リボーン君。」

「ボクはマーモンだよ。」

「はじめまして、マーモン君。好き嫌いはないかしら?」

「無いよ。ご馳走になるよ。」

「うふふっ。嬉しいわぁ!今日はいっぱい作ってあるからいっぱい食べてね?」

すっかり毒気の抜かれた4人は険悪なムードを霧散させていた。
最強ヒットマンと暗殺部隊隊長とその幻術士をここまで手の平に収めることができるのは世界広しといえど、奈々だけだろうとツナはしみじみ思った。

オレあの域に達したいな…なんて思っていたが、他の3人はそんなに違いはないと思っていた。
本当によく似た親子だ。家光に似なくてよかったな、なんて思われてもいたらしい。


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