アルコバレーノ、それか彼らに付けられている枷。 人よりも多くのことを経験し、知識を蓄え、そして手を血に染める…。 それは本当いいことなのか。羨ましいのか。 …冷たい檻に繋がれた獣と同じではないのか。 そんなことを考えることすらおこがましいのか。 「ツナ!」 部屋から出るといつからそこで待っていたのか、コロネロがしがみついてきた。 「重っ!」 腰にくる重さに足を縺れさせると、咄嗟に獄寺が支えてくれた。 「テメェ!10代目に何しやがる!」 「いいんだって!…でもありがとう。」 ニコッ。至近距離での笑顔にげふっ!とよろける。 「おいコラ!こいつちっとも役に立たねーぜ。こんなんでドン・ボンゴレの守護者が務まるのかよ?」 「オレが鍛え直してやるぜ!」 「イヤイヤイヤ!オレ継ぐなんて言ってないから!獄寺くんは友達だよ。」 右にコロネロ、左にラル・ミルチ、背中にはマーモンがよじ登ってきた。 平均よりも細い身体が絶妙なバランスで保たれたかに見えたが。 「てめーら3人とも降りろ。ツナが歩けねぇだろーが。」 一人ひとり剥がしていくと、リボーンがツナの手を取り優雅にエスコートする。 「ずりーぜコラ!」 コロネロの抗議もマーモンの呪いもラル・ミルチの殺気もお構いなしだ。 可哀想なスカルは恨めし気な視線しか送れない。 「ずるくなんかねーぞ。オレは親父に依頼されてツナを守っているんだからな。そしてツナが望めばオレがねっちょりカテキョーして身も心もドンにしてやんぞ。」 「微塵も望んでねぇ!お前にカテキョーなんかされたらマゾっ子になるわ!」 気にした様子もなく、取られた手の中指にリボーンの唇がそっと落ちる。 背中がゾクゾクする。無理やり手を抜き去った。 あぶね、危うくまた舐められるところだった。 ガキなのは見た目だけ!肝に命じておかないと!! 「ツナはアホだからな、無駄じゃねーか?オレ様が本気になったんだ、精々抵抗しやがれ。」 その方が楽しいんだぞ、なんて本物のサドだ。ううぅっ、しかも他の4人も何頷いてんだ!っていうか、リボーンお前読心術を使ってプライバシーの侵害を堂々としてんなよ! 「聴こえちまうんだ。ここまで読み易いヤツも珍しいぞ。」 「そこは、そっとしとくのが大人だろう!」 「だってまだ小学生なんだもん!」 もん!って使うなよ。見た目を裏切るラテン男らしさとのギャップがキモいよ。 「そーか?女にはよく、そこが良いと言われてんぞ。」 「だから、オレのプライバシーを返してくれよ。」 疲れた、色々と。 「ツナ、送ろう。」 ディーノさんは言ってくれたけど、こいつらともう少し話したいから断った。 やっぱ、まともなのはディーノさんだけだ。しかもかっこいいし。 「…てめーディーノみたいなへなちょこがいいのか?」 「へなちょこ言うな。それから読むんじゃねぇ!」 「何だ?跳ね馬がどうしたんだコラ。」 リボーンとツナの間に入ってきたコロネロをリボーンが肘で追い返す。が、勿論素直に追い返される訳もなくツナの肩に頭を摺りつけた。 「そういやこいつの金髪も触ってやがったか。金髪が珍しいのか?」 金髪だ。碧眼だ。こんな完璧な外国人の子供見たことねぇもん。 すりすりしてくるコロネロの頭と顔を撫でる。見た目は可愛い。 誰かさんと違って。 っぶね!ところ構わず発砲すんな! 「あっ、それじゃあ失礼します!」 「ああ、また会いに行くぜ!ツナ!」 「てめーは2度とくんな。」 「うおっ!厳しいな〜いいじゃねぇか、これでも同盟ファミリーのボスだぜ?」 「代替わりさせてあげようか?」 「今ここで鍛えなおしてやる!」 「それより本国を襲えば帰らざるを得ないだろう。…やるか。」 「やんな!スカル、それはやっちゃだめ!ってか、お前意外と黒いな。マーモン幻術使うのやめて、気持ち悪くなるから。ラルここで鍛えはじめたら置いてくよ?」 「おおっ、アルコバレーノを操縦してんな。すげーぜツナ!」 「ディーノさんも混ぜ返さない!さようなら!」 他の暴走アルコバレーノ2人を纏わり付かせて足早に立ち去っていった。 残されたディーノは苦い笑みを浮かべて何事かを呟いた。 そのまま帰ることはイタリアン5人組に阻止された叶わなかった。 ずるずると引き摺られ、5人が住むという大きな屋敷(!)に引っ張り込まれた。獄寺も勿論一緒だ。 「どんな話をしてきたんだ。」 ラル・ミルチが訊ねる。 「オレはお前の父親の部下だ。ボンゴレにしてボンゴレに非ず。だが、オレは知りたい。守りたいんだ、ツナ。」 男前過ぎる言いっぷりだ。男のツナより男らしい。完敗だ。 「…ラルさん、オレ守られるの前提?」 「ボンゴレを継ぐ継がないはすでに関係ない。リボーンが依頼を受けたように、オレもイエミツに依頼されている。お前はボンゴレを継ぐに相応しい血統だということを、少なくともこの5人とそれを依頼した人物、そして同盟のディーノ、これだけの人数が既に知り得ているんだ。」 スルーしないで、ラル。 「僕はボスから聞いたんだ。新しいボンゴレのドンが日本に居るって。」 「ボス?」 「XANXUSのことだ。」 「XANXUSさん?!ボスなの?それならXANXUSさんが継いでるんじゃないの?」 「XANXUSはヴァリアーのボスだ。ヴァリアーはボンゴレの暗殺部隊だ。」 暗殺部隊…ってえーと、マンガの中だけじゃないの?マジもん?! 「マーモンも?」 訊ねるとフードの下の表情が歪む。これ以上は見ていられなくて話を変えた。 「…ねぇ、成長しないっていつからその小学生のような身体なの?」 「どうかな、10年以上はこのままだったか。」 スカルが言うとそれぞれ頷く。 「ツナが望めば成長するぞ。」 すごくイヤラシイ顔をしたリボーンがツナの顎を摘んで引き寄せる。 咄嗟に手で払うとちっと舌打ちされた。これってオレが悪いの?! 「オレもツナが望めば大きくなるのはやぶさかではないぜ。」 ラル・ミルチに顔を掴まれ寄せられそうになった!やめて!オレ、ロリコンでもないよ! 慌てていると上から掬いとられた。今度はコロネロだ。 「あと1年くらいまってろコラ!お前よりは大きくなるぜ。」 「っていうかどういう基準で大きくなるの?自分の意思で思い通りじゃないの?」 「そうだよ、だからじゃない。みんな君を守りたいし、君をモノにしたいんじゃない。」 「オレはモノじゃねぇ!」 コロネロから救い出してくれたマーモンにがなる。いつの間にこいつらの景品にされてたんだ。嫌すぎる! 「オレは敵対マフィアだが、お前が手に入るなら成長してみるのもいい。恋仲になれば関係ないからな。」 「ならないよ!ガキじゃないのは分かったけど、オレ男だからムリ!」 はーはー…突っ込み疲れた。 ソファでぐったりしていると、ラル・ミルチが一言。 「オレは女だ。」 そーだったね。もーいいや。 . |