虹ツナ | ナノ

6.



アルコバレーノ、それか彼らに付けられている枷。

人よりも多くのことを経験し、知識を蓄え、そして手を血に染める…。

それは本当いいことなのか。羨ましいのか。
…冷たい檻に繋がれた獣と同じではないのか。

そんなことを考えることすらおこがましいのか。






「ツナ!」

部屋から出るといつからそこで待っていたのか、コロネロがしがみついてきた。

「重っ!」

腰にくる重さに足を縺れさせると、咄嗟に獄寺が支えてくれた。

「テメェ!10代目に何しやがる!」

「いいんだって!…でもありがとう。」

ニコッ。至近距離での笑顔にげふっ!とよろける。

「おいコラ!こいつちっとも役に立たねーぜ。こんなんでドン・ボンゴレの守護者が務まるのかよ?」

「オレが鍛え直してやるぜ!」

「イヤイヤイヤ!オレ継ぐなんて言ってないから!獄寺くんは友達だよ。」

右にコロネロ、左にラル・ミルチ、背中にはマーモンがよじ登ってきた。

平均よりも細い身体が絶妙なバランスで保たれたかに見えたが。

「てめーら3人とも降りろ。ツナが歩けねぇだろーが。」

一人ひとり剥がしていくと、リボーンがツナの手を取り優雅にエスコートする。

「ずりーぜコラ!」

コロネロの抗議もマーモンの呪いもラル・ミルチの殺気もお構いなしだ。
可哀想なスカルは恨めし気な視線しか送れない。

「ずるくなんかねーぞ。オレは親父に依頼されてツナを守っているんだからな。そしてツナが望めばオレがねっちょりカテキョーして身も心もドンにしてやんぞ。」

「微塵も望んでねぇ!お前にカテキョーなんかされたらマゾっ子になるわ!」

気にした様子もなく、取られた手の中指にリボーンの唇がそっと落ちる。
背中がゾクゾクする。無理やり手を抜き去った。

あぶね、危うくまた舐められるところだった。

ガキなのは見た目だけ!肝に命じておかないと!!

「ツナはアホだからな、無駄じゃねーか?オレ様が本気になったんだ、精々抵抗しやがれ。」

その方が楽しいんだぞ、なんて本物のサドだ。ううぅっ、しかも他の4人も何頷いてんだ!っていうか、リボーンお前読心術を使ってプライバシーの侵害を堂々としてんなよ!

「聴こえちまうんだ。ここまで読み易いヤツも珍しいぞ。」

「そこは、そっとしとくのが大人だろう!」

「だってまだ小学生なんだもん!」

もん!って使うなよ。見た目を裏切るラテン男らしさとのギャップがキモいよ。

「そーか?女にはよく、そこが良いと言われてんぞ。」

「だから、オレのプライバシーを返してくれよ。」

疲れた、色々と。

「ツナ、送ろう。」

ディーノさんは言ってくれたけど、こいつらともう少し話したいから断った。
やっぱ、まともなのはディーノさんだけだ。しかもかっこいいし。

「…てめーディーノみたいなへなちょこがいいのか?」

「へなちょこ言うな。それから読むんじゃねぇ!」

「何だ?跳ね馬がどうしたんだコラ。」

リボーンとツナの間に入ってきたコロネロをリボーンが肘で追い返す。が、勿論素直に追い返される訳もなくツナの肩に頭を摺りつけた。

「そういやこいつの金髪も触ってやがったか。金髪が珍しいのか?」

金髪だ。碧眼だ。こんな完璧な外国人の子供見たことねぇもん。
すりすりしてくるコロネロの頭と顔を撫でる。見た目は可愛い。

誰かさんと違って。
っぶね!ところ構わず発砲すんな!

「あっ、それじゃあ失礼します!」

「ああ、また会いに行くぜ!ツナ!」

「てめーは2度とくんな。」

「うおっ!厳しいな〜いいじゃねぇか、これでも同盟ファミリーのボスだぜ?」

「代替わりさせてあげようか?」

「今ここで鍛えなおしてやる!」

「それより本国を襲えば帰らざるを得ないだろう。…やるか。」

「やんな!スカル、それはやっちゃだめ!ってか、お前意外と黒いな。マーモン幻術使うのやめて、気持ち悪くなるから。ラルここで鍛えはじめたら置いてくよ?」

「おおっ、アルコバレーノを操縦してんな。すげーぜツナ!」

「ディーノさんも混ぜ返さない!さようなら!」

他の暴走アルコバレーノ2人を纏わり付かせて足早に立ち去っていった。

残されたディーノは苦い笑みを浮かべて何事かを呟いた。






そのまま帰ることはイタリアン5人組に阻止された叶わなかった。
ずるずると引き摺られ、5人が住むという大きな屋敷(!)に引っ張り込まれた。獄寺も勿論一緒だ。

「どんな話をしてきたんだ。」

ラル・ミルチが訊ねる。

「オレはお前の父親の部下だ。ボンゴレにしてボンゴレに非ず。だが、オレは知りたい。守りたいんだ、ツナ。」

男前過ぎる言いっぷりだ。男のツナより男らしい。完敗だ。

「…ラルさん、オレ守られるの前提?」

「ボンゴレを継ぐ継がないはすでに関係ない。リボーンが依頼を受けたように、オレもイエミツに依頼されている。お前はボンゴレを継ぐに相応しい血統だということを、少なくともこの5人とそれを依頼した人物、そして同盟のディーノ、これだけの人数が既に知り得ているんだ。」

スルーしないで、ラル。

「僕はボスから聞いたんだ。新しいボンゴレのドンが日本に居るって。」

「ボス?」

「XANXUSのことだ。」

「XANXUSさん?!ボスなの?それならXANXUSさんが継いでるんじゃないの?」

「XANXUSはヴァリアーのボスだ。ヴァリアーはボンゴレの暗殺部隊だ。」

暗殺部隊…ってえーと、マンガの中だけじゃないの?マジもん?!

「マーモンも?」

訊ねるとフードの下の表情が歪む。これ以上は見ていられなくて話を変えた。

「…ねぇ、成長しないっていつからその小学生のような身体なの?」

「どうかな、10年以上はこのままだったか。」

スカルが言うとそれぞれ頷く。

「ツナが望めば成長するぞ。」

すごくイヤラシイ顔をしたリボーンがツナの顎を摘んで引き寄せる。
咄嗟に手で払うとちっと舌打ちされた。これってオレが悪いの?!

「オレもツナが望めば大きくなるのはやぶさかではないぜ。」

ラル・ミルチに顔を掴まれ寄せられそうになった!やめて!オレ、ロリコンでもないよ!
慌てていると上から掬いとられた。今度はコロネロだ。

「あと1年くらいまってろコラ!お前よりは大きくなるぜ。」

「っていうかどういう基準で大きくなるの?自分の意思で思い通りじゃないの?」

「そうだよ、だからじゃない。みんな君を守りたいし、君をモノにしたいんじゃない。」

「オレはモノじゃねぇ!」

コロネロから救い出してくれたマーモンにがなる。いつの間にこいつらの景品にされてたんだ。嫌すぎる!

「オレは敵対マフィアだが、お前が手に入るなら成長してみるのもいい。恋仲になれば関係ないからな。」

「ならないよ!ガキじゃないのは分かったけど、オレ男だからムリ!」

はーはー…突っ込み疲れた。

ソファでぐったりしていると、ラル・ミルチが一言。

「オレは女だ。」

そーだったね。もーいいや。


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