「だから!今日は大事な用があると言っているんだっ!」 「それがどうした?てめぇの用事なんざ、オレの用事に比べたら月とすっぽん、菜花と牡丹ぐらいの雲泥の差だぞ」 どうしてそこまで言い切れるのか不思議でならない。しかしそれもリボーンがリボーンたる所以だろう。 うっかり諦めかけたスカルは、それでも可愛い綱吉の嬉しそうに笑う顔を思い出して慌てて頭を横に振ると今日は折れる訳にはいかないと食い下がる。 「だとしても、だ!どうして貴重な休みをあんたの遠い親戚の家に行って過ごさなきゃならないんだ。しかも荷物持ちの上にヒーローになれなんて…なれる訳ないだろう!」 当たり前である。 変身シーンは合成なのだ。そしていくらヒーローの中に入って演じているとはいえ被り物がなければなれっこない。 ムリだと逃げ出そうとするスカルの横で、話を聞いていたコロネロはサラサラの金髪を手で掻き毟るとポツリと呟いた。 「だが気にならねぇか、コラ」 「何がだ?」 先輩と呼ばされているとはいえ、リボーンもコロネロもスカルと同い年だった。 だから言葉が少々荒くなるのだが、それを咎めるのはいつもリボーンだけだった。 そのリボーンがスカルの暴言を許している。常にはあり得ない。 「そいつが休みを合わせるほど逢うことを楽しみにしてる親戚がいるってことだぜ。見てみたいと思わねーか」 「…」 言われてみれば確かに。だが、そんな興味よりも今は綱吉とのふれあいが大切だとスカルは顔を叩くとリボーンにきっぱりと言い切った。 「今日は行けない」 普段のパシリ根性はどこへやら、珍しく譲らないスカルにリボーンの柳眉がピクリと跳ねる。 スカルがV系ヒーローだとするならば、リボーンは影の実力者といった風格がある。事実、リボーンは裏でヒーローを操る存在として登場している。 正直にいえばヒーローたちよりも人気は高かった。 そんなリボーンの性格はといえば、これまた絵に描いたような傲慢不遜。俺様主義といえば分かりやすいかもしれないが、周りは常に彼の犠牲者だ。 そんなリボーンは本人曰く、チャームポイントだという揉み上げをクルンといじりながら、スカルのライダースーツの後ろを掴み上げた。 男一人を持ち上げる腕力はコロネロにも匹敵する。 「いいか?もう一度言うぞ。これから節分のためにオレの親戚の家に行くんだ。分かったか」 「いやだ」 バチバチと火花を散らせて睨み合う2人をつまらなそうに眺めながら、コロネロは勝手知ったるなんとやらで冷蔵庫からコーラを取り出して煽った。 「てめぇ、そこまでしてオレにたて突くってことは女か?」 「ち、違う!近所の子供で…」 「ああ、あの『ツナヨシ』とかいうヤツか、コラ」 「…つなよし?」 スカルとリボーンのやり取りをコロネロが混ぜっ返しその名前を聞いた途端、リボーンは顰めていた眉を益々険しくしてスカルを床の上に放り投げた。 それにどうにか受身を取って床に転がらないように膝をつくと、すぐさまリボーンの手のスカル胸倉を掴んだ。 「つなよしと言ったか?そいつは黒髪か、それとも茶髪か?」 妙なことを聞くと思いながらも、ギリギリと締め上げる手に負けて茶髪だと答える。ついでにそれは染めた色ではなく、どうやら母親に似たらしいと添えれば目の前の顔は表情をなくしていく。 「まさか小学5年生じゃねぇだろうな?」 「…いや、そのまさかだが…っ、ぐえぇ!」 カエルが引かれた声にも似た悲鳴を上げたスカルを寸でのところでコロネロがリボーンの手から取り上げるも、普段の扱い同様適当に床に放り投げたせいで2度目の情けない声を漏らした。 今度は受身も取れなかったスカルが、それでもどうにか顔だけは守りきったところで背後からドンと背中を足蹴にされた。 「この害虫が!ウチのツナに取り付くなんざ10億万年早いぞ!!」 どうやら綱吉はリボーンの遠い親戚だったらしい。そう悟った時にはリボーンの容赦ない蹴りがスカルのこめかみにクリーンヒットしていた。 2011.02.03 |