虹ツナ | ナノ

4.



「ねぇ、この前の小学生知ってるんでしょ。今どこ。」






今日も絶賛ダメダメライフを送ってきたところだった。

獄寺と2人のいつもの帰り道。やっぱりいつものように山本と教室で別れ、鞄を持たせて下さい!いやそれおかしいから!と漫才を繰り広げながら校門を一歩出たところで風紀委員に捕まった。

リーゼントが凛々しい。全然なりたくはないが。

委員長がお呼びだ…とオレの腕を取ろうとした風紀委員たちに、獄寺が立ちはばかる。
リーゼント集団とダイナマイトで応戦していたのだが、その隙をついて現れた並盛最強(凶)の委員長に風紀委員の本拠地である応接室にお持ち帰りされたのである。

で、冒頭のセリフだ。

「えぇっと、5人いましたがどいつのことですか?」

「カラオケボックスに拳銃持って、怪しい黒服を始末した子。」

「…あのガキ何しちゃってんだぁ!」

鞄からケータイを掴むと番号を確認する。…やっぱり勝手に入っていた。色々とツッコミたいところだが、まずはかけてみる。

3コールで相手が出た。

『ちゃお、ツナ。昨日は楽しかったな。今日はどこでデートしような?』

「何言ってんだ!昨日はみんなでゲーセンに…。」

不自然に声が尻窄みになる。それはそうだろう、前には風紀委員長さまがいらっしゃったことに気付いたのだから。

「ふぅん。またゲーセンに行ったのかい?群れたら噛み殺すよって言ったでしょ。」

「いやぁ…あの…」

雲雀はケータイを綱吉の手から毟り取ると、おもむろにケータイの向こうの少年と話し始めた。

「やあ、小学生。綱吉は今僕といるよ。残念だけど今日は君と会えないそうだ。それじゃ。」

言うだけ言うと相手の返事も聞かずに通話を切る。

「雲雀さん…どうするんです、か?」

「30分。それ以上はかからないと思うけど、かかるようなら帰っていいよ。」

意味の分からない事を呟き、畳んだケータイを綱吉の掌にそっと返してくれた。

「お茶でいい?」

雲雀が立ち上がってお茶の支度をしようとしている。慌てて綱吉はその横に並んで茶筒を掴む。

「オレがやりますよ。座ってて下さい。」

「…君、煎れられるの?ダメツナなんでしょ?」

「ぐっ…ダメツナでもお茶は煎れられます。うちではオレが一番うまく煎れるって言われてるんですよ。」

ポットのお湯を確かめて湯のみに入れてから急須にお茶を入れ、湯のみのお湯を注ぐ。ふんわりとやさしい緑茶の香りが漂い出して、知らず柔らかな表情になっていた。それを横で見ていた雲雀は少しだけ目を見張るとソファに腰掛ける。

「いいお茶っ葉ですね。香りといい味といい…とってもいいですよ!」

にこにこと笑い掛ける綱吉を不思議なものを見る目で見つめる。おかしい、先ほどまであれほど怯えていたのに。

雲雀は気付いていなかったが、雲雀自身に殺気がないこと、危害を加える要素(群れていない)がないため綱吉は暢気にしていられるのだ。
それでも、普通ならば恐怖の裏番とお茶をする前に卒倒しているところだが。

そもそも彼は前からおかしい。彼の周りにはダイナマイトを所持する番犬や爽やかな笑顔で滅多打ちにする意外と手段を選ばない親友など、どう考えても普通じゃない人物が多すぎる。

極めつけがこの間の小学生だ。

3人掛かりで襲ってきた。手には拳銃とライフルが収まっていた。さすがに遅れを取ったが、それは不測の事態だったからだ。次はない。
彼らほどおいしい獲物はいなと思う。なのに、目の前の彼の方に意識が向くのは何故だろう。
裏がありそうな気がするのだ。

洗ってみても裏が取れなかったが、それもおかしな話だ。

「…まぁいいや、その内分かるだろうしね。」

そろそろ30分が経とうとしていた。
そこに雲雀の右腕たる草壁が慌てて入室してきた。

「休憩中にすみません。正門、裏門ともに何者かによって銃撃され突破されました。」

銃撃の一言に綱吉の肩が揺れる。うろうろと視線を彷徨わせると、居ても立ってもいられないとばかりに窓辺に近付き外を見回す。

「伏せろ。」

ふいに少女の声が聞こえ、不思議に思うことなく綱吉は身を床に伏せた。瞬間を見逃さす、窓ガラスは割られた。
綱吉の背にきらきらしたガラスが降りかかる。

空いた窓から3人の子供たちが音も無く侵入を果たす。

「イイ子にしてたか?」

「あのなぁ…オレの方が年上なんだよ!イイ子もクソもあるか!」

「何にもされてなさそうだな、コラ。」

「されていたらぶっ殺す。」

「ってコロネロさん、何オレを担いでるの?…何で窓に足を掛けてるんデスカ?」

「行け。」

言うが早いかロープを握り締めたコロネロが、綱吉を背に落ちていった。ゴーサインを出したのはラル・ミルチだ。

ぎゃぁあ〜…と言う、綱吉の断末魔だけが応接室に響く。

「ツナは貴重な天然保護生物だがな、オレたちが保護してる。お前の庇護はいらねーぞ。雲雀。」

ラル・ミルチはコロネロの跡を追って降りていった。残るはリボーンのみ。
不敵な笑顔で対面しているが、殺気は綱吉のいた先ほどと比べるまでもない。
その場に居合わせた草壁がじりじりと後退する程だ。

「ふうん…ねぇ、あの子は何?」

「オレたちも気付いたのは数日前だ。知りたいならこっちに来ることになるぞ。」

「こっち?どこだろと僕は知りたいことは調べるよ。」

「構わねぇ。好きにしろ。」

ツナに付いてくるつもりなら、それも仕方なしだ。
窓枠に足を掛けると、殊更ゆっくりと振り返りニヤリと嘲笑う。死神と呼ばれる子供に相応しく。

「アディオ。」

視界から消えていった。窓ガラスの無くなった窓から爽やかな風が吹いた。


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