「明けましておめでとうございます!」 今年も沢田書道教室には新年の挨拶に来る子供たちで賑わっていた。 全員にお年玉を配る訳にはいかないと代わりに子供たちにお汁粉を振舞っているためかと思いきや、今年は少し趣きが異なる子供たちもいる模様。 他の子供たちを蹴散らして6人だけ居座っているのがその証拠といえば証拠かもしれない。 両親や祖父母から貰ったばかりのお年玉を握り締めた6人が元旦の朝9時に沢田書道教室のチャイムを鳴らすことなく上がりこんだのは、ひとえに目の前でかるた遊びに興じているツナを誘い出したいがためだった。 どうやって他の5人を出し抜こうかと様子を窺っていれば、バン!という音と共にツナが畳の上に転がっていった。 「いてて…ラル、容赦ないね」 「当たり前だ。どうして大人相手に子供のオレが手加減してやらなきゃならないんだ」 もっともといえばもっともだろう。 しかし、ラル・ミルチに手を叩かれて畳に転がったツナをみれば一概にそうとも言い辛い。 齢12にして抜群の破壊力を持つラルの腕にかかれば、ヒョロヒョロしたツナなど木枯らしに吹かれる葉の如しだ。 父母が用意したと思われる着物の袖を捲くり、結い上げた髪のせいでいつもより凛々しいラルはこのメンバーの誰よりも男らしい。 同じく着物に着替えてはいるものの、どこか病弱な文学青年といった風情のツナは頭を振りながら畳の上から起き上がった。 「ラルには敵わないよ。っと、帯が解けそうになったみたいだ。危ない、危ない」 適当というより、自身に興味がないツナは解け掛けた帯を結い直すと開いてしまった胸元に手を当ててぎゅっと襟を引いた。そこから覗いた肌色に6人が吹き出す。 「お前、着物の下に何にも着てねぇのか?」 「ん?ああ、これね。丁度いいのが見つからなくてさ面倒だからいいかって」 「よくねーだろ、コラ!」 「外に出ないし大丈夫、大丈夫」 意外と寒くないよ?などという返事に5人が身体を小刻みに震わせていると、リボーンは正座するツナの横ににじり寄るとその裾に手を掛けた。 あっ!と子供たちが声を上げた瞬間に裾が開かれてカラフルな下着が視界に入る。チッという舌打ちを聞いた5人が慌ててリボーンの手を掴みにいったのは言うまでもない。 「何してるんだい!?」 「恥を知りなさい、恥を!」 普段声を荒げることなどない風の剣幕にもリボーンは柳に風と受け流してツナを見れば、キョトンとした顔で首を傾げてからあぁ!と声を上げた。 「下着付けてないって言ったから確かめたのか!それは女の子の話だよ…って、ラルのを確かめちゃダメだよ?」 どうやらリボーンの言動を誤解したツナがそうリボーンを諭すと、それには生ぬるい顔でこう答えた。 「誰がそんな男女の着物の中に興味があるってんだ」 暗にツナの着物の中身には興味があるということだが、勿論ツナには通じていない。 慌てたコロネロとラルがツナに駆け寄る前にリボーンはその手を取ると立ち上がってニヤリと笑う。 「そろそろかるた取りにも飽きたぞ。どうだ羽根突きをしないか?一番負けた奴はバツとして着ているものを一枚脱ぐんだ」 「さすが小学生だね、もう外に出て遊びたいんだ。うーん、オレ運動全般苦手だけど、たまには付き合おうかな」 リボーンの意図を知った5人が危機感のないツナを止めようと必死になった正月の日の話。 . |