衝撃の出会いから3日。周りから危機管理能力を疑われ続けている綱吉だが、さすがにあの一件は範疇を越えていたので関わりを持たないようにしていた。 取り敢えずゲーセンには顔を出さないようにして、マーモンからの電話と未登録の電話にも出ないようにしてみた。 のだが…。 ******* 今日はたまたま野球部も休みで、久しぶりに山本と遊びに出掛けた矢先のことだった。 クラブの張り替えを頼んだという山本とスポーツ用品店に行こうと、またまたカラオケボックスの前を通った際にそれは起こった。 見覚えのあるリーゼント頭がドカドカとカラオケボックスから雪崩のように外へと倒れ出てきた。 「…!」 「また雲雀が面白いことやってるのな。」 「山本!面白いことじゃないよ。早く立ち去ろう…」 背中を押して足早に通り過ぎようとしたのだが、すでに遅かったようだ。 イタリアンな小学生が、軽やかな足取りで窓から飛び出てきたのだった。 今日は一分の乱れもないほどびしっと決めた全身黒尽くめのスーツ姿で。 「おっ、ツナじゃねぇか。オレに逢いに来たのか?」 もう5年もしたら目も当てられない程に嫌味ったらしく似合いそうな、でも今はまだ可愛さが残るニヒルな顔でニヤリと笑い、リボーンが話し掛けてきた。 「早く逃げたほうがいいだろ。ここに居ると雲雀さんがすぐ来るって。」 「なら、ついて来い。」 「誰が行くか!」 「えっ、付いて行ってやらねーの?弟だろ?従弟だっけ?」 「ちがっ!!」 居候のランボと勘違いされて、慌てて否定する。 しかし、やはりというか雲雀が遠くからやってきたのが見えた。 凄い形相だ…関わりあいがあるなし関係なく噛み殺されると思われるほどの。 「やべぇ。逃げるか。」 山本に手を引かれてリボーンと共に雲雀さんが来るのと逆方向に逃げる。 野球少年な山本と、怪しい素行のリボーンは足が早い。途中で付いて行けなくなりそうだったところを両脇から腕をすくい取られて強制的に連れて行かれた。 「お前…また何やってるんだよ!?」 「仕事がたまたまかち合っただけだ。」 「ハハハッ〜ツナの弟、何のごっこ遊びしてるんだ?」 「オレはフリーのヒットマ「うぎゃ〜!!!聞きたくねぇ!」騒がしいヤツだな、見つかるぞ。」 口を手で塞がれて、川縁の背の高い茂みに押し遣られる。山本も大人しく付いてきているようだ。 声を潜めなければならないので、迫力のないひそひそ声でリボーンに言い募る。 「リボーン!オレたちを巻き込むなよな!」 「この前逃がしてやっただろ。それに今日のはたまたまだ。」 「あれ?今日はリボーンだけ?」 キョロキョロと辺りを見回してもあとの4人が見付からない。見目麗しいイタリアンな小学生たちに会ったことのない山本が不思議そうにこちらを見ていることに気が付いた。 リボーンは気障な様子で帽子のツバを上げると綺麗な笑顔で山本に挨拶をした。 「チャオっす!オレはリボーン。ツナの将来の夫だぞ。」 「オレ男!お前も男だろ!ありえないから。」 「ハハハハッ。おもしれーのな。獄寺だけじゃなく、小学生とまで家族ゴッコしてんのか。よろしくな、オレ山本武。ツナの親友な。」 「よろしくだぞ。ん?獄寺?……ひょっとして……」 「何?何か知ってる名前なの?お前みたいな物騒な小学生に覚えられてるなんてことな…い、…そう言えば獄寺くんもイタリアの帰国子女だったような…」 「お、坊主もイタリア人なのかぁ。この町ってイタリア人多いよな。ツナ知ってるか?保険医のシャマルもイタリアだって言ってたぜ。獄寺の知り合いだってさ。」 「…シャマルまでいんのか。」 「な、な、な、なんだよ…知ってんのかよ?」 「あぁ、シャマルもヒットマンだぞ。…って何だお前、聞いといて耳塞いでんな。」 「オレは聞いてません!聞こえなかった!」 涙目になりながらキッとねめつけるが、益々イイ笑顔で返された。だが目はまったく笑っていない。 「…そんな目ぇしてると襲っちまうぞ。」 ぼそり、小学生とはとても思えない低い声で呟く。 背中に悪寒が走った。今まででも最悪クラスの悪寒だ。 慌てて山本の背に隠れる。 「ん〜どうしよっか。風紀委員が街中徘徊してるなら出掛けらんねぇしな。ツナどうする?」 ぽんぽんとツナの頭に手を置くと、肩越しに振り返る。 綱吉は山本のシャツを握りながら上目遣いで視線を合わせた。 まともに上目遣いを喰らった山本の横顔を何かが飛んでいった。 「一般人にそんなもん向けんなぁ!!」 サイレンサーを装備しているので大きな音は出ないが、硝煙の臭いはばっちりだ。 しかし、いつ出していつ仕舞ったのか見えなかった…。 「山本、人のモンに手ぇ出すなよ。」 「人の話を聞けぇ!この傲慢イタリアーノ!」 「今の小学生はサバゲーが流行ってるのか〜今度仲間に入れてくれな。」 あああぁ…違うんだ、実弾入りの本物なんだ。とは言えないのでがっくりと項垂れて視線を逸らすしかない綱吉だった。 . |