小ネタ | ナノ







2013/12/02 09:43



どうにかリボーンから逃げ出したオレは、長く待たせたお詫びとしてリボーンのスーツを新調すべく街へと繰り出した。
いつも仕立てをお願いしている店の開店時間はもう少し後だからこうして時間を潰すために街をぶらついている。
今年で28になるというのにスーツを脱げば10代に見えると言われることは褒め言葉じゃない。
これでカジュアルな格好をすると、リボーンと年齢差があるように見えないらしい。
確かにイタリアではオレみたいな東洋人はあまり見掛けないし、日本人の中でもオレは童顔だし。
ぐんぐん成長中のリボーンとはまだまだ身長のひらきはあれど、あっという間に追い抜かれそうではある。
それでもオレはリボーンのお父さんなんだと自分に言い聞かせていると、前を歩いていたリボーンがクルリと身体ごと振り返った。

「おいツナ、この前買ってきてやったジェラートはそこのヤツだぞ」

「え?ホント?!」

グッと立てたリボーンの親指がその背後にある客で溢れる店を指している。
言われて思い出したのはピスタチオの香りが口いっぱいに広がった黄緑色のジェラートだ。
リボーンが仕事帰りに立ち寄ったというそこに一度連れて行って欲しいとお願いしていたことを忘れないでいてくれたらしい。
こういうところが可愛いんだよなと思いつつリボーンの手を引いて店内に入れば、リボーンは小声でオレに耳打ちをした。

「オレはいらねぇからな」

「へ?なんで?遠慮しなくていいんだよ?」

たまには外で歩き食いするのも楽しいものだ。
いままでこうしてリボーンと共に外に出歩けなかったのはお金がなかったからではなく、マフィアのボスなんてものを継いでしまったからだ。
右腕である獄寺くんが警備が云々とうるさくて自由がなかったんだよと言うと、獄寺くんがリボーンに追い掛けられるかもしれないから言えないが。
そういえば最近はそういった獄寺くんからのお小言が減った。
とりとめもないことを考えている間にオレの番が回ってきていたらしい。
ジェラートが並ぶガラスケース越しに注文を聞かれたオレは慌ててピスタチオを2つ頼む。
リボーンが不服そうにオレの横顔を睨んでいるも、それには気付かないふりをして代金を支払うとジェラートを受け取った。

「たまには付き合ってくれてもいいだろ?」

そう唇を尖らせて言えば、リボーンはバツが悪そうに視線を反らした。
子どもの癖に甘い物が嫌いだと言うリボーンに強引に一つ押し付ける。
眉間に皺を寄せて渋々口に入れているリボーンを見て笑いながら、ゆったりとした歩調で目的もなく2人で街を歩いていく。
久しぶりどころか、こんなに護衛も獄寺くんも居ない時間はこちらでは初めてだと思い至る。

「そういえば今日は護衛ついてこなかったね」

「なんだ付き添いが欲しかったのか?」

肩を竦めての意地悪い問い掛けに膨れていると、リボーンは半分ほど減ったジェラートを放り投げてきた。
どうにか地面に落とす寸前で受け取ることに成功したオレの、頭の上を銃弾が通り過ぎていく。
斜め後ろの石畳を撃ち抜いた弾にため息を吐いていると、リボーンが懐から拳銃を取り出して3発撃った。
悲鳴が上がる街中を足早に駆け抜けて建物の陰に身を隠す。

「そのジェラートを食い切るまで出てくんなよ」

それだけ言うとリボーンは柱の陰から飛び出ていった。
パーン、パーンという2発が響いてくるも心配はしていない。
リボーンを殺れるヤツなんかいないだろう。

「ああ、だから護衛がいらないんだ」

成る程なあと頷くと、溶けかけてしまったジェラートを舌で舐め取る。

「ま、なんかあったらオレも出るけどさ」

ジャケットの中に忍ばせているリングがごそりと音を立てた。


おわりです






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