小ネタ | ナノ







2013/12/02 09:42



「おいこら、いい加減に仕事やめろ」

ぷくりと膨らんでいるだろうリボーンの白くて柔らかい頬がそこにあることは分かっている。
だけどもう少しでこの仕事が終わるというのも事実だ。
今日は日曜日の午前11時。
外は気持ちのいい秋晴れ。
オレの横で我慢しきれずに抗議をしているのは5年前に養子として引き取った少年ヒットマン。
今は10歳ぐらいだろうか?生まれた年も月日も分からないからオレが引き取った日を誕生日にしている子どもだ。
リボーンという名はコードネームだったのだが、本人もそれで馴染んでいるとのことでそのまま使っている。
だけどオレの一人息子だ。
そんな息子の欲求に答えてあげたいところだが、これを終らせなければ仕事が滞ってしまう。
昨晩から一睡もしないで資料に目を通し、指示を渡してタイミングを計っていた。
パソコンの画面から見えるのはこちらを嵌めようと画策している敵対ファミリーの経営するペーパーカンパニー内部。
カメラを仕掛けられていることも知らずに不正を働いて市民に迷惑を掛けている証拠を自白していた。
これだけでは弱いからこそ、こうして部下を待機させている。
タイミングを間違えると誘拐された知り合いの娘さんが殺されてしまうかもしれない。
レストランで働いていた娘さんが立ち聞きしてしまった話は、この街を治めているオレには到底見過ごすことのできない事態を示していた。
薬も売りもご法度を貫き通している我がファミリーのテリトリーに侵入してきた売人グループ。その裏にいたのはやはりオレのファミリーを我がものにせんとあの手この手でちょっかいを出してくる敵対ファミリーだった。
ファミリーの規模的に相手にするのもバカらしい弱小ファミリーだと思っていたが、今回だけは許せない。
インカムを通して指示を下すと、号令ひとつで右腕の部隊が動き出す。
轟音の後に上がる土煙がパソコン画面を覆い隠し、その後ろから慌てて部屋を出ていく男の姿が見えた。
直後に人質確保という声と、男の泣き叫ぶ声がインカム越しに聞こえてきた。

「そのまま建物ごと爆破して。警察への根回しと周囲の市民は避難は完了させているよね?うん、そう……今回は派手にいこうか」

言えば右腕が恭しくカメラの前で一礼をする。
直後にインカムの向こうでガラガラと建物が崩れていく音が聞こえ、即座にカメラの前から消えた右腕の後ろから崩壊がはじまった。
途切れた映像とインカムから聞こえる満足げな声が漏れ、そこでようやく自分からもホッと息が零れた。
もう一つの了平さんの部隊と合流させて手順通りに後始末を任せるとインカムを外してソファに転がった。

「お、わっ……たぁ!」

いつでも出て行けるようにとスーツ姿でいたオレは、寝転がりながらもネクタイを緩めて目を閉じた。
それを一人掛けのソファで見ていたリボーンがテーブルを乗り越えてオレの上に乗ると顔を近付けてきた。

「……だからオレが始末してきてやるって言ったんだ。そうしたらこんなに時間もかけねぇぞ」

だろうな、と心の中でだけ頷いた。
リボーンは歴代の暗殺者の中でも3本の指に入るほどの腕前だ。年を考えると空恐ろしい。
でも今回だけはダメだったのだ。
獄寺くんがオレの前に首謀者ともども引き摺り出してくれることを確信しているから二コリと笑みが零れる。
その笑顔を胡散臭い顔でジロリと眺めるリボーンに手を伸ばした。

「愛してるよ……リボーン。お前はオレに守られるほど弱くはないけど、それでも大切なんだよ」

まだ膨れていた頬を両手で撫でてやれば、リボーンはオレの腹の上で体勢を整えて伸し掛かってくる。
いくら10の子どもと言えどもバカにしてはいけないと気付く。相手はリボーンなのだから。
妙にがっちりとホールドされた身体は身動きが取れなくなっていて引っ掛かりを覚えた。
だからといって殴られるとは思えなかったから、好きにすればいいさとされるがままに任せる。

「オレはツナの100倍、いや1万倍はお前を愛してるぞ」

「本当?嬉しいよ」

最初の出会いを思い返せば、そう言って貰えるだけありがたい。
養子として迎え入れた当初は軽蔑さえされていたっけ。
感慨深く目元を緩めていると、リボーンは勢いよくオレの唇に噛み付いてきた。
否、噛みつかれたと思っていたそれがキスだと気付いて全身の血の気が引いていく。
どうにか唇から逃れたオレはリボーンの正気を疑った。

「リボーン!ねぇ、リボーン!?なんでこんなことするんだよ?今から遊ぶんだよな!!」

遊んでくれと可愛く強請っていたリボーンが、どうしてこんなセクハラまがいなことをするのか分からない。
というか分かりたくない。
少女とも少年ともいえない繊細な容貌を歪めてニヤリと笑うリボーンを見上げると、リボーンはネクタイを解いたオレの襟元に指を伸ばした。

「そうだぞ、今から遊ぶんだ。ツナは寝不足だからな、寝てもいい……が、寝ていられりゃいいな」

「何して遊ぶんだよ!」

「ナニしてに決まってんだろ」

どうして顔色一つ変えずに言うんだ。


おわり






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