小ネタ | ナノ







2013/12/02 09:36



知っている人は知っている週刊少年マガジ○の「我妻さんはオレの嫁」のパロディです。
これも前のサイトの日記に置いてあったものを移動してきました。





見るとはなしに視線が吸い寄せられていく。
今日も格好いい彼の後ろ姿にホウと息を漏らしたのは無意識だ。
前の席の女子が不審げにこちらを振り返ったがそんなの知ったことか。
オレの3つ斜め前にいるリボーンはいつものように気だるげに片肘をついた姿勢で黒板に視線を向けていた。
彼ことリボーンは同じクラスの男子生徒だ。かく言うオレも性別は男である。
リボーンと違いこれといった特徴もなく、頭も運動神経もいい訳じゃない。
これで顔でもよければ少しはマシなのだが、残念ながら並といったところだろう。
彼はといえば、顔よし、スタイルよし、運動神経も勉強も出来るいわば出来る男。同じ男子からは存在自体が嫌味だとも陰口を叩かれることも多い。
そんなパーフェクト男とオレとでは接点なんてないに等しい。にも拘らず、オレは先週からリボーンのことを意識するようになった。
ずっとリボーンばかり見ていたせいか、いつの間にか授業が終わっていたようでオレの視界に邪魔な人影がまじり始める。
リボーンの周りは常に女子やら女子やら、女子やらがバリケードを作っていて、授業中でもないと彼をマジマジと見ることなんて出来ないのだ。
休み時間なんてなければいいのにと、授業も碌に受けていないオレが苛々と足をバタつかせていると、左右から同時に声が掛った。

「ツーナ!」

「沢田さん!!」

この場合左右のどちらかを向いてはいけない。そうすると喧嘩が始まるからだ。
いつものように前だけを向いて2人が前に回り込むまで待つ。
すると即座にリボーンとオレとを結ぶ視界が塞がれた。

「えーと、どうかした?」

もう少し見ていたかったなぁとボヤきながら、それでも親友2人に顔を向ける。

「どうしたじゃありません。もう昼休みですよ!お食事に行きましょう!」

どうして君はいつもオレにだけ敬語なんだとはもう聞かない。獄寺くんには獄寺くんの理由があるからだ。
オレにはちっとも理解できないけれど。
そんな獄寺くんの言葉に頷くと、今度は山本がオレの腕を引っ張り上げる。

「今日はいい天気だぜ?久しぶりに外で食おう!」

と笑う学校のヒーローに反論出来なかったオレは、母さんの用意してくれた弁当を片手で掴むと導かれるままに教室を後にした。



5日ぶりの外での弁当は人気のない裏庭の木陰になるベンチの上だった。
人気がないのも当然で、秋とはいえ日中は30℃を越えている。
いい加減に涼しくなれと愚痴る獄寺くんの横で、オレは開けたままの弁当箱に箸もつけずに眺めるだけだ。
こんなことでは成長が止まってしまうかもしれない。
お世辞にも大きいとは言えないオレは、この2人と一緒にいれば埋もれてしまいそうなほどひょろりとしている。リボーンと比べたら尚更小さく見えるだろう。
分かっていても、食欲は湧いてこない。
恋煩いがこんなに辛いとは思ってもみなかった。
胸がいっぱいで、何をしても、何を考えてもリボーンのことしか思い付かない。
はぁ……と切ないため息を吐き出したオレを、山本は伺うように声を掛けてきた。

「あー……、ツナさ。ここんとこ弁当食べてねーけど大丈夫か?」

「ん、平気」

「ってか、食事まともに摂ってるか?」

訊かれてここしばらくの食事を遡ってみた。

「あ、れ?いつから食べてないんだっけ?」

食事も喉を通らないほどだったことに自分で驚いていると、獄寺くんと山本が慌てた様子でにじり寄ってきた。

「精神的なことですか?それとも沢田さんに喧嘩を売るヤツでもいるんですか?そんなヤツはオレがシメてきます!」

「やっぱなー道理で顔色が悪いわけだ。どっか悪いのか?」

心配してくれる彼らには悪いが、あまりに的外れな問い掛けにプッと吹き出した。

「違うよ、どっちも違う。そうじゃなくて……その、夢の話なんだ」

「夢?」

聞き返す山本と、先を促すようにオレを見詰める獄寺くんにぎこちなく笑い掛ける。
恥ずかしいから言わないつもりでいたのだが、心配性の彼らには説明した方がいいのかもしれない。
どうしたら伝わるのかと迷いながらも口を開いた。

「夢、なんだけど夢じゃないっていうか……未来に飛ぶんだ」

ああ、きっと山本と獄寺くんはオレの頭がおかしいと思っているに違いない。
だけど本当にオレは夢の中で未来に飛んでいるのだ。

「その夢でさ、リボーンとオレが結婚してるんだ」

ピキリと固まった2人に、ここで止めた2度と離せなくなると意を決して話を続けていく。

「オレが妻でね、リボーンが旦那さんで……それで、いつも仲好くてさ。大事にしてくれて、オレ幸せなんだ」

頬が赤くなっていく自覚はある。言っていて自分でも恥ずかしい。
だけどここからが大事なところだと顔を上げると、山本がオレの手を握り締めた。

「騙されてるんじゃねーの?」

「は?いや、夢の中だし。っていうか、未来のことだし」

真剣な顔で言い募る山本に首を傾げていると、今度は獄寺くんがオレの肩を掴んで引き寄せた。

「……それで、どうして夢が未来だと分かるんですか?」

眉を寄せ睨むようにオレに顔を寄せる獄寺くんに、目を見開いて続ける。

「それがさ、これから起こることが分かるんだ。たとえば体育祭でうちのクラスが優勝する。でも隣のクラスの方が足が速いヤツが多いだろ?普通ありえない。なのにその夢で隣のクラスの陸上部のヤツが怪我をして欠場するって過去のこととして知ってしまうんだ」

だからオレの夢は夢じゃないと力説すると、獄寺くんは脱力したように息を吐き出した。

「沢田さん、それはたまたまです」

「え!違うよ!」

「違わないって。偶然、偶然」

「そんな!」

2人揃ってとり合ってもくれないことに、段々腹が立ってきた。

「本当に未来のオレはリボーンの妻になるんだって!」

そう大声で叫んでいれば、校舎の4階から誰かが顔を出した。

「なんだ?今、誰かオレの名前を叫んでたか?」

見上げればリボーンがこちらを覗いている。
聞かれたと思った瞬間、ベンチの裏へ逃げ込んだ。

「なんでもねーよ!気にすんな!」

山本がいつもの気さくさでとぼけた返事をしてしまう。
それにホッとしつつも、少しだけ恨みがましい気持ちになった。

「そうか?なら後ろに逃げ隠れたヤツによろしくな」

バレていたのかとビクついていると、リボーンはオレのことなんて気にした様子もなく取り巻きの女子を引き連れて窓から離れていった。

「……沢田さん?」

プルプルと震えるオレに、獄寺くんが恐る恐る手を伸ばしてくる。
その手を払うと、消えて行った窓に向かって声を上げた。

「絶ッッ対、お前の妻になってみせるんだからなっ!」

それを聞いていた山本と獄寺くんは、深いため息を吐いたのだった。







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