小ネタ | ナノ







2014/08/25 11:09



あなたは『好きな食べものがコロコロ変わる』ツナのことを妄想してみてください。 http://shindanmaker.com/450823


夏休みもあと残り一日となった日曜日の午後。
予想通りというか、懲りないというか。
そこがツナがツナたる所以ともいうのか、予想通りに夏休みの勉強に追われている姿を目の端に入れながらオレは昼寝をしていた。
ただでさえ休みがちだった一学期だというのに、よくもまあ昨日まで呑気にしていられたものだ。
夏休みは長いから大丈夫だと余裕をかましていたらこれだ。
頼みの綱の獄寺はといえば、まあ当たり前だが宿題など提出する気などない。不良を気取っているというより、宿題など簡単でかったるいのだろう。
そちらの意味ではツナとは出来が違う。
もう一人のツナの親友の山本は、同じく昨日夏休みが終わることに気付いたところらしく追い込みだと電話で話していた。
という訳でツナは一人、こうして宿題に追われている。

「もーっ!終らないっっ!!」

昨日から寝ていないためか、目の下にうっすらと隈が出来ていた。
その隈を見て鼻で笑いながらも声を掛けた。

「あとどのくらい残ってんだ?」

顔を隠していた帽子をひょいと手に取り、顔を横に向けてベッドの上から覗き込んだ。
見れば下手くそな絵は完成していたが、感想文は一枚がギリギリ埋まっている程度、ドリルに至っては半分も終っていない。
大きなため息を吐いていると、ツナは眠そうに目を擦りながらドリルから顔を上げた。

「かき氷、食べたい」

「はぁ?」

何をいきなり、と思いつつも、時計を見上げれば3時のおやつが迫っている。
今日は残暑が厳しいせいでエアコンのないツナの部屋は蒸し風呂状態だ。
フム……と少し考え込んでから、寝ていたベッドから起き上がると空けっ放しの部屋のドアから顔を出した。

「ママン!今日のおやつは何だ?」

そう聞こえるように大声で下の階にいるママンに訊ねると、少し間をおいてからママンの困ったような返事があった。

「そうねぇ……どうしましょう」

いくら子ども好きのママンとはいえ、こうも暑いと作る気も起らないのだろう。
ならばと部屋から足を踏み出すと、虚ろな目でドリルを見詰めているツナへと視線を向けてから階段をくだっていった。
今日はビアンキがいない。
イーピンを連れて女の買い物とやらをしているらしい。
ママンも一緒にと誘われていたが、夕方から近所の主婦で集まりがあるらしく、もうすぐ出掛けるのだと言っている。
どこをほっつき歩いているのかランボも見えず、オレとツナとママンしかいない沢田家は蝉の鳴き声しか聞こえない。
そこに氷を削る音が響く。
別にツナが食べたいと言ったからではない。
ちょうどオレも食べたくなっただけだ。
そう言うとママンはそうよねと含み笑いをしながら、かき氷の入った器を2つお盆に乗せて2階へと上がっていく。

「ツッくーん?あらあら……今年は頑張ってるじゃない!」

オレがいなかった去年までの堕落ぶりを想像させる言葉に目を瞑りつつ、居眠り一歩手前の船を漕いでいたツナの頭に蹴りを入れてやる。

「ぃ……っつ!痛いって!」

恨めし気にオレを睨んできらツナの前にピンク色のかき氷を置いたママンはメッ!とツナを叱る。

「もう、せっかくリボーン君がツッ君のためにかき氷を作ってくれたのに……食べないのかしら?」

「へっ?」

目の前に置かれたピンクの山と、仁王立ちするオレ様の顔とを交互に見比べていたツナは、バカみたいにポカンと口をあけて固まった。

「…………なんか、雪でも降りそう」

「んなもん降るか、バカ」

ママンにバラされてしまったバツの悪さから、そう悪態を吐いていると、ママンはふふっと笑い声だけ残して部屋から出ていった。
残されたオレは、延々と馬鹿面を晒しているツナに腹が立ってきた。

「いい加減に喰え。溶けちまうだろ」

「え、あぁ……うん」

ツナのせいで少し溶けてしまったレモン氷にスプーンを入れると、ツナも慌てた様子でいちご氷に口をつけた。

「冷たっ!甘っ!」

やっと普段のツナらしい単調な頭の悪いリポーターのごとき感想を零したことに安堵のため息が零れる。
それをツナには悟られないようにしながら、黄色く染まった氷を口に含んだ。
どうやらツナの部屋の外壁に蝉がとまったのか、いきなり煩く鳴き始める。
その声を聞きながら無言で氷を食べ進めていれば、下からママンの声が沈黙を遮った。

「ツナー!リボーン君ー?お母さん、ちょっと出掛けるから。夕飯は支度してあるし、もうすぐビアンキちゃんも帰ってくると思うけど、留守番をお願いね?」

「ふぁーい!」

がっつき過ぎたツナが間抜けな返事をして、それを鼻で笑うとツナを急かせて玄関まで向かわせる。
支度を終えたママンが玄関扉に手を掛けたところでどうにか間に合った。

「……いってらっしゃい」

思春期真っ盛りなツナの、少し恥ずかしそうな送り出しにママンは頬を緩めるだけの笑顔を見せるとオレにちらりと目配せをした。
よろしくねとママンの声が聞こえた気がして、鷹揚に頷く。
さすが家光の嫁というべきが、どこまで分かっているのだろうか。ひょっとしたら全部分かっているのかもしれない。
いや、まさかな。
すぐに視線をオレからツナへと向けると、ママンはわざとらしいほど噛んで含めるように声に出した。

「いい?リボーン君は小さい子なんだから、ツッ君が面倒みてあげるのよ?」

「んなっ!こいつはそんな可愛げなんて……っ!」

反抗的な態度を取るツナの後頭部に蹴りを一発入れてやるも、頑丈なツナは蹲るだけで倒れもしない。
物覚えは悪いが、身体で覚えたことは忘れないツナに呆れてため息を吐くと、ママンは腕時計を見て目を丸くした。

「もうこんな時間!遅れちゃうわ!それじゃあ、よろしくね」

ああとうん、という2重奏の返事に見送られたママンは駆け足で玄関扉の向こうへと消えて行った。
パタンと閉まった扉の向こうから門扉の閉まる音が聞こえる。
置いていかれた子犬みたいに玄関扉を見詰めていたツナは、それを横目で見ていたオレの視線に気付いて顔を背けると身体を翻した。

「かき氷食べたら、しょっぱいお菓子も食べたくならない?!」

気を紛らわせるように声を上げるツナは、いそいそとキッチンへと足を運ぶ。
せんべいやポテチが置かれている戸棚に手を掛けたツナは、思い付いたように棚から顔を上げると、冷蔵庫の扉の前に移動した。

「そういえば、昨日ゼリー作ってたよな」

せんべいの袋を片手に冷蔵庫を漁るツナは、先ほどまでの寝不足による気だるさもどこかに置き去りにしたかのようにいきいきとしている。
その背中にいらっときた。

「ツナ」

言うと冷蔵庫に顔を突っ込んでいたツナの背中の上に飛びあがる。
ママンに頼まれちまったからだと言い訳をしてから、懐に手を忍ばせた。
カチャという冷たい金属音にツナの動きが止まる。

「いいか?ツナ。今ここでゼリーとせんべいを取るか、それとも2階にあるかき氷の残りを取るか……選べ」

「選べって、もうかき氷溶け……いえ、ナンデモアリマセン!」

せんべいの袋を放り出したツナは、オレを背中に乗せたままとぼとぼと2階の部屋へと戻っていったのだった。



リボーン先生の食育教室〜おわり〜






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