2013/12/02 09:34
15才×9才の設定で受が片想いしているリボツナの、漫画または小説を書きます。
というお題で以前書いた小話です。
ほわほわした茶色い髪が門扉の向こうに見えた。
またかというため息を聞こえるように漏らし、玄関の扉に鍵を掛けると足早にその前を通り過ぎる。
ガシャンと後ろ手に門を閉め、茶色い物体を見なかったことにして横を向いたまま歩き出す。
その横を向いた視界の先に回りこんできた茶色い髪は主張するようにぴょんと跳ねた。
「おはよう、リボーン!」
年相応というには少しばかり小さい身体を腕を広げることで必死に視界に入ろうとしている。
健気というか、ムダというか、将来が心配になるのはオレが常識人だからに違いない。
視線を下げることでようやくこいつの存在が確認できるぐらい身長が違う。
当たり前だ。この茶色い髪の生き物は、もうすぐ10歳になるが今はまだ9歳の小学生男児なのだ。
ちなみにオレは5ヶ月前に高校入学を果たし、両手では足りないほどの彼女がいる女が放っておかないイイ男だ。
それが何故こんなちんちくりんの小学生男児に朝から付き纏われているのかといえば、少々込み入った事情がある。
話せば長くなるので割愛するが、こいつの母親をこいつごと助けたせいで懐かれてしまった。
女性を助けることは男の務めとはいえ、どうしてこいつも助けてしまったのか今では自分でも理解できない謎の一つだ。
そんなことはどうでもいい。
ともかく、最初はただ懐かれたのだと思っていたそれがまさかこんなことになろうとは誰が予想出来ただろうか。
今日も男にしては随分と大きな瞳をキラキラと輝かせているツナに挨拶を返す。
「ああ、おはようだぞツナ。で、今日は何の用事だ?」
毎朝、毎朝懲りもせず繰り返される問答だが小学生相手に無視することも出来ない。
これが同級生なり年上だとしたら二度とオレの前に立てないぐらいボコボコにしてやるところだが、いかんせんこのツナという名の小学生男児は小さくて幼い。
だからすぐに飽きるさと言い聞かせて早3ヶ月が過ぎようとしていた。
「あのね!今日は学校が終わったら時間ある?」
これもお決まりの台詞だ。
時間なんざねぇ!と言ってしまいたいところだが、大きな瞳が期待と不安で揺れているところを見るといかなオレでも切り捨てられない。
ぐっと息を飲んで断りの言葉を探していれば、後ろから本人と同じぐらい自己主張が激しい声が聞こえてきた。
「おはようだ、コラ!」
「あ!コロネロさん!」
ムカつくことにオレよりほんの少しだけ背が高いこの筋肉バカをコロネロと言った。
ただの腐れ縁だ。
訳知り顔でオレとツナに近付いてくるが、てめぇなんぞに用はない。
早く立ち去れと睨みつけても、知らぬ顔でコロネロはツナの横に並んだ。
「おはよう。今日は朝錬はない日なの?」
親しげに会話を交わすコロネロとツナに眉間の皺が深くなっていく。
「そうだ。ついでにな、こいつも今日は予定なんてねーぜ!」
「……え?」
勝手に答えたコロネロの横で、ツナは嬉しそうに顔を綻ばせている。
こんな顔を見せられては断れない。
チッと舌打ちを零しつつも、コロネロからオレへと視線が戻ってきたツナに満更でもない自分に気付く。
「本当?」
不安げに訊ねてくるツナに、オレがああと頷く前にコロネロがまたも口を挟んだ。
「本当だぜ!昨日女と別れたばっかりだからな!」
どうしてこいつがそんなことを知っているのかといえば、昨日の帰りにこいつの前でフッてきたからだ。
二股を掛けるつもりだったのか、それとも前の男なのか知らないが、そいつがオレに別れろと迫ってきた。
くだらない茶番に付き合いきれないと別れを切り出したオレに、女とその男は憤慨していたが意味が分からない。
縋りつく女を男に渡したところで、部活帰りのこいつと鉢合わせたという訳だ。
言い訳も何もないと無視しておいたことが今更悔やまれる。
コロネロの言っている意味が分からなかったのか、ツナは困ったような顔でオレとコロネロを交互に見詰めた。
「……本当だぞ」
仕方なくそう答えると、ツナは高揚したのか頬を赤くしながらにじり寄ってきた。
「じゃあ今日、ウチにお茶しに来てよ!母さんもリボーンに会いたいって言ってたし!」
ね!と制服の端を握られて詰め寄られた。
そんなオレとツナを見るコロネロはニヤニヤといけ好かない顔で笑っている。
嫌だと言えないオレは、ため息を吐きつつも首を縦に振る。
「あぁ、分かった。今日の夕方だな」
言うと全身で喜びを現したように両手を広げて飛び跳ねた。
「ぜったいだよ!絶対だからね!!?」
ぴょんぴょんと飛び跳ねつつも学校へと駆け出していったツナの背中に苦笑いを浮かべて手を振る。
遠くからリボーン大好き!と声が聞こえてくるから肩を竦めた。
それを黙って見ていたコロネロがボソリと呟く。
「お前、ツナが本命じゃねぇのか?」
「ああ?んなことあるか、この脳筋バカが」
気まぐれだと嘯きながらも、歩き出した。
おわり