[> 理不尽に |
理不尽。そうだ理不尽だ。 理不尽にこんな能力を手に入れちまったアタシは理不尽に相手の傷を開く。アイツは理不尽に傷を押し付ける。 理不尽なんだ、理不尽なんだよこんなの、何もかもが。 【理不尽】 「志布志さんも、一緒に?」 「ああ、そうみてぇだな」 「それはなにより。素敵な素敵な相性の良い、いや、悪いクラスメイトは学園生活をより豊か、貧しいものにしますから」 ニコッと蝶ヶ先は笑う。 何と無くイラッとした志布志はたまたま持っていた釘バットで蝶ヶ先を殴打した。 しかしやっぱり蝶ヶ先は無傷で、やっぱり志布志に笑い掛ける。 自分の付けた傷は蝶ヶ先を素通りして誰かに行くのだ。 それは、何だかとても―――とても、つまらない。 例え志布志が致死武器で蝶ヶ先の傷と言う古傷を開こうとしてもこいつにはその古傷がそもそも存在しない。 そうなれば自分が超える事の出来ない圧倒的な存在の完成だ。 ――腹が立つ。腹が立つ腹が立つ。腹が立つ腹が立つ腹が立つ腹が立つ! いくら地団駄踏もうが泣こうが喚こうがこいつに自分は傷一つつけられない。 理不尽だ。 志布志は言った。 「アタシは、アンタに傷を付けたい。アンタに痛がって貰いたい」 しかし蝶ヶ先は意味不明とばかりに眉根を寄せる。 わかれよ、理由もなく理不尽な事を志布志は言う。 だけどすぐに違うと言った。理由はあるんだ。あるはずなんだと頭を振る。 「えっと、アタシはアタシだけがアンタを傷つけれてアタシだけがアンタを殴れてアタシだけがアンタを汚して穢して……殺せるようになりたい」 そう言って、次にはまた、違うそうじゃないと口を噤む。 違う違う尽くしの志布志に、蝶ヶ先は少し困ったような顔をしている。 「志布志さんは、」 口を開く。 「どうしたいんですか?」 「知らねえよ」 ふんっ、と即答する志布志に、蝶ヶ先はそっと首を捻った。 「私は、私に志布志さん"だけ"を作れば良いんでしょうか?」 「え、」 今度は志布志も首を捻る。 そうなのだろうか、と暫く考えて首を振る。―――この感情がそんな簡単な、プラスな感情な訳無い。もっと複雑で、もやもやしていて、どろどろしていて、殺意に近いもの。 そんな志布志には構わず蝶ヶ先は続ける。 「志布志さんに無抵抗で殴られる―――その暴力に甘んじるのは私だけと言うことで私は満足なのですが、それでも志布志さんが足りないと言うなら―――」 蝶ヶ先は笑う。 途端、志布志はえもいえぬ気持ちになった。 さっきよりもっとどろどろして、痛くて、少しだけ、切ない。 「――ッな、何だよっこれ!」 「私の、志布志さんに対する気持ちを"半分だけ"押し付けてみました。どうでしょう、わかって頂けたでしょうか。志布志さんのストレスの正体ですけど……」 「んだよ、わかんねぇよ。もっとわかんねぇ、何だよこれ!何なんだよ!」 泣きながら志布志は言う。でも志布志はどうして自分が泣いているのかが解らない。理不尽、と呟いた。 蝶ヶ先は相変わらず、笑っている。笑いながら近付いて、志布志の頬に口づける。それから瞼、唇。 「………なっ…!」 「こういう事だと思いますよ、志布志さんの気持ち。私と、同じなら」 まだポカンと口を開けている志布志に蝶ヶ先は言う。 「いいじゃないですか、素敵で最悪なコンビ。好きとか愛がプラスな感情だとするなら私達はマイナスに狂愛ですかね」 にこっと蝶ヶ先は笑う。 ―――ムカつく、志布志は言って蝶ヶ先を殴った。 「まだ、押し付けんなよ、誰にも押し付けんな。アタシは意地でも致死武器の、マイナスの名に掛けて、お前をぼっこぼこにして、治りかけた傷と言う傷を開いてやる」 そう言って蝶ヶ先に噛み付く。 咥内が切れているのか血の味がした。傷を探り出して刔るように舌を押し付ける。数瞬後、傷は消え去った。 「恋人同士には主導権と言うものが付き物です。ここは、主導権の奪い合いと行きませんか?」 「……そうだな」 「ああそうそう、志布志さん。私が意図して自らの手で傷付けるのは貴女だけですよ」 「はっ、気持ち悪い愛だな! 狂うほど好きだぜ、アタシはアンタを殺したいくらい好きだ!」 「私も好きです、理不尽に傷つけて傷つけて傷だらけになるまで愛して上げます!」 終ったら血の味のするキスをしましょうね。 蝶ヶ先は言って、志布志は笑った。 ――――― ど う し て こ う な っ た !/(^o^)\(^O^)/(^o^)\ えっと、蝶ヶ先と志布志くっつけ、くっつけよ!ってなって、自給自足しようとして、オチが迷子になってあああここだ!オチ迷子のせいだ!帰ってこいオチ! つかこのCPって誰得? Yes俺得!マイナー万歳! 結局キスさせたいだけじゃん!と言うあなたへ でもこの二人絶対付き合ってるよ…(ボソッ :)H23.04.05 :)迅明 Novel Top |