[> 指切り |
物語には起承転結が有るそうです。 すると私は今どのくらいの位置にいるのでしょうか? *** 『ほーんっと本当!すっげぇおもしろいのなんの、終始画面に釘付け!ロマンスロマンス目茶苦茶ロマンス!なっちんも見に行けよ、本当面白いんだから、なっ!』 そう電話の向こうでキャッキャッと話すミクロちゃんは、春夢さんと見に行ったと言う映画の内容を一生懸命に語って来ます。 春夢さんと言うのはミクロちゃんのご主人さんで彼氏さん、雅成さんの同級生で、お友達の方です。 優しいし、背が高くて男らしい良い方だといつも思いますがそれを言うと雅成さんがしょんぼりするので私は思うだけに留めています。 ミクロちゃん曰く『愛だねぇ』だそうですがイマイチわかりません。 そう言うミクロちゃんも春夢さんの前で、雅成さんの事を褒めないのは愛なのでしょう。 何はともあれ、ミクロちゃんとの電話を終えるころには私もすっかりその映画の虜でした。 どうしても見たくて堪らず、雅成さんにちょっとだけお願いしてみる事にしたのでした。 「雅成さん……今日は何か予定とか、ありますか? お暇でしたら一緒に映画とか――」 私が言い切る前に雅成さんはバンッ!と机を叩いて立ち上がり私の手を握りしめました。 「ないないないない、予定なんてないよ!今無くなった!!いや、元からない!春夢の阿呆と追試の掛かったテストの勉強会とか約束してないし」 「春夢さんとお約束してたんですか?」 「ううん!してないよ!ぜんっぜんしてないよ!」 「でもテストって大事なんじゃないんですか? 私もし、私のせいで雅成さんが大変な目にあったら悲しいです……」 ふと、雅成さんの悲しそうな顔を思い出しました。 もうあんな表情にはなって欲しくないです。 しかし、雅成さんは明るい声で言います。 「大丈夫!全教科満点取って見せるから!夏にも見せてあげるから!!約束だ!」 そう言って、雅成さんは小指を私に突き付けました。 その行動の意味が解らず、私は首を傾げてしまいました。 「……私はどうすれば良いんでしょうか?」 「あっ、そうか、まだ教えてなかったけど、これはね“指切り”と言って、約束するときにやるんだ」 そう言って、雅成さんは私の小指に自分の小指を絡めました。 「ゆーびきーりげんまん、うーそついたらはーり千本のーます、ゆーびきった!ね、簡単だろ?」 雅成さんはにっこりと笑って指を解きました。 何だか指を離した所がぽかぽかしていて心地好いです。 「雅成さん、もう一回やって貰っても良いですか?」 「ん? 良いよ」 私の我が儘にもちゃんと付き合ってくれる、雅成さんはいい人なんだと思います。 その後、私と雅成さんは三回も指切りをやりました。 私も一生懸命歌を覚えましたし、雅成さんは一つ一つ丁寧に動作を教えてくれました。 そのあと行った映画はミクロちゃんの言った通り面白くて、見終わった後、感想を言いながら、私と雅成さんは手を繋いで夜道を歩きました。 お月さまが綺麗でした。 お星さまはあんまり見えませんでした。 少し残念だなぁ、と思っていると、雅成さんがお金が入ったら山に行って星を見に行こうと言ってくれました。 その後、また指切りをしました。 「指切りって良いですね、幸せです」 そう言ったら、雅成さんはそうだね、素敵だねと笑ってくれました。 雅成さんの方が素敵です、と言うと耳まで真っ赤になっていました。 ……雅成さんは面白いです。 *** 後日談と言うものですが、雅成さんは満点のテストを4枚私に見せてくれました。 ついでに学科トップと言うものも勝ち取ったそうで。 雅成さんはちゃんと約束を守ってくれたのです。 その後、ミクロちゃんに聞いたのですが、どうやら春夢さんは全部『えらいこっちゃ!』な点数だったそうです。 今度、雅成さんのお家に泊まりがけでお勉強しに来るそうです。 ミクロちゃんも来るみたいなのですっごく楽しみです。 二人でもぐもぐとクレープを食べていたら、急にミクロちゃんは思い出したようにいいました。 「あっ、それでさ。春夢の奴『雅成の馬鹿がドタキャンしやがったせいだ!』とか何とか叫んでたけど何だったんだろうな」 「……? ドタキャンって何なんでしょうか」 「さぁ? まっ、結果オーライだけどな!アタシは。なっちんの家に泊まれるしな。あ、アタシそろそろ帰るわ」 「はい、また明後日に。ミクロちゃん、お気をつけて」 「ういうい、バイバイ!なっちんもねー」 「はーい」 毎日楽しくって幸せだなぁ、と思いながら、私は帰路につきました。 明後日が楽しみです。 【指切り】終わり 何だか二人の方から有り難いお言葉を頂いて、俄然やる気の迅です 空回りしてますがw← さあ、次で阿呆二人が揃います どうでもいいですがこの二人は書いてる私が恥ずかしいです なんぞこれ H22.09.22 :)迅明 Novel Top |