01:親友 [ 1/3 ]


机の上の落書き、昨日も頑張って消したのになー…、とまた思った。
ため息しか出ない。
クラスメイトはにやにやしててうざったいったらないし。
ブンちゃんまだ部室から帰ってこないし。
忘れ物なんてすんなよ、ばか。
ありったけの下らない罵詈雑言を書いたんだろうな、よくできましたー、と言える落書きを無視して、席に着く。
反応が薄いのをよく思わなかったのか、飲みかけのサイダーをかけられた。
ここで重要なのはそれが飲みかけだという事だ。
まあ自分、仁王雅治は所謂潔癖症という奴なわけで。
飲みかけだとかプールだとか風呂だとか、飲めないし入れない。
そこで当然のごとく我がもの顔で胃液とか消化物が食道を逆流してくる。
あわててトイレに向かって、吐き出した。

「うぇ、」

便器に浮く吐瀉物を焦点の合わない目で見つめていると、バァン、といい大きな音によって浮遊していた意識が一瞬で現実に引き戻された。

「ハル!」

聞こえてきた声は、聞き慣れた親友の声。
部室から走ってきたのか、息が切れてしまっていた。

「ブンちゃ、」

「何、無理してんだよぃ…もう喋んな」

ぎゅう、と甘いグリーンアップルの匂いに包まれて、なんだか急に泣きたくなってしまった。
花の奥がじーん、として、ブンちゃんの制服を握り締めた。

「泣いたら、いいじゃねぇか」

ブンちゃんが俺を抱き締める力が強くなって、とうとう涙が溢れだした。

「なん、なして俺なん?俺何かしたん?のぅ、どうしたらええん?どうしたら楽になれるん…!?」

返事はなくて、かわりに抱き締められる力が強くなった。
それに彼なりの気遣いを感じてしまって、余計涙が出た。

「あんま、優しく、せんで、よ…」

優しくされると、甘えてしまって更に辛くなるから。
そういうと、ブンちゃんは悲しい顔して笑った。

「俺らテニス部レギュラーがおまえに優しくしないで、誰が優しくするんだよぃ?いいから、部室まで送るぜぃ」



部室に向かう途中、ブンちゃんはずっと俺の背中をさすっていて、不思議と辛さはなくなった。









[*prev] [next#]
top
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -