理想の共依存
「おじゃましまー、す」
仁王がうちにくるのは3度目だけれど、あいつは人の領域に入るのが、勿論自分の領域にはいられるのも嫌いだから、慣れないのかもしれない。
まあ、仁王の領域なんか知ったこっちゃないから、俺はどんどん突っ込むけれど。
だって、好きな人のことは知っていたいというのは当然でしょ。
「そんなに硬くなるなよ」
「んな事言ったって…仕方ないじゃろ」
「恋人、なんだからさ」
俺が苦笑いでそういうと、仁王は表情こそ変えないけれど、少し顔を赤らめて、うん、と頷いた。
「ふふ」
「なんよ」
「可愛いなぁ、ってさ」
可愛いって言うと、いつも仁王は不貞腐れる。
そこがまた、可愛いんだけれど。
「お茶か、コーヒーいる?」
そう問うと、仁王は首をゆっくり横に振った。
「ひ、一人にせんで」
滅多に“本当の”表情を崩さない仁王が、眉を寄せて、視線を彷徨わせているのを見て、俺はしまった、て思った。
忘れていた、完璧幸せボケしていた。
過呼吸になってしまった仁王を抱き締めて、背を擦った。
「ゆき、いなくなったら、おれ、」
「ごめんね、ごめん、一緒に居るから、ね」
そういうと安心したように強ばったからだの緊張を解いて、息を吐いた。
仁王は本当どこまでが詐欺なのか、分からない。
この仕草さえ詐欺かもしれない。信じられないなんて情けないけど、どれだけ探っても入っていっても、わからなかった。
だから、俺は詐欺も全部まとめて、愛してやる。
そうじゃないと、壊れてしまうだろうから。
彼を構築するものが、詐欺ならば、それを否定してしまえば、彼は。
「ずっと、一緒がいい」
仁王の肩を押し、顔を見ると、涙が一筋伝っていった。
それに触れようとすると、仁王はぱしんと俺の手を払った。
俺がうまく自体を飲み込めずにいると、仁王はごめん、と言った。
微妙な静寂がすぎて、仁王が口を開いた。
「汚いんじゃ」
そう言う仁王を無理やり押し倒す。
幸村、と声を漏らした仁王にキスをする。
角度を変えて、何度も何度も。
すると訳がわからずまた涙を流した仁王の顔を親指で捕えて、涙を舐める。
「、幸村!」
「なあ、仁王、怖がるなよ。俺はお前の事、詐欺ごと愛してやるから」
仁王は目をぱちぱちと瞬いて、意味わからん、と呟いた。
「だって恋人だろ?」
そういって笑った俺はちゃんと笑えていただろうか。
きっと眉尻は下がって、情けない顔をしているだろう。
でも仁王は、
「ありがとう」
そう言って笑った。
----------
リクエスト作品です。
甘、甘…
いや、めざしました
私の中ではすごくゲロ甘ですすみません
本当にすみません楽しかったです
必要ないかも知れませんがリクエストされた方のみお持ち帰りフリーです。