天の邪鬼


ドス、と重い音がした直後、俺は大きく咳き込んだ。
げほげほと繰り返すうちに呼吸困難になって、はぁはぁ、と息が荒くなる。
そんな俺を冷たい笑顔で見下ろす相手を、柳生を、俺は愛している。
一見おかしな関係だが、柳生を愛してる俺を柳生は愛しているから、矛盾なんてどこにもない。
むしろ典型的な少女漫画のようだ。

「私と居るのに考え事ですか」

「は、何が悲しくてお前さんの事なんて考えないけんの?」

柳生は無表情になって、薄く笑った俺をまた殴った。
その拳は綺麗に鳩尾に入って、俺はまた綺麗に倒れた。
また咳が出て、苦しくて、涙が出た。
意識が朦朧とするのを平手でうたれて、急速に冴えていく。
柳生は俺の首に手を掛けて、もう片方の手でズボンと下着を脱がせた。
いつもこの時、俺の熱は一気に冷めていく。
セックスは、気持ちいいが、吐き気がするし、大嫌いだ。
過度に相手に接触する行為、何が楽しいのか何がいいのか。
俺にはとうてい理解できない。
愛を確かめあう行為だとか言うが、セックスが愛を確かめあう行為ならばこの世に強姦や援交はない。
きっと愛を誓い合って、永遠を約束した者同士以外で、愛のあるセックスは成立しないのだろう。

「紳士、だなんて詐欺じゃよね、変態」

「…」

柳生は俺の言葉に返事はせず、自分でシて勃ちあがったモノを慣らしもせずに穿った。
ギチ、と痛々しい音がして、俺は太股を液体が伝っていくのを感じた。
穴が裂けて血でも出たんだろう。
ベンチの下を見ると、コンクリートの床が赤く染まっていた。
その様子を見て、経血みたいだ、って思った。
もし、俺が女子だったならばこんな目に遭わされずに済んだのだろうか。

「しんせ、な部室、でこんなことするなんて、随分、いい趣味してんじゃなぁっ?」

「黙ってください、萎える」

「は、ふのー、っ、に、なったらええ…!!」

柳生は顔を顰めて、首に掛けた手に力を込めた。
初めはただ閉塞感しか感じなかったけど、だんだん苦しくなってきて、頭がくらくらする。
そういえば、首しめると、ケツ締まるって言うっけ、気持ちいいのかな、柳生。
あー、今きっとみっともない顔してるんだろうなぁ、とか、心の中では思っているけど、体は様々な意味で素直だった。
死ぬんじゃないか、と思い始めたとき、手を緩められた。

「ぉえ、は、げほ、っげほごほ」
口の端を何かが伝っていく。
涎か、みっともない。
酸素に喘いでいたのも落ち着いてきて、力を抜く。
いつのまにか自分は達していて、苦しくされて達したのか、となかなかショックだった。
もぞ、と動くと、水の音がして、あ、中にだした、と思った。

「ふ、柳生。俺が孕んだりしたら責任とってくれんの?」

「…そもそも貴方に子供が出来るわけがないですが、まあその時は、赤子は責任持って育ててあげましょう」

「冷たいのぅ、柳生さん。帝王切開は柳生さんがしてくれるん?」

俺がそう言うと、柳生は眼鏡をくい、とあげて、俺を冷たく見た。

「ええ、勿論。しかし、縫合はしてあげませんよ」

「うわー、サイテー、雅治ちゃんかなしい」

ああそうだ、そういえば、心はもうとっくに裂かれているけど、縫合してもらってないな、そんな事を考えながら、後処理もせずに部室を出ていく柳生の背から目を反らし、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、泣いた。













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初リクエスト作品でした。
適度に短い文がかけません…
これは、短すぎるかな。
柳生が下衆な82ということで、下衆好きなな子にはとても嬉しいリクエストでした、ふふ
そんなお前が下衆だとよく言われますが、現実、実際にしたりしないので、そんな事ありませんよ
改めて、リクエストありがとうございました。

※尚、リクエストされた方に限りお持ち帰り自由です



  
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