現パロ。完全に日本式バレンタイン。
大学生設定
バレンタインは手作りチョコをみんなに渡そうと決めていた。
みんな、の中には私の好きな人も含まれている。みんなに同じものを渡せば、おちゃらけた様で勘の鋭いジョセフもさすがに気付かないだろう。手作りチョコをジョセフに食べてほしかった私の気持ちには。
でも、売り物のチョコを見ちゃうと、既製品の方がもらって嬉しいんじゃないかなぁ、なんて自信がなくなってくる。
バレンタイン特設催事場。チョコ作りの材料を買いに来たついでに見る所じゃなかったなぁ・・・
若干気落ちしながらも可愛らしいパッケージに手を伸ばした。
「俺コレがい〜なァ〜」
「?!」
突然後ろから長い腕が伸びてきたかと思うと、私が手を伸ばした商品の近くにあったチョコのアソートがヒョイと持ち上げられた。こ、この声・・・!
「ジョセフ!」
「ハァイ、ジョセフくんよん♪」
ニッと笑って私の隣に並んだのは紛れもなくジョセフだった。
「な、何でここに?!」
「ジョセフくんだってチョコが好きなんですゥー。バレンタインとはいえ男が来ちゃダメなんて決まりはねぇだろ?」
「それはそうだけど・・・」
よく入って来れたなこの女性ばかりのコーナーに・・・!ジョセフ背高いし体格いいし間違いなく目立ってたよ!!チョコに集中してて気づかなかったけど!!
「で?」
「え?」
「もっちろん、優し〜いシヨリちゃんは俺にくれる予定なのよねン?チョ・コ・レ・エ・ト!」
「!」
ジョセフが手に持ったチョコをヒラヒラと振りながら聞いてくる。
「う、うん・・・あげる予定だったけど・・・」
「えっマジで?!」
うれピー!とはしゃぎながらもすぐ「あ、コレもうまそうだな」と他のチョコの物色も始めるジョセフに、何だか複雑な気持ちになる。
「やっぱり・・・」
「ン?」
「やっぱり、既製品の方がいい?綺麗だし、美味しいのは間違いないだろうし・・・」
手に取ったチョコレートに目を落とす。うん、ラッピングだってこんなに可愛く出来ない。
「手作りじゃ・・・」
そこまで言ってハッとした。私は何口走ってるんだ!これじゃ手作りをあげようと思ってました〜って言ってるようなものじゃん!!
まかり間違って私の気持ちとかバレてないよね?!
「シヨリ、」
「や!あ、えっとジョセフそのチョコ欲しいんだっけ?!良いよ、ジョセフにはそれプレゼントする、」
「いらねぇ」
えっ、とまた驚く。ジョセフ自らコレがいい、と言ってた商品なのに。私の提案を聞き終わる前に素早く断った。・・・どうして?
ジョセフの方を向くと、その手からチョコは放され、体は既にこっちを向いていた。私も慌てて向き直る。
「ジョセフ・・・?」
「手作りすんなら、俺に全部くれよ」
「え・・・」
「シヨリの手作り、他のヤローに食わせてたまるか」
「ヤローって・・・普通にみんなに渡すよ?」
「いやだ」
この流れで頑なに拒むのはやめてほしい。どう考えても都合のいいことしか浮かばないじゃないか。
「お前の手作りは全部俺のじゃなきゃいやだ」
ただの食い意地から言っているんじゃないということは、その真剣な表情でわかった。私は・・・期待、してもいいんだろうか?
「お、美味しくないかもしれないよ?」
「おう」
「真っ黒焦げかもよ?」
「おう」
「市販の方が良かったって、後悔するかもよ?」
「それはねーよ」
その言葉で、一つの仮説が確定に変わった気がした。両思い、なんだろうか。嬉しさと期待とで、視界が滲みはじめた。
「ほ、本命だよ・・・?」
念押しした言葉は、あり得ないほど震えていた。ドクドクと脈打つ心臓を押さえ、もうジョセフを見ていられずに下を向いた。あぁ、私は何だってこんなところで告白してるんだろう。私の片想いなんて、気付かれなくて良いと言っていたのはどこの誰だったか。
ジョセフは何も言わない。
もしかして、そんな風に言ったんじゃなかったかな。
急に怖くなって唇を噛み締めた。
その時。
「ーーーヴェリーナイスよシヨリちゃーん!!!」
「ぅわっ?!」
抱きしめられたと思ったら、視界が急に高くなった。ジョ、ジョセフに抱き上げられてる!?
「サイッコーのバレンタインだぜシヨリ!!」
「ジョセフ!降ろし・・・!」
「俺いっぱい食べるからさァ、愛情に比例してものすごくいっぱい作ってねン!」
抱き上げられて、周りの人が見てる中恥ずかしいんだけど、でも。
見下ろした先にいるジョセフがすごく嬉しそうだから。
「・・・うん!」
私も嬉しくなっちゃって、他のことなんて気にならなくなっちゃって。笑顔でひとつ返事をしたのだった。
ハッピー
フライング
バレンタイン!
結局その日は、友達用に市販のチョコを買って帰った。
手作りはジョセフだけになったからね!
*****
おまけ。
同日同場所同時間にて。
エリナ(若)「見てジョナサン!あそこにいるカップルの男性、ジョセフじゃないかしら?」
ジョナサン「本当だ!彼女を抱き上げて楽しそうだね!僕達もやる?」
エリナ「まぁジョナサンったら!いけないひと!」
スモーキー「・・・・・・」
実はデパートに入るシヨリを見かけ、連れ立っていたジョセフが後を追ってデパートに入ったので更に後を追ってきたスモーキーはバカップルどもに(精神的な意味で)四方を固められ、ジョセフに無断で帰ることにした。明日マルクにこの遣る瀬ない思いの丈を聞いてもらおうと決心しながら。
ーーー
20150212