小ネタより。つく子様のリクエスト。
「誰にも言えないけど身長が小さいのを気にしている女の子とジョセフ」





キスしやすい身長差、12cm。
セックスしやすい身長差、22cm。
ぎゅっとしやすい身長差、32cm・・・

ーーー理想のカップル身長差、15cm。



一番差があるのですら32cm・・・!あああああ(泣)!!



雑誌で得た情報を思い返し、悲観的になって歩いていると。


「おーこんなところにちょーどいい肘掛けがあるぜー!」


背後から急に、頭にのしっと乗せられた重み。


「やめないかJOJO!シニョリーナに腕を乗せるんじゃあない!」

「え〜?シニョリーナぁ〜?どこどこ〜?」

「いい加減にしろッ!」


バシンと振り落とされた頭部の重み。ちなみに今の会話は全て、私の頭上で交わされたものである。


「すまないシヨリ、大丈夫だったかい?」


そして私の前に回り、屈んだシーザーと目が合う。


「う、うん・・・大丈夫」

「あっら〜ン!シニョリーナってシヨリチャンのことだったのォ〜?ちっさ過ぎて気づかなかったぜ〜」


これはまた屈んだジョセフと目が合う。そう、屈んだ彼らとようやく目が合うのだ。


「だいたいJOJO!お前はいつもシヨリをからかい過ぎだ!特別デカいお前からしたら大抵の人間は小さいだろうが!!」

「だってぇ〜シヨリチャンが特別ちっさいんだもん♪」

「ガキかテメェは!!」


二人がスクッと立ち上がると、私はもう頭を後ろに大きく倒し見上げるしかない。ずっと見ていると、首が痛くなりそうだ。

もうおわかりだろう。私は身長が低い。ただでさえ普通の人より小さいのに、特に身長の高いこの二人が目の前にくると嫌でも身長に開きがあると思い知らされるのだ。

特段交流のない他人であれば私もこんなに気にすることはないんだけど・・・


「ごめんなシヨリ。コイツは人をからかって遊ぶクセがあるだけで、そこまで悪い奴じゃあないんだぜ?」

「はー?俺はいつだって超良い奴ですゥ〜!」

「お前は黙ってろ。・・・シヨリ?気を悪くしたか?」

「ううん・・・大丈夫、わかってるよ」



『なァに〜また脚立〜?そんなの使わなくったって俺がいるなら俺に頼めばいーじゃねぇか。ホラ』



からかいつつも、私が困っていたら必ず助けてくれる。そんなジョセフが悪い人だなんて、これっぽっちも思ってないよ。むしろ、私はーーー・・・。


背の特別高い彼に恋をして、私の昇華されつつあったコンプレックスが甦ることになってしまっただなんて、未だ誰にも話せていない。事実、普通の人より小さい私と普通の人より大きいジョセフは身長差が50cm近くある。並ぶと小人と巨人って言われてからかわれるから、私がジョセフのことを好き、なんて知られた日には「小人が巨人に恋してるってよ!」なんてきっと笑い話にしかならない・・・だから、誰にも言えない。背が小さいのを気にしてることも、ジョセフを好きなことも。少し悲しくなって、自然と俯く。

すると、優しく頭を撫でられた。顔を上げて確認すると。


「気にすることはないさ。JOJOも可愛らしい君を構いたくて仕方がないんだ」

「・・・うん、ありがとシーザー」


にっこり笑うシーザーに、流石、女性の扱いは御手の物だなぁと思い笑いながらお礼を返す。シーザーの女性に対する優しさには、よく救われることがある。だからモテるんだろうなぁと考えずにいられない。


「・・・・・・」


この時。私とシーザーの遣り取りを、遥か頭上から面白くなさそうに見下ろしていた視線には、気づけるはずもなく。







今のところ、私はジョセフにとって良くて友人、悪くてからかい甲斐のあるチビ、くらいの認識だろう。ジョセフに恋愛の対象として見てもらえないのは百も承知だ。だけど、ジョセフが好きで、真剣なんだってわかってもらいたくて。私はひとつ決めたことがある。それは、身長を5cm伸ばしてジョセフに告白すること!5cm伸びたところでジョセフとの距離は大して変わらないけど、少しでも距離を縮めたくて頑張って5cm伸ばしたんだよ!と伝えたらジョセフも少しは私のことを見直してくれるかもしれない。周りもきっと頑張ったんだな、くらいには思てくれるはず!不言実行。私はそう決めた日から身長を伸ばすことに繋がる飲み物食べ物の摂取とストレッチに余念がない。

今日も密かに紙パックの牛乳500mlを持って中庭のベンチに移動する。中庭は人気も無いし緑があって落ち着くし、内緒で何かするには打って付けの場所だ。辺りに人がいないのを確認して、ベンチに腰掛ける。そして紙パックの口を開け、いざ飲もうとすると。


「ハーイ没取〜」


という声と同時に、背後から牛乳パックを取り上げられてしまった。振り向くと案の定。


「ジョセフ!いつからそこに・・・!」

「俺の方が先に居ましたー。そこの影で寝てるの気づかなかっただろ?」

「寝てたの?!」


そうか・・・いくら巨体でも、草影に寝転べばここからじゃ隠れて見えないもんね・・・!


「気づかなかった・・・!それよりそれ返して!!」

「ん〜?や〜だね!お前最近牛乳ばっか飲んでるじゃねぇか。なァに〜おチビちゃん身長伸ばしたいのォ〜?」


ニヤニヤと笑い牛乳パックを軽く横に振ってみせるジョセフ。隠れて飲んでたはずなのに何で知ってるの?!


「べ、別に・・・健康に良いから飲んでただけだし・・・!」

「はいウッソー。お前嘘つく時自分じゃ気付かねぇかもしんねーけど顔赤くなんだよな」

「え?!嘘・・・!」


思わず頬に触れて確認するが。


「おー、嘘だぜ」

「えっ?」

「顔赤くなるっつーのは嘘。でも健康の為に飲んでるって嘘はホントみたいねン」

「!!」


は、はめられた・・・!私はぐうの音も出ずにジョセフを睨むことしか出来なかった。


「で?お前身長伸ばしたいのかよ」

「う・・・うん・・・」

「なんで」


ジョセフの言葉はどこまでも直球だ。言ってしまおうか。ジョセフとの距離が縮まれば良いと思って飲んでいると。・・・いや、言える訳がない。だってまだ私の真剣さを表明する為に伸ばそうとしている身長は、1cmだって変わってないんだから!私は開こうとした口を噤んだ。

あぁでも、名前を伏せれば良いかもしれない。そうだ、これを私なりの宣戦布告にしておけば・・・!

私は俯きがちだった顔を上げ、キッと強気にジョセフを見た。


「す、好きな人が背、高くて!だから少しでも身長差埋めたくて飲んでるの・・・!」


言った・・・!これで5cm伸びた暁には、好きな人ってジョセフだったんだよって言って、私が頑張ってるところは理解してもらえるはずだよね!!そう思いながら、私はジョセフの反応を待つ。

すると。


「ッハ〜?無駄無駄無駄!ちっさいお前がちょっと伸びたくらいじゃ何にも変わんねぇよ、無駄無駄!」


すごい無駄って連呼された・・・!だけど私もここで引く訳にいかない。私にとって5cmは、ジョセフに近付く第一歩なんだから!!


「無駄じゃない!!絶対無駄じゃない!!私、絶対身長伸ばして・・・!」


アンタに告白してやるんだから!!とは言えないけど。


「・・・とにかく!それ返して!!」


先程からジョセフに奪われたままの牛乳をそろそろ返してもらいたい。見上げるとジョセフは何の表情もないままこちらを見下ろしていた。普段感情豊かなジョセフなだけに、どこか冷たい印象を受け少しだけ身体が強張る。


「ーーーやめろって」


言いながら私の前に移動してきてどこか不機嫌な表情をしたジョセフは、


「お前が小さいの、からかうの好きなんだから」


言い終わるとポイッと牛乳パックを放り投げた。


「あ・・・!何するの!!ーーーうわあっ?!」


立ち上がり急いで拾おうとしたけど、素早くジョセフに両脇に手を差し込まれ。まるで高い高いのような状態で持ち上げられた。ちょうど、ジョセフと同じ視線の高さくらいに。真向かいのジョセフと目が合い、心臓が大袈裟に反応し、触れられている事を急に意識してしまう。顔が熱くなって、このままじゃまだ隠し通していたいことがダダ漏れになりそうで。恥ずかしさを誤摩化すためにも、私は暴れた。


「な!何すんの下ろして!!」


必死に足をばたつかせてみるけど、虚しく宙を切るだけでビクともしない。同時に、実際にはこんなに身長差があるんだって、数字以外で思い知らされてまた悔しくなる。無駄って言われたけど、それはやっぱり否定できない事実なのかもしれない。


「お前、身長高い男が好きなんだろ?」

「え?!いや、好きな人が身長高いの!」

「似たよーなモンだろ」


似てないよ!!身長の低い私としては逆に背の低めな男の人の方が良かったなぁと思うのに!!なんでこんな規格外の男に惚れたんだか・・・!


「俺も背、高いよなァ?」

「そうだね!特別高いね!!」


会話をしながらも、私は下りたくて身体を捩ったりしてみるけど、一向に解放されない。

その時。


「ーーー俺で良くねェ?」


ポツリと漏らされた言葉に、私は動きを止められた。


「・・・は?」

「だって俺身長高いし、お前好みの男じゃねぇか」


いやだから長身の男の人が好きな訳じゃないんだって!!というツッコミは、この雰囲気でできそうにない。

ジョセフは何を言ってるんだ・・・?俺で良い?お前好み?それじゃあまるで、わ、私と付き合いたいみたいじゃ・・・!


「うん、何にも問題ねーわ。よしじゃあ今からお前俺の彼女な」

「へっ?!」

「何だよ、文句あんのか?」

「あ、あるよ!」


全く展開についていけない。いや、ついていけたとしても、ジョセフの気持ちも、私の気持ちもどこにも見えないこの展開には、異議を唱えさせていただきたい!ムッとした表情のジョセフは、体勢を変えないまま続ける。


「じゃあ5秒以内にまとめろ。出来なかったら自動的にお前は俺が好きってことにするわ」

「はああ?!」


5秒?!無理に決まって・・・!


「ハイ543210。タイムオーバー。じゃーこれで晴れてカレカノってことで」


あまりの速さでカウントされたため、実際は5秒もなかったことについても抗議したい。あまりに突拍子もないジョセフの発言に、いい加減我慢できなくなった私は抗議のため口を開こうとしたが。


不意に抱き上げる腕を曲げ私を引き寄せたせいで急接近したジョセフの唇に、全て吸い込まれてしまった。


突然キスされたことで、私の思考も止まってしまう。キスされた後、極めて近い距離でストンと下ろされたが、あまりの衝撃に腰が抜けてしまい。その場にドサッと座り込んでしまった。そんな私を追うようにその場にしゃがみ込んだジョセフは、我が侭が聞き入れられない子どものように拗ねた顔をして。


「彼氏命令。お前身長伸ばすな。・・・俺からお前を構い倒す楽しみ、奪うんじゃねぇよ」


わかったな?


その言葉と、コツンと合わせられた額に、私は半ば放心したまま、


「は・・・はい・・・」


と返事をしたのだった。








これは後になってわかった事なんだけど、ジョセフは私がシーザーを好きなんだと勘違いしていたらしい。「お前が本格的にスケコマされる前に何とか手ぇ打っておきたかった」とごにょごにょ言い辛そうに話すジョセフは、体格の割に子どもっぽい。かつて私の秘密の穴場だった中庭のベンチで、今は2人並んで過ごす。私は持ってきていた牛乳パックを取り出した。


「あー!オメー、身長伸ばすの禁止って言っただろーが!」

「だってやっぱり身長差が気になるんだもん」

「んなモンいちいち気にしてんじゃねーよ!それに!」


ジョセフが横になり私の腿に頭を乗せる。俗にいう膝枕である。


「こーやって俺を見下ろすの、お前にしか許してないんだからな!」


わかったら牛乳しまえ、と私を下から見上げてくる。私を気遣ってくれるその優しさは、不器用だけど健在なのがとても嬉しい。


身長差はやっぱり埋まらないけど、心の距離が近いなら良いかな。


「はーい」


私は嬉しさが隠しきれない声で返事をし、牛乳パックを隅に置くのだった。



距離



「・・・やれやれ。本当にお似合いのカップルだぜ」


そのまま眠ってしまった私達に、上着を掛けてくれたスケコマシさんにはとても感謝している。





ーーー
20150511




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