ジョセフに壁ドンされました。


体格に見合った怪力を惜しみ無く発揮した右手から壁が悲鳴を上げ、そしてーーー

パラパラ・・・

『・・・ッ!!』

く だ け た 。
砕けた壁の素材が砂塵のように左肩に降りかかる音を確認し、全身の筋肉が強張った。

ーーーこ、

殺されるッ!!

一気に心臓が鋼を打ちはじめた。

「なァ、」

この状態に陥れた原因が口を開く。恐怖から涙の膜が薄く張られた目を動かすのもオイルの足りない機械仕掛けだ。何とかギギギ、とジョセフと視線を合わせる。

「ドキドキするだろ?」

『生命の危機的な意味でね!!』

この後に及んで悠長な台詞を吐きやがったジョセフに切実な思いをぶつけた。

「違うって〜それは俺へのトキメキからくるドキドキだろ?」

『違うよ全然違うよ?!今まさに殺るか殺られるかの命の瀬戸際なんだけど!!』

尤も、私がジョセフを殺る事に関しては絶望的であるけども!

「俺が愛するシヨリちゃんを殺るわけないじゃな〜い!安心して俺にときめいてくれていいのよン?」

『この壁見て安心できるかッ!!』

この会話中にも左肩にはパラパラパラパラ壁を成していた物が落ちてくる。こ、怖い・・・!

「ほら、こんなにドーキがしてる」

ジョセフが壁を殴った右手の甲で、ドアをノックする様に私の心臓付近に触れる。

「俺にドキドキしてんだろ?」

『ちが、』

「違わない」

冷静さを欠いている私に言い聞かせる様に、けれども反論は受け付けないハッキリとした口調で言葉を遮られる。

胸に当てた右手をそのままに、今度は空いていた左手を私の顔の横の壁に添えた。


「俺のことが」


徐々に肘を曲げて距離を詰めてくる。


「好きだから」


ジョセフの前髪が額に当たった。近い近い近い・・・!


「こんなにココが忙しない。そーだろ?」


吐息が顔を掠める。もうこの距離なら手なんて当てなくても心臓の音が聞こえちゃいそうだ!


「なァ?」


至近距離で辛うじて読み取れたジョセフの表情は、悪戯が成功した子どものように楽しげなのに、どうしてこうも色っぽく見えてしまうのか。

あぁもう、何のドキドキか自分でもわからなくなってきた!


ジョセフで壁ドン!


吊り橋効果をモロに狙ってくる策士



ーーー
20150207




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