文 | ナノ
(絶望が誕生した日)

希望ヶ峰に入学して2度目のクリスマス当日。
今年最低気温を記録した日。

僕、苗木誠はイルミネーションがキラキラと輝く町で、ショーウィンドウを眺めながら溜息をついた。

「江ノ島くんに何をあげればいいんだろう…。」

空が明るい時間から、色んなお店を出たり入ったりしていたのに、気づいたら真っ暗になっていた。
家でこたつに入って、ゴロゴロゲームをやってる方が好きな僕が、なんでほぼ1日寒い中外にいるかというと…。

今日が江ノ島くんと戦刃くんの誕生日だからだ。

クリスマスは、休日で学校もない。
戦刃くんは大丈夫だけど、もう一人の主役の江ノ島くんがモデルの仕事が入って忙しいらしく、後日お祝いする事になった。
でも、僕は当日運良く渡せたりしないかな…と、今こうやってプレゼントを探しているわけで…。
希望ヶ峰に入学してからは、クラスメイトの誕生日当日に必ず誕生日プレゼントを渡していたので、2人にだけ渡せないってのは悔しかったのだ。
結局、1週間前から探していたのだけど、結局決まらなかった。
戦刃くんのはすぐに決まったんだけどなぁ…。

バイトもしてない普通の高校生には、高価な物は買えないし…。
でも、プレゼントは気持ちだから!!と、前向きに考えながらも迷ってしまう。

「あ”〜!!もう!!」
「あれれれ〜?そこで頭抱えて、座り込んでるのは苗木じゃ〜ん」

ケラケラ笑いながら僕に近づいてきたのは、今僕を悩ませてる人だった。

「江ノ島くん…。」
「変な奴いるから、どんな奴か拝んでやろうと思ったら、苗木でガッカリ!俺はてっきりクリスマスに絶望したモテない男がいるのかと思ったのに…あ、でもある意味合ってたか!」
「う、うるさいな!」

モテない男は余計だし、モテる江ノ島くんにはこの気持ちわからないだろう!と、心の中で思いながら、立ち上がった。

「ってか、本当このさっむい中何してたんだよ?」
「え…えっと…買い物?かな?」
「…あ、わかったー!プレゼント選んでたんだろ?」
「えっ!?それは違うよ!!」

サプライズで渡すつもりでいたから、焦ったせいで声が裏返り、恥ずかしさで軽いパニックになる。

「ふーん、違うのかー。家族にクリスマスプレゼントとか選んでるのかと思ったぜ。」
「え”っ…。あ!そう、家族だよ!妹に渡そうと思ったんだけどね!!あははは…」

本来の目的を隠すために嘘をつくのに必死で、僕が見ていたお店が男性商品ばかりを扱う店だなんてすっかり忘れていた。

「でも、なかなか決まんなくてさー江ノ島くんなら何が欲しいとかあるかな?」

本当は自分で選んだプレゼントが良かったが話を逸らす為っていう理由でも、質問をぶつけてみる。

「うーん…俺?俺はなんだって嬉しいよ?」
「なにそれ…答えになってないじゃん。」

ニヤニヤ楽しそうに答える江ノ島くんは絶対に楽しんでる。
僕は、大きくため息をついて携帯を取り出して、時間を確認した。

「あぁ、プレゼントだったら普段その人が使ってないものをあげるのも、いいと思うけど?苗木のオススメするものとか、苗木の好きなものとかさーー」
「僕のオススメするもの…その人が普段使わないもの…か。多すぎて困るなぁ…」

僕の好きなものか…その時ふと頭に浮かんだものがあった。
もう一度、携帯の時間を確認して目的のお店が開いてる事を確認した。

「江ノ島くんって、まだ時間ある?合ったら、ちょっとここのビルのカフェで待っててよ!」
「はぁ?時間?これから、帰る所だからあるけど…苗木と違って俺様って待たされるキャラじゃないんだよなー」
「僕だって違うよ!!ほんのちょっとでいいから!すぐに帰ってくるから!!」

そういって、僕は急いで目的の場所に行った。

「クリスマスでしかも誕生日にカフェで1人待たされるとか…絶望的」

僕の後姿を見ながら、江ノ島くんがそう呟いてた事も知らずに…。

「お待たせ」
「遅い」
「えっ!?そんな時間かかってないでしょ!?でも、待たせた事は悪かったよ。ごめんね」

長い脚を組んでイスに座り、携帯を見ながら何かを飲む姿は、本当に様になっている。
パコンッと音を立てて、携帯を閉じると視線を携帯から僕に移してきた。

「ま、俺は今日気分がいいから許してやるよ。」
「ありがとう。それと…誕生日おめでとう。これプレゼント…」
「え?何々、俺へのプレゼント?この袋…上の階にある本屋のだよな?」
「そうだよ!この間、僕が読んでた最近人気の漫画だよ!江ノ島くん見たいって言ってたでしょ?」
「あーー」

この間、僕が読んでいた漫画を覗き見た江ノ島くんが見たいと、言ってたのをさっき思い出したとこだった。
貸そうか?と言ったら、すぐに飽きちゃうから最後まで読めないからいいと断られた。
自分の物であれば、飽きてもまたその気になった時に読めるし!と、プレゼントに選んだ。

「今までの誕生日プレゼントで一番嬉しいぜ」
「じゃあ!来年の誕生日も楽しみにしててよ!」


12月24日。
僕は、あの日江ノ島くんにプレゼントを渡した場所に立っていた。
あの時と違うのは、大切な仲間や人が居ない世界。
すべてが崩壊した世界。
そして、おまえがいない世界という事。

江ノ島くんは僕のクラスメイトで友達で仲間だった。
でも、おまえはすべてを奪った僕の敵だ。
学園生活の時は演じていた江ノ島盾としても、確かに同じ時間を一緒に過ごしたクラスメイト。
この【おめでとう】は江ノ島くんに送ろうと思う。
そして、【さようなら】この言葉をおまえに送ろうと思う。

END




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