文 | ナノ
(アンハッピー?バースデー)

「各自持ち寄ったプレゼントを渡すって事でよろしくて?」

事件は、セレスのその一言から始まった。

〜2月4日〜

苗木が帰った放課後…。
教室で苗木以外のメンバーが机を丸く並べて、話し合いをしていた。

全員が顔をつき合わせて、明日に迫った苗木の誕生日をどうお祝いするか、どうやったら1番喜んで貰えるかと、意見を出し合って早3時間。
見事に意見がバラバラになり、一向に意見がまとまる様子は見て取れない。

「とりあえず、明日は苗木くんが登校してくる前に教室を飾りつけして、ケーキを用意してみんなでクラッカー鳴らして出迎えるって事でいいんじゃないかしら?」
「そうですな。このまんまじゃ、埒が明かないですし」
「我もその意見に賛成だ。」
「私も、その意見に賛成ですわ。その後、各自持ち寄ったプレゼントを渡すって事でよろしくて?」
「ふっ…苗木が1番喜ぶプレゼントを渡すのは、この十神だろうな」
「そ、そうよ!白夜さまよ!」
「それは、違うわ。私よ?」
「喧嘩はやめませんか?時間がもったいないですから・・・。」
「そうね・・・」

舞園の静止に、言い争いを始めた十神と霧切は一旦離れ、言葉を飲み込んだ。
『プレゼント』という言葉にそれぞれ違う反応を示す。
もう用意したと安心した様子の者や、まだ悩んでいるようで無言になる者、そして隣にいる人に相談をし始める者。

「とにかく、プレゼントは各自で用意してちょうだい。今日は、とりあえず解散。」
「じゃあ、俺からのプレゼントはケーキにするべ!」
「じゃあ、葉隠くんお願いするわね。」

パンパン!と手を叩いて、みんなの注目を引いてから霧切は少し声を張り上げ、そう宣言した。
みんなも異論はないようで、顔を見合ってからそれぞれ散って行った。
先ほど、十神と霧切だけが苗木が1番喜ぶプレゼントを用意すると言い争いをしていたが、皆の心中はきっと自分が1番喜ばせる!と意気込んでいた。

〜2月5日〜

希望ヶ峰学園に通う苗木誠は、本日2月5日が何度目かに当たる誕生日。
親や妹に朝からお祝いの言葉を言われ、自分が1つ歳をとった事を実感していた。
学校に着き、教室に向かう途中で、クラスメイトに誰一人として会わない不思議に首をかしげた。

「おかしいなぁ…。」

首をかしげながら、ドアに手をかけ、数センチ開けた瞬間−。

パァン!パァン!パァン!

『『『誕生日おめでとう!苗木(くん)!!!』』』
「み、みんな…」

半円の形に並んでみんなが自分に向かって、クラッカーを鳴らし、その音で苗木は状況が理解できず、目をパチクリさせた。

「苗木っちー!お誕生日おめでとー!」
「は、葉隠れくん!」

そんな苗木に横から、ケーキを持った葉隠がヨロヨロと近づいてきた。
3段重ねの真っ白いケーキで葉隠の顔は隠れていたが、ボリュームのある髪の毛が見えていて、誰かすぐに分かることができた。

「苗木っちの為に用意したっあっとっと・・・」

前方が見えない葉隠は、視界に入らなかった机にぶつかり、バランスを崩した。
当然、手にしていたケーキも見事にバランスを崩して、目の前にいた苗木にまっさかさま。

「え、は、葉隠くっわぁああああああああああ」
「苗木!」
「苗木くん!!」
「キャァアアアア!!苗木ぃ!!!!!」

苗木と全員の悲鳴が校舎に響き渡った。
それを聞きつけた先輩達が見に来て、その中にいた写真家によって撮られた、クリームまみれになった苗木の写真が出回ったのは言うまでもない。

苗木にとって、1番思い出深くて楽しくて幸せな誕生日になったのも言うまでもない。
来年もその先もずっとずっと続きますように…と、思いながら苗木はクリームだらけのまま、微笑んだ。

END






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