文 | ナノ
(Believe)


「幸運ってどうせまぐれで入ったんだろう?」
「本当だよな…どうせ俺らと対して変わらねぇよな!」
「…」

校内を歩いていると、予備学科生に言われる陰口。
僕は、気にした事はなかったけれど、やっぱり最初はショックを受けたよ。
でも、名前も知らない先輩に励ましてもらってからは、気にしないようにしよう!って思うようになったんだ。
お礼を言いたいれど、その先輩に会える事もなく季節が巡って、未だにそれは達成されないでいる。

初めて予備学科の人に陰口を言われ、裏庭のベンチでちょっと落ち込んでた時だった。

『はぁ…。』
ガサッ
『ッ!?』

突然、後ろにある整えられた草木からガサガサという音がした。
猫とかが迷い込んじゃったのかな?って最初は思ったんだけどね…。

『猫?』
『いてて…あれ?君は…』
『えっ!?人!?』

ガサガサと草木を掻き分けて出てきたのは、僕よりうんと大きい男の人だった。

『あはっ!君の事は知ってるよ!今年入学してきた超高校級の幸運。苗木誠くんだよね?』
『えっ‥なんで知って…』
『そりゃ、知ってるよ!僕は超高校級の超高校級アニアだからね!』
『???』

最初は、ニコニコ話すこの人が何を言ってのか、分からなかったんだよね。
でも、話の内容からして”先輩”なんだっていうのは分かった。

『ちなみに僕も超高校級の幸運で入学したんだ!君と同じだなんて称するにはおこがましいけど…』
『そっそんな事ないですよ!僕は・・・』
『・・・?あ、さっき予備学科が言ってたことが、気になってるのかな?』
『もしかして…聞いてたんですか?』
『そこで、本を読んでたら聞こえてきちゃってね。』

指差す先には、綺麗に長さの整えられた芝生が広がっていた。
そこは、丁度先輩が出てきた草木を越えて行った先にあり、ようやく先輩がそこから出てきた理由を理解できた。
指差した方角から、また先輩に視線を戻すと、先輩はニコニコと笑ったまま僕を見ていた。

『先輩…。Believeって歌、知ってますか?』
『えっと・・・小学校とかの教養で習う奴だよね?』
『はい!僕、あの歌好きなんですよね。』
『あの歌は、君を歌ってるみたいだよね…』
『え?』
『なんとなくだけどね。』

ニコッと笑って、僕の頭をポンッと撫でてくれた先輩。
心がポカポカした、それこそさっきまで悩んでたのがバカらしくなるくらいに‥。
その後、チャイムがなって先輩はいなくなっちゃった。


あれから、しばらくしてコロシアイ学園生活が始まって先輩の事も記憶から消えていった。
でも、外の世界に出て未来機関に保護されて、記憶を取り戻してから、僕は先輩に再会した。

先輩と後輩ではなく…。
絶望の残党と未来機関として…。



(日向side)

眠り続ける狛枝を心配そうに見つめる苗木。
その姿を後ろから、眺める事しかできない自分が悔しい。
俺が、休めよ?とか代わろうか?とか、どんな言葉をかけても苗木は「大丈夫だよ」と、優しげに微笑むだけだった。

「日向くん…。Believeって歌知ってる?」
「あ、ああ…。狛枝がよく歌ってたからな。」
「え…。」
「この歌を歌うと、すごい切なくて恋しくなるんだよね…なんでだろうね?あは。って、言うから、恋の歌じゃないだろって返してたがな。」
「…っ。こ、狛枝くん…。」

突然、苗木が狛枝の入ったカプセルに抱きつき、震えながら泣き始めた。

「な、苗木・・?大丈夫か?」
「こっ…狛枝く…ん。昔、Believeを…僕の歌みたいだねって…笑ってくれたんだ…。」

その言葉を聴いて、俺は掌をきつく握りしめた。
狛枝はBelieveの歌の内容に恋しいわけじゃなくて、その歌を通して覚えていない苗木を想っていたのか…。
泣いてる苗木に、俺がBelieveの歌詞みたいに苗木を支えてやるから。と言いたかったが、きっとこの役目は悔しいが俺じゃないんだろうな…。

好きな人の泣き顔を見るのは、苦しい…息ができないくらい。

「早く、目覚めろよな…狛枝…。」

END




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