文 | ナノ
(絶望と希望の彼)

みんなが目覚めても狛枝くんだけは起きなくて、僕は島を訪れるたびに会いに行くようにしていた。
やっと目が覚めた彼は、絶望時代の狛枝凪斗に戻っていた。
僕の中にいる学園時代の優しい狛枝くんに戻ってくれるように、僕は必死に話しかけた。

「じゃあ、僕らは一度戻るね。」
「ああ、狛枝の事はまかせてくれ」

日向君に色々と任せて、一度島を離れる事になった時。
やっぱり、狛枝くんは見送りには来てくれるわけもなく、僕は少し寂しげに思いながらも、島を後にした。

次の週、島に来た時の事。

「苗木くん!」
「こ、狛枝くん!?」
「全部、思い出したんだ。」
「ほ、本当に?」

嬉しそうに僕に向かって走り寄る狛枝くんを見て、僕は嬉しさの余り勢いよく抱きついた。
目の前の希望に視界が眩んで、後方で表情暗く僕らを見つめる日向くんに気づかなかったんだ。

狛枝くんが無事目覚めてからは、よく一緒にいるようになった。

「狛枝くん?今日はどうしようかー」
「僕みたいなゴミ虫が苗木くんと一緒に居れるだけで幸せだよ!」
「それじゃ、質問の答えになってないよ?」
「…そういえば、この間…日向くんと話してたよね?」

肩を並べ砂浜で海を眺めながら、話をしてた時。
狛枝くんの突然の質問に僕は、海を眺めながら日向君とはなしたよー?と、普通に返事を返した。

「そっか…苗木くん」
「どうしたの?」

狛枝くんの方を振り向いた瞬間だった。

「ぐっ…」
「ねぇ…苗木くん…誰とも話さないで。僕だけを見て。」

勢いよく押し倒され、僕の上に馬乗りになられた。
首に手をかけられて、親指でグッと喉を絞められた。

「あははははは!その苦しさに歪んだ絶望的な顔!最高だよ!苗木くん!その表情は僕だけが知ってればいいんだよ。あはははははは!」
「くっ…苦し…こ…こま…」
「苗木くんが僕以外のものになるって言うなら…僕は…」
「こま…え…だ…く…」

苦しさで霞む視界で必死に狛枝くんの表情を見ようとするけれど、彼の表情はわからない。
震える手で、狛枝くんの頬を撫でて僕の意識はそこで途切れた。


「ごめんね‥・僕ごときが太陽な君を1人占めしてはいけないって分かっているんだ…でも、ごめんね…苗木くん…」
「ん…狛枝くん?」
「苗木くん!大丈夫!?」

目が覚ますと、僕に膝枕してながら悲しむ彼が視界に入ってきた。
涙は流していないけど、それ以上に辛そうに表情を歪ませて僕を見ていた。

「気づいたら、苗木くんを…」
「いいよ。気にしないで…。」
「僕は、君の側に居ない方がいいと思う。きっと、また君を傷つけてしまう。」
「狛枝くん…。」

狛枝くんは、震えるほど手を握り締めて、ギリッと歯をかみ締めていた。
僕は、たとえ首を絞められても狛枝くんの中に残ってる希望を信じてるから…。

「このくらいどうってことないよ?僕はそれよりも狛枝くんと一緒に居られない事が辛いな…。狛枝くんは?」
「僕だって…苗木くんと居たいよ…。」
「だったら、大丈夫‥僕は狛枝くんを信じてる。」

ニコッと笑うと狛枝くんは嬉しそうに僕を抱きしめた。

でも、その瞬間見た彼の瞳は絶望でいっぱいになっていた。

END


絶望と希望の二重人格設定で首絞めを書きたかったんですが、二重人格設定を生かせなかったorz




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