文 | ナノ
(希望故の絶望)
罪木さん…彼女が江ノ島盾子を愛してるが故の絶望が引き起こした殺人事件。
これから僕が起こす事件は、記憶のどこかに埋まっている彼へを愛してるが故の希望が引き起こした事件。
記憶にはないけど、ファイナルデッドルームで手に入れた資料を見た瞬間にわかったんだ。
僕と彼とは運命で繋がってる。
だからこそ、これから起きる耐え難い苦痛だって何にも感じない。
きっと彼はこんなこと望んでないし、体全体で拒絶を表すだろう。
でもね、絶望に呑まれて彼女を想い幸せそうに彼女の元に行った罪木さんを見ていたら、僕も君に会うために…君に触れるために…絶望に飲み込まれてみたくなったんだ。
理由は確かに、裏切り者以外の抹殺ってあったけど違う…本当は君に会いたくて、記憶にうっすらある笑顔を鮮明に感じたいだけ。
部屋で着々と準備をして、この部屋ともお別れだなと見渡したときに、ふとファイナルデッドルームでもらった資料が目に止まった。
色んな本の中で異彩を放つファイルを手に取り、何度も何度も見返したページを開く。
「苗木…誠…」
指で文字を1つ1つなぞっていく。
しばらく見つめた後に、パタリとファイルを閉じて元に戻すと、振り返らずに部屋を後にした。
みんなより先にこのふざけたゲームのネタバレを見てしまった僕は先に退場しようじゃないか。
次に目を覚ました時には、きっと彼が泣きそうな顔で笑いながら
『おはよう!狛枝くん!』
って、行ってくれる気がする。
確証はないけど、そんな気がするよ。
僕みたいなゴミ虫にすら涙を流してくれる優しい彼…。
君に会えるという希望を持って自ら命をたつ僕を許してください。
END
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