文 | ナノ
(知らない恋)


俺は死んですぐに、アルターエゴの姿になった。
1人でいる世界はなんでもあるようでなんにもない世界。

気まぐれで俺のデータの中から一番嫌いだった苗木を作った。
最初は、本当にいじめて泣かせてやろうと思っただけ。
でも、彼が絶望した姿なんてデータにないのにね・・・絶望した姿を見たかった。
1人の世界から2人の世界になった。

んー?ちゃんと苗木のデータで作ったのに、なんでこんなにも絶望的に似てないんだろう?
中身は、やっぱ俺だから?アハハ…絶望的だな。

カムクラが俺を更正プログラムに入れてからは、偽者の苗木とコロシアイ卒業旅行を見ていた。
俺は、この後の絶望が楽しみで笑いが止まらなかったが、そんな俺の横でモニターを食い入るように見つめる偽苗木に意識がいった。

「何?偽苗木くん?気になるものでもあったわけ?」
「僕の元になった彼・・・素敵だね。」
「・・・」
「あふれ出る希望のオーラ以外は僕と一緒だね。」

彼が見てたのは、コロシアイ卒業旅行とはまた違うウィンドウで出してあった苗木の資料。

「俺は嫌いだけどなー。最後まで俺に逆らってきて、あの諦めない目・・・虫唾がはしるぜ」
「僕もその瞳で見られたいな…」
「ふーん。」
「江ノ島くん…僕−−−」
「え。」

小さく呟かれた言葉にえへへ。と笑う姿は苗木なのに、発する言葉でやっぱ作ったのは俺なんだなって実感した。


『僕もその瞳で見つめられたいな・・・』
俺の頭に何度も繰り返される偽苗木の言葉。
あの瞳は、俺以外には向けることは無いであろう瞳なのに…。
それが他の人に向けられる・・・?ああ、絶望で頭がどうにかなりそうだ。

こんな絶望を俺に与えてくれるのは、苗木しかいない。
苗木が与えてくれた絶望以上の絶望なんて俺は知らないし、いらない。
この気持ちが何なのか知らないけど、俺には苗木が必要なんだ。
だから、絶対に譲らない。


『江ノ島くん…僕、苗木くんが好きになっちゃった。』

END







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